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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生


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第19話:雑務課の前任者

新設された後方支援統括本部の奥深く、かつての雑務課時代から手付かずだった地下書庫。

ポーションの原料という禁忌を知った俺は、さらなる情報の断片を求めて、カビの臭いが立ち込める棚を漁っていた。


そこで見つけたのは、今の整然とした台帳とは似ても似つかない、ボロボロの古い手帳だった。

それは、俺がこの部署に配属される数年前、前任の「雑務課長」が記していた日記のようなものだった。


ページを捲るごとに、俺がこれまで感じてきた違和感の正体が、生々しい言葉で綴られていた。


改善を提案したが却下された。

騎士団の遺体処理の不透明さ、物資の不自然な消失。

それらを是正しようとした私に、上層部はこう告げた。

我々は掃除係ではない。隠蔽係だ。

綻びを直すのではない。綻びを誰にも見えないように塗り潰すのが、お前の仕事だと。


最後の一行は、震えるような筆致でこう締めくくられていた。


この組織は、正しく機能することを拒んでいる。


俺は言葉を失い、その手帳を握りしめた。

俺が「効率化」だと思っていた仕事のいくつかは、知らず知らずのうちに、この狂ったシステムの延命に加担していたのかもしれない。


「……ねえ、その前任者って、今どこにいるの?」


サニアが隣から不安そうに尋ねる。

俺はすぐに、新しく整備したばかりの最新の人事データベースにアクセスした。

名前、配属日、経歴。あらゆる条件で検索をかける。


だが、結果は非情だった。


公的な人事記録:該当なし。


王城の全データを網羅したはずの俺のシステムが、一人の人間の存在を完全に否定していた。

彼が記した「隠蔽」という仕事の最後には、自分自身の存在そのものを隠蔽されるという末路が待っていたのだ。


「……いない。最初から、いなかったことにされている」


背筋に、ポーションの抽出液よりも冷たい何かが流れる。

俺が進んできた道は、かつて誰かが通り、そして消されていった道だった。


だが、俺には前任者にはなかった武器がある。

俺が作り上げた、誰もが頼らざるを得ない最強の「仕組み」だ。

消そうとしても、もはやこの国の血流は、俺の管理なしには一秒も流れない。


「サニアさん。隠蔽係の仕事は、今日で終わりだ」


俺は前任者の手帳を懐にしまい、真っ暗な書庫を後にした。

掃除すべきゴミは、まだ城の至る所に積み上がっている。

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