第20話:初めての異世界らしい現場
ポーションの原料、そして消された前任者。
すべての線が繋がる場所を突き止めるため、俺は管理区域の最果てにある廃棄物処理場へと向かった。
これまでの報告書では、ここは「魔力を帯びたゴミを無害化して焼却する場所」とされていた。
だが、目の前に広がっていたのは焼却炉などではなかった。
そこは、地面に穿たれた巨大な穴だった。
穴の底では、焼却など行われていなかった。
落とされた遺体が、燃えていない。
崩れてもいない。
溶け合っていた。
骨が、金属の隙間に入り込む。
鎧の内側を肉が満たしていく。
まるで最初からそう設計されていたかのように、
寸分の無駄もなく組み上がっていく。
ぐちゃり、と。
焼却炉では聞こえない音がした。
サニアが嗚咽を漏らす。
俺は――手帳を開いたまま、何も書けなかった。
理解したくなかった。
だが、管理職としての思考が、
勝手に工程を数え始めてしまう。
投入。
混合。
再構築。
出荷。
……出荷?
その瞬間、穴の内側から、
完成したばかりの魔物がこちらを見上げた。
新品のような動きだった。
「……永久機関だ。これは戦争じゃない。ただの『在庫回転率』の維持だ」
人類側は、魔王軍を倒そうとしていたのではない。
戦い続け、演じ続け、ポーションの原料(死体)と戦功の機会を絶やさないための、巨大な永久戦争サイクルを回していたのだ。
魔王も、王国の騎士団も、このシステムを維持するための巨大な歯車に過ぎない。
管理とは本来、無駄を省き、終わりを目指すためのものだ。
だがこの国が行っていたのは、永遠に「無駄」を産み出し続けるための、狂気じみた最適化だった。
「サニアさん。……俺が作りたかったのは、こんな効率的な地獄じゃない」
俺の管理下に置かれたはずの王国軍。
その根底に流れる血液が、これほどまでに濁りきっていたとは。
勇者になれなかった俺の仕事は、もはや「組織の改善」では済まされない。
この世界という「欠陥商品」そのものを、根本から返品してやる必要がある。




