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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


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第21話:再出荷個体

最前線の砦に、警告の鐘が鳴り響いた。

だが、現れたのはこれまで記録されてきた魔王軍の魔物ではなかった。


それは、歪に継ぎ合わされた金属と肉の塊だった。

先週、修理不能として廃棄物処理場へ送られたはずの重装騎士の盾を、その怪物は皮膚の一部として取り込んでいた。

盾に刻まれた傷跡、そして内側に見える、かつての仲間のものと思われる指の骨。


「嘘だろ……。あれ、死んだはずのデンの装備じゃないか?」


防衛にあたっていた兵士たちが、恐怖で足を止める。

かつての戦友の成れの果てが、新たな敵として「再出荷」されて戻ってきたのだ。

戦意は瞬時に瓦解し、怪物の巨大な爪が新兵の一人を捕らえようとした。


俺は即座に、自分の脳内に広がる管理インターフェースを起動した。

勇者召喚時に授かった、唯一の、そして最強のチートスキル。


能力:全リソースの構造解析。


「……個体識別番号、確認。構造の8割が既存の廃棄物。魔力の供給源は背後の魔法陣。サニア、照準を左斜め30度、魔法陣の結節点へ。レオン、あの怪物の右膝の『ボルト』を狙え。そこが唯一の、設計上の脆弱性だ」


俺の指示は、もはや戦術を超えたデバッグ作業だった。

レオンが放った矢が、正確に「継ぎ目」を破壊する。怪物の動きがシステムエラーを起こしたように硬直した。

サニアの放つ魔法が供給源を断ち切り、怪物は絶叫を上げて崩壊していく。


「……助かったのか?」


新兵が安堵の息を漏らした、その瞬間だった。

崩壊した怪物の体内から、行き場を失った圧縮魔力が爆発した。

俺の解析が追いつかないほどの、突発的なエラー。


爆風が新兵を飲み込んだ。

俺が手を伸ばすよりも早く、彼は「廃棄物」の予備軍として地面に転がった。


「……っ」


俺は、血に汚れた地面を見つめて立ち尽くした。

いくら効率的に戦っても、いくら損害を最小化しても、この狂ったシステムが稼働し続ける限り、犠牲者は再生産され続ける。

死んだ人間が敵になり、それをまた生きている人間が倒す。

これでは、俺がやっていることは「効率的な屠殺」の補助でしかない。


「管理じゃない……。こんなのは、ただの浪費だ」


俺の心の中で、冷徹な数値管理とは別の、熱く、澱んだ怒りが燃え上がった。

勇者になれなかったから、裏方で組織を整えればいいと思っていた。

だが、その組織が向かっている先が「終わりなき地獄」なら、俺のすべきことは改善ではない。


「……戦争を、止めなきゃいけない。このシステムごと、全部だ」


俺が初めて口にした明確な「意志」に、隣にいたリクが静かに頷いた。

彼は、崩壊した怪物の残骸――人間の骨と魔導具が癒着した不気味な塊を、嫌悪感を隠さずに見つめている。


「……なあ、これを見て確信したよ。この永久戦争のサイクル、人間側の設計じゃない。人間なら、もっとどこかで慈悲か、あるいはもっと稚拙なミスをするはずだ。これは……もっと上位の、何か別の『意志』が作った完璧な循環だ」


リクの言葉に、周囲の空気が凍りつく。

俺は、自分の手帳を強く握りしめた。


合理的に勝つためではなく、この倫理なき世界を終わらせるために。

雑務課の管理権限を武器に、俺は世界という名の「最悪のクライアント」に宣戦布告する。

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