表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/12

第5話:初めての“理由のある勝利”

騎士団全体が「書類仕事」を忌避する中、地下の雑務課を訪ねてきた者がいた。

まだ二十代前半の若手隊長、レオンだ。

彼の部隊は新兵が多く、遠征のたびに多大な損害を出しては「根性が足りない」と上層部から叱責されていた。


「もう、仲間を死なせたくないんです。……あなたのやり方で、何かが変わるなら」


俺はレオンに、魔法の武器ではなく三枚の紙を渡した。

一つ、出発時間の厳守。

二つ、二時間ごとの強制休憩。

三つ、出発前と戦闘後の装備確認表チェックリスト


「これを守るだけでいい。武勲を立てようと無理な行軍はするな」


レオンは戸惑いながらも、その紙を握りしめて遠征へと出発した。

古参の騎士たちは「雑務係のままごとに付き合うとは」と鼻で笑っていたが、数日後、彼らは目を見張ることになる。


城門をくぐり、帰還したレオンの部隊。

そこには、いつものような「悲惨な敗走」の気配は微塵もなかった。


鎧には戦いの傷跡がある。だが、兵士たちの足取りは力強く、瞳には生気が宿っていた。

何より驚くべきは、荷車の上に「遺体」が一つも載っていないことだった。


「報告します。魔物二十体を討伐。……我が部隊、戦死者ゼロ。重傷者なし」


レオンの報告に、広場が静まり返る。

ガルドス団長が信じられないといった様子で身を乗り出した。

「奇跡でも起きたのか? それとも、敵が弱かったのか?」


レオンは首を振った。そして、懐からボロボロになった「チェックリスト」を取り出した。


「いいえ。……戦う前に、勝敗が決まっていただけです」


彼は震える声で続けた。


「決められた時間に休憩を取ることで、接敵時に集中力が切れていなかった。事前に予備の武器があることを確認していたから、剣を折られてもパニックにならなかった。……戦いが、今までとは比べものにならないほど、楽だったんです」


それは、個人の勇猛さや運に頼らない、組織としての「理由のある勝利」だった。

ただ数え、記録し、管理する。

その地味な作業が、伝説の魔法よりも確実に人の命を救うことを、若き隊長が証明したのだ。


俺は地下室の窓から、夕日に照らされる部隊を見つめていた。

サニアが隣で、初めて誇らしげな微笑を浮かべている。


「これ……明日はもっと申請書が増えそうね」


「ああ。忙しくなるぞ。サニアさん」


世界最強の組織への第一歩は、華々しい一撃ではなく、完璧に管理された一日のルーチンから始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ