イカ追いクエスト4「はたらき者には福がある」 - 1
【前回までのあらすじ】
海底神殿を無事脱出したAZ。
大海原では浮かぶしかないAZに突然ぶつかる船影。
「助かった、こんなところでイカだに乗れるなんて」
あれからしばらくして、僕は召喚物研究所の事務職員兼研究員という名目で働くことになった。
僕のがんばった告白は、転生ってなんのことだい?の一言から始まり、テテツ先生は考え込むそぶりはあったけど、結局ふーんで終わった。
すごく興味ありそうな話題かと思ってたのに、2人ともほとんど興味なさそうだった。
「じゃあ、特に問題なさそうだし、待ってるよー」
と言われ、あっさり就職先が決まった。
一応他の会社も受けてみたけど全てだめだった。
あの人が手をまわしたんだろうか。
いや、ただの実力不足かな。
深く考えるとむなしくなるのでやめた。
でももしあの人が手を回したとしたら、テテツさんっていろんなところに影響力がある人になっちゃう。
研究者ってそういう権力みたいなもの持ってるものなのかな?
とりあえず父さんも母さんもすごく喜んでくれたからこれでいいと思う。
一応、もう一度だけ初出勤時に転生について語ってみた。
メイさんはの回答は短かった。
「そう。せいぜい役に立ってね」
と返答。
先生も簡単な言葉だった。
「そんなこともあるんだねぇ」
とのこと。
こいつら召喚以外には興味ないのか。
研究者ってやっぱり変わった人が多いのかな。
もちろん2人以外にも職員はいるけど、まだ打ち明けられそうな人いないし。
いや、メイさんと先生なら信用できるのか?
興味なかったからよかったけど、随分早まったことをした気がする。
とりあえず秘密にしてもらうことにした。
自分も口を滑らせないように気を付よう。
入所当初はメイさんとは別部門で召喚物の調査チームに配属となった。
このチームで召喚物のチェックをしながら研究所の活動に慣れていこう、というはからいだ。
周りにいる人はみんな頭がよさそうに見える。
気後れしてたらテテツ先生が背中を押してくれた。
「いいかいエイゼット君。僕ら凡人には凡人なりの賢さがある。それを学び身に付けていくことだ。自分に集中しなさい」
メイさんがこの人のこと尊敬していると言ってたっけ。
なんか、わかる。
よし、がんばるぞ。
僕の業務は過去の召喚物の中で自分が知っているものがあるか、それを書き出すというもの。
用途とその構造をわかる範囲で記載。
1日のスケジュールはその作業がベースになる。
あとは会議とかに出席してみんなの話を聞きながら全体の動きを知ることになったけど、会議は何言ってるのかさっぱり。
先輩方に教えを乞う毎日だった。
先輩と話してる中、魔法のことで盛り上がったことがあった。
魔法の起源についてだ。
「エイくんは魔法に興味あるんでしょ?どのくらい知ってるの?」
「とりあえず中級くらいの資格は取りましたよ」
「じゃあ基礎と簡単な応用はそこそこ知ってるのか。魔法の起源についてはどう?どんな考えを支持してるの?」
魔法の起源は諸説ある。
そしてそれは魔法学会において誰もが論ずるところでもある。
各分野ごとに支持する説はだいたい固まってくるらしい。
似た人が集まるからかな?
いくつか聞いたことがあるけど、どれもこれも胡散臭い。
魔法生物学では自然界を模倣して進化したという説。
人間は自然から力を得る方法を考え薬などを作り服用して感覚を鋭くした。
そうやって世代を重ね、自然界を魔法という形で模倣、具現化しその力を身につけていったという考え。
かなり飛躍した部分がある。
あとは魔法エネルギー工学では人間が持つエネルギーは日々体内に蓄積される。
そのエネルギーが偶発的に外へ発露されたことがきっかけとする考え。
ちゃんと考えたのか怪しく感じる。
そして我らが転移学会においては異界からもたらされたという説まである。
ほんとに様々だ。
全部根拠がないけどね。
魔法なんだから根拠なんてあるわけないのは当然か。
もちろん僕も支持する説がある。
こういう話は誰だって好きでしょ、今までに会ったみんなだってきっとそうだ。
僕は、魔法は人間の思いやりから生まれたと思ってる。
こんな童話がある。
聖者誕生。
まさに魔法の始祖誕生がテーマの話だ。
次回、イカ追いクエスト4
「はたらき者には福がある」 - 2