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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


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第2話:雑務課は失敗の吹き溜まり

王城のきらびやかな廊下を離れ、階段を下りるごとに空気は冷たく、湿り気を帯びていく。

案内役の兵士が鼻を鳴らし、重い鉄の扉を開けた。


「ここがお前の新しい職場だ。せいぜい腐らずに励めよ」


背後で扉が閉まる音と共に、鼻を突くのは古い鉄錆とカビ、そして……死の匂いだった。

そこは、王国の華々しい戦果の裏側に隠された、文字通りの「吹き溜まり」だった。


薄暗い部屋の至る所に、折れた剣、ひび割れた盾、血の跡が乾いた鎧が山積みにされている。

奥の机では、一人の少女が死んだ魚のような目で、羽ペンを動かしていた。


「……新入り? 荷物は適当に置いて。今日の仕事は、その山から使えそうな部品を剥ぎ取ることと、身元不明者の遺品を仕分けること。記録? 適当でいいわよ、どうせ誰も読まないんだから」


彼女は事務官のサニア。かつては神童と呼ばれた秀才だったが、この部署のあまりの無秩序さに心を折られた一人だ。


俺は彼女の言葉を聞き流しながら、巨大な地下倉庫の奥へと足を踏み入れた。

そこには、想像を絶する光景が広がっていた。


(……なんだ、これは)


棚には埃を被った大量の木箱が並んでいる。

中を改めると、最高級のポーション、予備の弓弦、防寒用の毛布、さらには魔導触媒までが、手つかずの状態で眠っていた。


どれも今、前線の兵士たちが喉から手が出るほど欲しがっている物資だ。

第1話で見た、傷だらけで帰還した兵士たちの姿が脳裏をよぎる。


俺はサニアに問いかけた。


「これだけの物資があるのに、なぜ前線に送らないんだ?」


サニアは力なく笑い、山積みの書類を指差した。


「どこに何が、いくつあるか。それを知る人間がこの城には一人もいないの。出すための手続きも、誰の承認が必要かも決まっていない。ここはただ、届いたものを放り込むだけの場所よ」


つまり、ここは組織の盲点だった。

物資が足りないのではない。「何がどこにあるか」という情報が欠落しているのだ。

兵站の崩壊。組織の機能不全。

前世で何度も見てきた、管理職が現場を把握していない「ダメな会社」そのものだった。


「管理されていないリソースは、存在しないのと同じだ……」


俺は落ちていた一本の羽ペンを拾い上げた。

剣は振れない。魔法も使えない。

だが、ぐちゃぐちゃの情報を整理し、最適化する術なら、嫌というほど体に染み付いている。


「サニアさん。まずは、棚卸しから始めよう」


「たな……おろし?」


「ああ。この『失敗の吹き溜まり』を、王国最強の武器庫に変えてやる」


勇者になれなかった俺の、最初の戦いが始まった。

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