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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


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第28話:死体も装備も資源

嘆きの谷に横たわる異形の残骸と、折れ曲がった無数の剣。これまでは「戦場の遺物」として放置され、やがて大地の脈動に呑まれて新たな怪物の苗床となっていたものたちだ。俺は、かつて目にしたあの忌まわしい廃棄処理場の光景を思い出し、筆を走らせた。


敵が倒れ、味方が倒れる。そのたびに戦場には「材料」が供給される。この世界の戦いが終わらないのは、死すらも次の戦いのための燃料として組み込まれているからだ。ならば、管理責任者としての俺がすべきことは明確だった。


「回収班を増員しろ。敵味方の区別は不要だ。転がっている鉄屑から、物言わぬ亡骸に至るまで、大地に吸い込まれる前にすべて運び出せ」


俺の命令に、物流を担う兵たちが困惑の表情を浮かべる。無理もない。これまでの常識では、戦場の下片付けは二の次であり、ましてや敵の残骸まで回収するなど聞いたことがない。


「隊長、そんなものを集めてどうするのですか。死者の弔いなら、後回しでも……」


「弔いのためじゃない。これは、大地の胃袋から餌を奪う作業だ」


俺は、サニアが用意した新たな回収計画書を突きつけた。

回収された武具は、統括本部の工房で溶かされ、防衛線の杭や中和石を固定するための金具へと鋳直される。亡骸は、大地の魔力に触れぬよう清められ、人里離れた静かな墓地へと丁重に送る。


この世界の道理において、戦場に放置されたものはすべて「次の脅威」へと姿を変える。ならば、その巡りを断ち切るために、徹底的な「拾い上げ」を行う。一振りの折れた剣も、一片の肉も、大地には一歩も譲らない。


「……なるほどね。あなたがやっているのは、単なる清掃じゃない。戦争という巨大な浪費を、内側から干上がらせるための収奪なのね」


サニアが俺の意図を汲み取り、冷徹なまでの称賛を瞳に宿した。


俺が目指すのは、英雄による劇的な勝利ではない。

戦争に必要なあらゆる材料を、事務的な手際で回収し、再利用し、大地から奪い去る。

戦えば戦うほどに資材が枯渇し、大地が飢え、異形を生み出す力を失っていく。

それは、合理性を重んじる俺が辿り着いた、最も静かで、最も残酷な終戦の手順だった。


「無駄は許さない。この世界の理が死を求めているなら、俺はその死すらも管理し、戦争の道具にはさせない」


俺は回収された武具の目録に、受理の印を力強く押し付けた。

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