イカ追いクエスト4「はたらき者には福がある」 - 2
【前回までのあらすじ】
運良く乗り込めた船で大海を渡ったAZ。
そしてついに見つける大地に深々と刺さる伝説の剣。
イカにしてこの剣を引き抜けというのか。
聖者誕生。
この世界には魔法の創始者と呼ばれる存在がいた。
創始者がまだ魔法を身につけていない頃、彼は山のふもとで農業を営み生活をしていた。
彼には狩人の兄がいた。
森で狩りをする兄と作物を育てる彼は2人で力を合わせ暮らしを支えていた。
ある日兄が狩りに出かけると、しばらくして大雨が降りだした。
雨は一晩続いた。
明け方に雨はやんだが狩人はまだ戻っていなかった。
心配になった彼は兄を探しに森へ出向くことを決心する。
獣に襲われないよう用心しながら森を進むと、離れたところで崖が崩れていることに気がついた。
まさかと思い見晴らしのいいところから覗き見ると、崖下に倒れている人を見つける。
兄に違いない。
焦る心をおさえながら道を探し、やっとのことで崖下へたどり着く。
そこには冷たくなった兄が横たわっていた。
彼は最愛の兄がもう戻らないことを悟りながらも必死に人工的な蘇生を試みた。
治れ、治れ、生き返れ、と念じ続けた。
すると、不思議なことに傷だらけの兄の体が次第に修復されていく。
希望を感じ、その感覚を絶やさないよう兄へ向け続けるとしばらくして傷がすべてふさがった。
奇跡に心躍らせ兄が身を起こすのを待つが、しかしそれはかなわなかった。
どれだけ待とうとも兄が目を覚ますことは二度となかった。
彼は深い悲しみと無力感に捕らわれながらも生活の為近くの集落へと赴く。
悲しみをぬぐうように、彼は傷を負ったものを見つけては癒すようになった。
兄を失った心を慰めるように彼は癒しの力をふるい続けた。
それ以来、彼の周りには人が集まるようになった。
彼は人々が同じ想いに陥らないよう国中をめぐり、その力をふるい、素養のある者には力の使い方を伝えていった。
いつしか彼は聖者と呼ばれ、その国は平和に満ち繁栄した。
そして癒しの奇跡は人々の間で交わされ世界をめぐり広まっていった。
これが聖者物語。
僕の大好きな話だ。
次回、イカ追いクエスト4
「はたらき者には福がある」 - 3