第46話:部署の終了
一通の通達が、朝の静寂を切り裂いてデスクに届けられた。
そこには軍上層部の冷淡な紋章と共に、簡潔な事実が記されている。
雑務課、廃止。
理由は「軍事組織の全体最適化に伴う再編」という、使い古された言い訳だった。
予感していた幕引き
サニアが書類を一瞥し、ふっと静かに笑った。
「まあ、長く続く部署じゃないとは思っていたけれど」
その声には落胆よりも、どこか晴れやかな響きがあった。
俺たちが数字で平和を管理し、戦争の利益を削り取り始めたときから、この結末は決まっていたようなものだ。
組織にとって、不条理を不条理のまま放置するほうが都合が良いこともある。俺たちはその不文律に手を突っ込みすぎたのだ。
リクは無言で、壁に掛けてあった自分の装備をまとめ始めた。
「係長、これからどうする。看板を下ろせば、俺たちはただの浮き草だぜ」
「看板なんて、ただの板だ」
俺はデスクの引き出しから、私物と最低限の記録を箱に詰め込みながら答えた。
終わらない仕事
ガランとした執務室に、荷物をまとめる音が虚しく響く。
かつて山積みだった書類は、もうここにはない。
「仕事は、まだ終わっていない」
俺は空になったデスクの感触を確かめ、窓の外を見据えた。
上層部は、この部署を消せばすべてが元通りになると信じているのだろう。
だが、彼らは致命的な見落としをしている。
俺が作り上げた終戦処理手順書と、利権構造を暴くための特別監査資料の写しは、既に正式な手続きを経て、各関連部署、さらには共存派の連絡窓口へと回っている。
手続きの恐ろしいところは、一度システムに放流されれば、発信源が消えてもデータだけが独り歩きを始めることだ。
誰が受理し、誰がハンコを押すべきか。その問いは、もう軍全体の喉元に突き刺さっている。
影としての再始動
「部署は消えても、俺たちが蒔いた数字は消えない」
俺は荷物を持って、かつての暫定終戦管理担当の看板を自らの手で外した。
「これからは、組織の枠の外で決済を下しに行く」




