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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


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第22話:魔物生成の法則

深夜の統括本部。俺はサニアと共に、直近の戦闘データと廃棄物処理場の流入量を突き合わせていた。

そこで導き出された「魔物生成の法則」は、あまりに合理的で、かつ悪趣味なものだった。


「サニア、見てくれ。このグラフだ」


俺が示したのは、戦場の「熱量」と魔物の「再生速度」の相関図だった。

激しい戦闘が行われ、多くの魔法が飛び交い、死傷者が増えるほど、処理場からの魔物排出スパンは短くなっている。


「……つまり、私たちが必死に戦えば戦うほど、次の敵が早く生まれるってこと?」


「ああ。戦場というシステムにおいて、戦闘は『供給』なんだ。激しい衝突によって発生する残留魔力と死骸という資材が、あの穴に供給され、次の製品(魔物)に加工される。戦術で勝とうとすればするほど、この永久戦争の回転速度を上げることになる」


俺はペンを置き、窓の外に広がる暗い王都を見つめた。

これまでは「いかに効率よく勝つか」を考えてきた。だが、その最適解の先にあったのは、終わりのない地獄の加速だった。


「戦うだけじゃ、この戦争は止められない」


俺は手帳を開き、新しい戦略——戦場最適化による「パッシブ・コンテインメント(受動的封じ込め)」の草案を書き込んだ。

敵を倒すのではなく、無力化した状態で「維持」する。

エネルギーの循環を止めるために、あえて決定的な勝利を避け、戦場を「停滞」させる。

それは、武勇を尊ぶこの世界の価値観を真っ向から否定する、臆病で、けれど最も平和に近い管理術だった。


隣で俺のメモを覗き込んでいたサニアが、ふと小さく息を吐いた。


「……あなたって、本当に変な人ね。最初はただの冷徹な計算機かと思っていたけど」


彼女の声は、これまでのような突き放した響きではなく、どこか柔らかい温度を含んでいた。

サニアは俺の横に座り、少しだけ視線を落とす。


「勇者になれなかったことを、もっと恨んでいるのかと思ってた。でも、今のあなたは、誰よりもこの世界を本気で終わらせようとしている」


「……恨んでる暇がないだけだ。管理ミスを見つけたら、直さずにはいられない質なんだよ」


「ふふ、やっぱり事務官ね。……でも、少し安心した。あなたがただの数字マニアじゃなくて。私も、もう少しだけ、あなたの『管理』に付き合ってあげてもいいかなって」


サニアの手が、机の上にある俺の手に触れそうで触れない距離で止まった。

死んだ魚のようだった彼女の瞳に、小さな、けれど確かな光が宿っている。


俺は無言で頷き、再びデータに向き合った。

戦争を止める。

そのための数式は、まだ完成には程遠い。

だが、隣で同じ未来を見つめる仲間がいる。それだけで、この絶望的な事務作業も、少しは効率が上がりそうだった。

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