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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第51話:新しい看板

戦争という名の巨大なプロジェクトが「クローズ」されてから数週間。瓦礫の撤去が進み、避難していた人々が少しずつ村へ戻り始めた頃、俺たちの元に一通の公文書が届けられた。


発信元は王国軍統括本部。かつて俺たちを「廃止」に追い込んだ連中からの、皮微なほどに丁寧な通知だった。


名ばかりの再編

書類には、組織改編に伴う決定事項が記されていた。


雑務課は、規定に基づき正式に解体・抹消とする。


代わって、以下の部署を統括本部の直轄下に新設する。


「戦後調整局 実務担当」


表向きの任務は「戦後における諸事務の円滑な移行と管理」。いかにも役人が好みそうな、実態の掴めない立派な名称だった。


だが、その下に小さく箇条書きにされた「主要業務」のリストを見た瞬間、サニアは思わず溜息を吐き、リクは声を出して笑った。


捕虜の安全な帰還手続き


曖昧になった国境線の再策定および管理


戦災地への物資再配分の調整


放置された魔道具の回収および無力化


面倒ごとの「ゴミ箱」

「……笑っちゃうわね。名前こそ高尚だけど、要するに誰もやりたがらない泥臭い仕事を、全部ここに放り込んだだけじゃない」


サニアが呆れたように、そのリストを指でなぞる。

捕虜の帰還は感情的な衝突を招きやすく、国境線の策定は政治的な火種になり、物資の配分は利権争いの中心地になる。どれもが、英雄的な武勇では解決できず、ただひたすらに胃を痛めながら調整を繰り返すしかない「不備」の塊だった。


「軍の連中は、きれいさっぱり戦争を終わらせたことにしたいんだよ。でも、実際にはまだ山のようなゴミが残ってる。それを片付けるための専用のゴミ箱が必要だったってわけだ」


リクが新しい執務室となる古びた建物の埃を払いながら、皮肉げに付け加えた。


結局、雑務課のまま

俺は、届いたばかりの真新しい看板を手に取った。

文字だけは立派だが、裏側にはまだ木の削り節が残っているような、急造の看板だ。


「結局、名前が変わっただけで、やることは雑務課のままだな」


俺は苦笑いしながら、その看板を入り口の門に掲げた。

王国も魔王軍も、表舞台では平和の到来を華々しく宣伝している。だが、その平和を一日でも長く維持するためには、誰かが影で泥を被り、帳簿を合わせ、不満を吸い上げ続ける「実務」が必要なのだ。


俺は再び、使い慣れたペンを胸ポケットに差した。


「よし、仕事だ。捕虜の送還リストにミスがある。まずはこの数字を直すところから始めるぞ」


新しい部署。新しい看板。

だが、事務屋の日常は、平和な世の中でも相変わらず終わりのない戦場だった。

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