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4 冷淡姫は危惧する

 それから一月が経ち、二月が経ち。

 三人の関係は、依然として変わらない。

 マリアンナの淑女教育は進んでいるのかいないのか、難しいところだ。


 しかしマリアンナと第二王子は傍目に見ても想い合っているように思える、というところまで進展していた。

 

 現段階では、第一王子の立太子の儀と同時に第二王子の臣籍降下も発表されるのではないかとまことしやかに囁かれている状況だ。

 このままいくのであればマリアンナが第二王子の妻として高位貴族入りを果たすことになるのかと思うと、イリアネは複雑な気持ちになる。


「イリアネ様! これ! この招待状、届きました!?」


「……ええ、私のところにも届きました」


 そんな状況下で、マリアンナが目を輝かせてイリアネの前で振り回す招待状。

 それはとても綺麗な、飾りのついたものである。


 これはこの国の妙齢の女性たちの中で無作為に(・・・・)選ばれて、特別な芸術品を楽しむ会……とされている。

 だがそれはあくまで表向きの話だ。


 その芸術品と場所を提供する貴族家が選んでいるだけの話。


(……絶対に何かあるわ)


 イリアネは誰が招待されているのかまでは把握していないが、イリアネとマリアンナの両名が誘われているのだ。

 彼女たちは、社交界に迎合することもできず浮いている存在である。

 そんな二人が同時に誘われるなど、こんな偶然がそうあるだろうか?


(……何が目的なのかしら)

 

 以前も一度誘われて参加したことがあるが、イリアネにとってあれは終始居心地の悪いものであった。


「楽しみですね!」


「あの、マリアンナ様……そちらの会はあまりお勧めは」


「えっ、だってあの芸術的な建物! あれを楽しむんでしょう!? 最高じゃないですか!!」


「歴史的建造物は他にもありますわ。あの会に参加なさる方々は大抵が大貴族に連なる方々で、その、少々言葉が冷たく感じられることもあるので……マリアンナ様は」


「いいじゃないか、行きたいと言っているんだ。マリアンナだって子供じゃないんだし、経験を積むべきだ」


「でもアリオス様、あの会は……」


「イリアネ嬢、マリアンナも早く一人前にならないと。もう貴族になって半年経つんだ、会を選んでいられる立場にない。……少しでも多くの人と触れあって慣れるべきなんじゃないか」


 悪意にも、善意にも。

 アリオスの、その言葉の裏に含まれる意味合いにイリアネだって気づかない訳がない。

 実際、いつまでもイリアネやアリオスとだけ親しくしているのはおかしいし、彼女を理解してくれる人とだけ接していくのは難しい。


 ましてや、マリアンナが王子と親しくしているならばなおのこと。


(……そうね、本人がやる気を出しているのだから)


 私が口を出すことじゃないのよね、そうイリアネは心の中で呟く。

 だけれどふと、アリオスが――自分よりもマリアンナを優先するかのような発言をする彼が、ひどく遠い存在のように感じて、イリアネはそっと目を閉じて「わかったわ、もう何も言いません」と弱々しく言ったのだった。

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