表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ダークファンタジー】マガツカ ―絶世の美貌は、バット一本で禍を穿つ―  作者: 真柴 零


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

鳥居の亀裂と、鉄棒の乙女

 放課後の喧騒が、西日に長く伸びる影に溶けていく。

 神楽坂零は、使い古された金属バットを右肩に乗せ、ゆったりとした足取りで校門に向かって歩いていた。

「あーあ、またやってるよ。零、お前まだそんな物騒なもん持ち歩いてんのかよ」

 背後から飛んできた呆れ声に、零は長い黒髪をなびかせて振り返った。

 そこには、隣家の幼馴染であり、この街にある神社の次期神主――水城(みずしろ) 悠真(ゆうま)が、鞄を肩にかけ、困ったような顔で立っていた。


「うるさいね。これは私のアイデンティティなの。あんたこそ、そんなひょろひょろで神主が務まるのかい?」

 零が不敵に笑うと、通り過ぎる生徒たちが一瞬、その美貌に見惚れて足を止める。だが、肩のバットを見た瞬間に、蜘蛛の子を散らすように距離を置いた。

「余計なお世話。……いいか、お前は黙ってりゃ超美形なんだから、そんなもん捨てろよ。学校でなんて言われてるか知ってるか? 『殲滅の羅刹女神』だぞ。可愛さと鬼感が消えてないって有名なんだからな。こないだお前に告白したラグビー部の奴、振られたあとに絶望して自分で地面に頭ぶつけて『あーーー!』って叫びながらガイアを這いずり回ってたって噂だぞ」


「殴ってないわよ。私はマガツ以外は殴らないって決めてんの。……あのアホ、勝手に自爆してのたうち回ってただけだわ」

「……自爆かよ。お前の振る舞いが怖すぎて、脳がバグったんじゃねーの? ったく、お前にはまだ、その『マガツ』ってのが見えてんのか。子供の頃、俺が化け物に襲われたのを助けてくれた時から、一歩も変わってないんだな」


 悠真は少しだけ懐かしそうな、それでいて危ういものを見るような目で零を見た。校門を出て、二人の家がある神社の方角へと歩き出す。

「女子高生なんだから、もう少し普通にしろよな。あーそうだ。お前ん家のおばさんに頼まれてたお札、用意できてっから。今から取りに来いよ」

「なんだよ」

 零はニヤリと口角を上げ、悠真の顔を間近で覗き込んだ。


「お札を口実に誘い出しちゃって。……何、昔みたいに一緒に風呂でも入ろっか?」

「っ! バカ、いつの話してんだよ! 冗談でもこんなところで言うなよ! 俺が皆に殺される」

 悠真が顔を赤くして怒鳴った、その瞬間だった。

 神社の鳥居が目の前に迫ったところで、空間が、腐った肉が裂けるような音を立てて歪んだ。


「……っ!? 悠真、伏せな!」

 境内の空気が一変し、夕焼けを食い破るようにどす黒い「亀裂」が虚空に走り出す。そこから、ぬるりとした紫の触手が溢れ出した。

「え……? なんだ、これ……っあ!」

「悠真!!」

 零がバットを握りしめ、地面を蹴る。しかし、亀裂から噴き出した「禍」の衝撃波が、彼女を拒絶するように弾き飛ばした。


 悠真の体が、目に見えない力に吊り上げられ、亀裂の中へと引きずり込まれていく。

『……ミツケタ……器……神の、血を引く……器……』

「禍津め……! あいつをさらってどうするつもりだ……!」

 悠真の体が完全に闇に消える寸前、零はバットを握り直し、猛然と走り出した。


「返せ。……私のからかい相手を、勝手に連れて行くんじゃないよ!」

 零は咆哮し、閉じかかった亀裂――異界の門へと、その身を投げ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ