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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第49話:最後の衝突

空が真っ赤に焼け落ち、引き裂かれた大気から魔力の奔流が雷鳴のように降り注ぐ。殲滅派の残党による、理性をかなぐり捨てた最後の大規模突撃が始まった。


彼らにとって、これはもはや勝利のための戦いではない。自分たちの存在意義を証明するための、世界を巻き込んだ心中だった。王国軍の本隊と勇者部隊がそれに応戦し、大地が震えるほどの激突が繰り広げられる。


表舞台の狂乱、裏舞台の静粛

英雄たちが咆哮し、巨大な魔獣が爆ぜるその裏側で、俺たちは動いていた。

もはや軍の肩書きはない。だが、俺たちの手元には、どの将軍の机にあるものよりも正確な**「戦域図」と「物流経路」**の記録があった。


「係長、北方避難ルートの確保完了。住民の九割は既に戦域外の『管理区域』へ移動済みです」


サニアが通信石越しに報告を入れる。

俺は頷き、手元の地図にいくつもの赤い印を書き込んだ。


「よし。リク、ミラ。王国軍第四師団への補給部隊を足止めしろ。補給停止命令だ。名目は『先行戦域の汚染による経路封鎖』。これ以上の弾薬と食糧の投入は、戦後処理のコストを跳ね上げるだけだ」


「了解だ。功を焦る連中のハシゴを外してやるよ」


リクの冷徹な声が返る。


戦争のシャットダウン

俺たちの目的は、この衝突を「勝利」に導くことではない。この衝突を、組織的な戦争の**「終着点」**として隔離することだった。


避難経路の確保: 民間人を計算式から除外し、戦場を純粋な「廃棄場」へと変える。


補給停止命令: 双方の継戦能力を物理的に削ぎ、強行終了を促す。


戦闘区域の封鎖: 混乱が他地域に伝染するのを防ぎ、この地獄を一時的な「不備」として封印する。


勇者が一太刀振るうごとに、俺は帳簿から一つの部隊を抹消した。魔王軍が一人倒れるごとに、俺は戦後賠償の計算式を修正した。


激しい戦闘は、わずか半日で終わった。

圧倒的な火力と、それ以上に圧倒的な**「資源の枯渇」**が、戦場を急速に冷やしていったのだ。


勝者のいない大地

土煙が収まり、静寂が戻った戦場には、かつての緑も、村の面影もなかった。

ただ、えぐり取られた大地と、魔力の残滓が陽炎のように揺れているだけだ。


勇者は剣を杖代わりにして、焦土の中に立ち尽くしていた。

彼は勝った。目の前の敵はすべて消えた。

だが、その勝利を称える民衆も、勲章を授ける将軍も、そこには一人もいなかった。


俺たちが戦闘区域を完全に封鎖し、情報を統制し、補給を断った結果、そこは**「誰にも知られないまま処理された事故現場」**と化していた。


「……誰も、いないんだな」


戻ってきたリクが、虚無感に満ちた戦場を見て呟いた。


「ああ。勝敗を語る者が残っていては、また次の戦争が始まる。記録の上では、ここは『大規模な自然災害』として処理する」


俺は最後の報告書を書き終え、ペンを置いた。

勝った負けたという物語を剥ぎ取った後に残るのは、ただの莫大な損害記録と、冷たい静寂だけだった。

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