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【ダークファンタジー】マガツカ ―絶世の美貌は、バット一本で禍を穿つ―  作者: 真柴 零


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4/4

依代の残滓、羅刹のフルスイング

 ルナの気配が霧に消えた。

 後に残されたのは、粘りつくような紫の霧と、生理的な嫌悪感を煽る死臭。

 零は、股下ギリギリまで切り詰めたチェックの超ミニスカートから伸びる美脚を翻し、ひび割れたアスファルトを踏みしめた。腰の位置が高い韓国アイドル風の着こなしが、この不気味な異界で鮮烈なまでの美を放っている。

 ふと、電線に吊るされた街灯が狂ったように点滅した。その光の下、道の中央に座り込む影が見える。


「……悠真!」

 そこにいたのは、放心状態で力なく座り込む悠真だった。

 ひょろひょろとした頼りない体は、真っ黒な呪いの縄で縛り付けられ、その瞳は虚空を見つめたまま焦点が合っていない。

「なになに……? 悠真、しっかりしなさいよ!」

 零が駆け寄ろうとした瞬間、悠真の背後の空間がバリバリと裂けた。

 這い出してきたのは、巨大な蜘蛛の胴体に無数の老婆の顔が貼り付いた怪異――土蜘蛛。


『……ホホ、良イ器ダッタ。魂ノ抜ケタ「用済ミ」ノ殻ヨ……』


 空間の裂け目に座る「儀式の主」が冷酷に嗤う。

 土蜘蛛が、悠真をゴミのように片付けるべく、鋭い脚を槍のように振り上げた。

 なになに? なんなの?

 理解不能な怪異。理不尽な光景。

 土蜘蛛から放たれた無数の糸が、零の制服に絡みつき、チェックのミニスカートの裾を這い上がろうとする。耳元では、数千の老婆が呪詛を吐き散らすノイズが響き渡る。


『次ハ……貴様ヲ……』


 ぬるりと伸びる無数の脚。

 ピクリとも動かない、ボロボロの悠真。


 ――ぎゃあああああああああああああああ!!!!


 土蜘蛛が勝利を確信し、咆哮を上げた。

 それが、零の「不機嫌」の導火線に火をつけた。


「……あー、もう。さっきから『なになに』って、わけわかんないことばっかり! マジでイライラするんだけど!」


 ドォン!  零の周囲で黒い霊圧が爆ぜた。

 絡みついていた糸が、一瞬で消し炭になる。

 零の背後に、天を突くほどの巨大な鬼の幻影が、彼女と同じポーズでバットを構えた。


「私のからかい相手を勝手に使い捨てて……よくそんな醜い面で笑えるわね」


 零はローファーを深く踏み込み、バットを滑らかに構える。超ミニの裾が風を切り、無敵の美脚が地面を爆ぜさせる。


「おりゃぁぁあああ!!!!」


 ズガァァァァァァァァン!!!!!

 霊力の塊となったバットが、土蜘蛛の巨躯を、そして上空の儀式の主を、空間ごと真っ二つに粉砕した。

 衝撃波で異界の霧が瞬時に晴れる。

 土蜘蛛の断末魔――「ぎゃあああああ!!」という絶叫が響き渡る中、零はバットを担ぎ直し、崩れ落ちるひょろひょろの幼馴染を、左腕一本で強引に支えた。


「ちょっと、いつまでボーッとしてんのよ悠真。……さあ、今からあんたん家によって一緒にお風呂入って、おかあさんのたのんでいたおまもりをもらってから帰るのよ!」


 わざと顔を近づけて、とんでもない提案を投げかける。

 すると、放心状態だった悠真の肩がビクッと跳ね、焦点の合わなかった瞳にみるみるうちに驚愕が戻ってきた。


「えっ……!? れ、零……お風呂って、お、お前もう高校生だろ、そんいうこというなよ、そういうところがなけりゃぁ美人……」

 そういうと、悠真は意識を失った。

 絶世の美貌に不敵な笑みを浮かべ、零はひょっこり戻ってきたルナを横目で睨んだ。


『……ふふ。今のスイング、最高にクールだったよ』


「……あんた、次は置いていったら本当にバットで折るからね、さあ、出口を探すわよ、ルナ、こいつをお願いね」


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