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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第47話:書類の行き先

雑務課という名称が軍の組織図から抹消されて数日。俺たちが使っていた執務室は立ち入り禁止となり、看板は剥がされた。だが、俺たちがばら撒いた「終戦の種」は、組織の土壌に深く根を張り、静かに芽吹き始めていた。


権力者が部署を消すことはできても、一度「合理的だ」と判断された仕組みを消し去ることは、それ以上に困難なのだ。


自律する手続き

俺は街の片隅にある小さな宿屋の一室で、ミラが持ち帰ってくる各部署の「動向」に目を通していた。


兵站部では、これまでのような無制限の弾薬発注が止まっていた。代わりに彼らが作成し始めたのは、「停戦時における余剰物資の整理・返還案」だ。前線の混乱で放置された物資をどう回収し、どのように平時の在庫へ戻すか。彼らにとって、それはもはや「命令」ではなく、膨大な赤字を回避するための「自衛」としての業務になっていた。


医療班も動いていた。俺たちが流した「捕虜治療規定」が、彼らの現場で正式なマニュアルとして採用されたのだ。捕虜を生かして返すことが、自軍の兵士を無事に連れ戻すための最短ルートであるという事務的な理解が、博愛主義を超えて現場を支配し始めていた。


商人たちの計算

さらに皮肉なことに、かつて戦争の利権に群がっていた商人ギルドまでもが、風向きの変化を察知していた。


彼らの机の上にあるのは、破壊を前提とした供給契約ではない。俺たちが提示した「復興支援契約」の草案だ。瓦礫を片付け、道を直し、街を再建する。その長期的な利益が、不確実な略奪品よりも価値があると計算した瞬間、彼らは熱心な「終戦の推進者」へと変貌を遂げた。


「……誰も、止めてくれなんて命令していないのにね」


サニアが窓の外、慌ただしく行き交う伝令兵たちを眺めながら呟いた。彼らが運んでいるのは、もはや増援の要請ではなく、来るべき「事後処理」のための調整書類だ。


止まらない歯車

俺たちが作った書類は、各部署の担当者たちの手によって、彼ら自身の言葉へと書き換えられ、組織の隅々へと浸透していた。


「正義感で動いている奴は一人もいない。みんな、自分の仕事コストを減らし、利益を確定させたいだけだ」


俺は手元のメモを閉じ、小さく息を吐いた。


「だからこそ、もう止まらない。誰か一人が『戦争を続けろ』と叫んだところで、動き出したこの巨大な『後始末』の慣性を止めることはできないんだ」


組織を動かすのは、カリスマの演説ではない。担当者のデスクに置かれた、たった一枚の「処理しやすい書類」なのだ。

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