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イカ追いクエスト3「かわいい子には気を付けよう」 - 2

イカにも温厚そうな亀に連れられるAZ。

向かう先は海底神殿。

新たな伝説を求めるAZの旅は続く。

「着いたわ」

どうしようか考えていて気付かなかったけど、いつの間にか目的地に着いていた。

入り口の看板には召喚物研究所と書いてある。

年季の入った建物は洋館のような外見で、ぱっと見てわかるほど古びていた。

でもだからこそ風格があって立派にも見える。

「まず受付で入館証を発行するから待ってて。あと先生連れてくる」

彼女はそう言って建物の中へ入っていった。


 周辺にあるものを適当に眺めていたら、思ったより早く入館証を持ったあの子と例の先生とやらがやってきて中に入れてくれた。


「やあ、待っていたよ。さあさあ、さっそく見てほしいものがあるんだ。おや、この建物が気になるのかい?そんなに面白いとは思わないが好奇心が強いのはいいことだ。まぁ他とは少し違うようだけどね。あとでメイ君に案内させよう。実は丁度さっき新しい召喚物が手に入ってね。用途がさっぱりわからないんだ。もうお手上げだよ、ははは。実にタイムリーだよ君は。おお、そういえば、名前はなんて言うんだい?すまない、資料は目を通したんだが他のことに頭がいって忘れてしまったよ。ああ、そうだ私はテテツという。この研究所の所長だ。ちなみ彼女は私の助手のメイ君だ。幼いながら研究所に入ってきた優秀な子でね。だがこの子のことだ、きっと自己紹介なんてしていないんだろう。君のそういうところは変えていった方がいいんじゃないかな。コミュニケーションは大事だからね」


 メイさんは、はい、とため息交じりに返している。

その様子を勘違いしたテテツさんは説法を始めた。

「人と接するのが苦手なのはわかるが自己紹介くらいはしよう。そうだな、まずはしばらく自分のことを話してみればだいたい人間性が伝わってお互い気がほぐれるのではないかな。そうだ、どうかね、まずは私をモデルにしてみなさい。私が話すとね、相手の人は必ずうんうんと頷いてじっくりと聞いてくれるのだよ。どうやら私は話し上手のようだからね、参考になるはずだ。うむうむ、やはり想いをきちんと伝えるのはとても大切なことだよ。そうすれば必ずわかりあえるってものだ。私の知人にそれが苦手な人がいる。あのような人間性では独善的になるのも仕方がないというものだ。だから君もぜひ語り合いを大切にしたまえ。よし、これを機に今度一緒に練習してみようではないか。まかせたまえ、友達がたくさんできる日も遠くないぞ」

 うんうんと無気力に首を縦に振るメイさんの時間と気力は一気にそぎ落ちていった。

気の毒に。


「ああ、すまない。それで君の名前は?いやあ、ついつい話し込んでしまうよ。話し上手というのはよくない側面もあるようだ。何事も良し悪しがあるといういい例だね。ふむ、いくつになっても学ぶことがある」

「あ、あの僕はエイゼットです。よろしくお願いします。召喚物の確認の前に、その、協力する条件をお伝えしたいのですが」

「条件か。よろしい。言ってみたまえ」

「ありがとうございます。まずは、その、僕を研究所の一員にしてもらえないでしょうか」

「おお、なんと意欲ある若者か。すばらい。任せたまえ、一緒に転移学を盛り上げていこうではないか。きみは今学生だったね。いやすまない、君を探し出すのに簡単ではあるが調べさせてもらったんだ。なに、プライベートまで解き明かしてはいないはずだから安心したまえ。よし、卒業したら必ずここに入れるように手配しよう。うむ、必ずだ。これで入所決定だ。ふふふ」

 苦笑いをしながら、メイさんの言った通りだなと思った。

なんだかんだでやっぱり付き合いが長そうな2人だ。


 それにしても、この勢いだと考えを変えて他のとこへ就活しても勧誘に来そうだ。

まあ、もういいけどね。

「君にもやりたいことがあるようだね。よろしい。思うようにやってみたまえ」

「は、はい、ありがとうございます」

この人、いい人だな。


 さて、条件はもう1つある。

僕の最後、あの時何があったのか。

それを知るために協力してもらえるだろうか。

この人たちの協力があるかで達成できるか大きく左右される気がする。

不思議と確信じみた感覚がある。

黙っていたら研究所で思うような活動ができないかもしれない。

何かに刺激されたかのような強い焦燥感が湧き上がってくる。


 僕が異界から転生してここに来た人間だ。

今まで誰にも言ったことがない話。

どんな反応になるかはわからない。

けどきっとテテツさんは興味を示すと思う。

きっと。

まさかこのまま拉致監禁とかされないよな。

いやいや、さすがにないか。

さて、覚悟を決めて打ち明けよう。

僕はどうしても、知りたい。

僕の身に何が起きたのか、真相を知りたい。

そう考えずにはいられない。


「あ、ありがとうございます。条件ですが、もう1つあります」

「ほう、貪欲だね。研究者たるものそうでなくては。私も若いころは」

 長くなりそうなので遮るように急いで僕は続けた。

「あの、僕が召喚物のこと知ってる理由、気になってますよね?それは、それはその、僕がその世界の元住人だったからです。僕はこの世界に転生しました。つまり異界から来たんです。なぜこんなことになったかは分からないけど誰かに殺されたことがきっかけで転生したって考えてて。そ、それで僕は殺されるようなことした覚えはありません、だから真相を知りたい。その調査に協力していただけないでしょうか。それが、僕が協力する条件です。何があったのか、なんで僕が殺されないといけなかったのか。それでなぜこの世界に転生したのか。それを、知りたい。もしだめなら一切協力する気はありません」


次回、イカ追いクエスト4

「はたらき者には福がある」 - 1

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