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イカ追いクエスト9「かみさまお願い助けてよ」 - 1

【前回までのあらすじ】

イカツインズの猛攻を耐え勝利を掴むAZ。

束の間の休息に身を浸すAZ。

昔日を思い返すのはさイカいの予兆であった。

 召喚対象先の時間研究を始めてから数年が経とうとしている。

かつて投影術の開発を行った後のこと。

たいして役に立たない僕は研究所から追い出されそうになった。

新しい所長に自分の価値を示せ、と強い言葉を投げかけられた。

急に言われてどうしようもなく、行く当てもない僕は時間研究の話をしてしまった。

みんなは興味を持って聞いていた。


 新しい所長というのはメイさんではない。

その頃すでに彼女は研究所を辞めていた。

話す機会もなく、違うところに行ってしまった。

テテツさんも所長の座を後任に託し研究所から離れている。

僕の後ろ盾は何もなく、成果を出さなければいけない。

あとがなかった。


 時間の魔法研究を行っている人を探し、コンタクトをとった。

そんな人がいることに驚いたけど、窮地を救ってくれる人だからどうにか話を聞いてもらえるように粘った。

その人から聞いた研究内容、過去の例にもれず理解不能だ。

それで召喚術で時間を遡ることはできるだろうか?と聞いてみると、随分真剣な顔をする。

「考えをまとめるのに時間がいる。まとまったら連絡するから待っていろ」

と言われ話は終わった。


 しばらくの間、研究所ではなんとか誤魔化してはいたけど、だんだん追い詰められている。

そんな折、時間魔法研究者から試してみたいことがあると連絡がきた。

藁をもすがる思いというのはこのことか、と急いで向かった。


 指定された施設に行ってみると予想外の人が出迎えてくれた。

テテツさんがいたのだ。

「なぜこちらに?」

「君が行き詰まっていると聞いてね。この道に誘ったんだ。最後まで面倒くらい見たいのさ」

「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

これは本心だ。

僕のことを気にかけてくれてたなんて。


 テテツさんにはかつてのような勢いはなく、随分と落ちつた雰囲気になっている。

なんせ高齢者と言って差し支えない年齢だ、衰えもする。

それにしても最後だなんて。

僕の行く末のことなのか、テテツさん自身の。

その姿で最後までなんて言わないでほしいよ。

考えると辛くなる。

「お会いできて本当に嬉しいです」

「私もだよ。しかし、ここまで来てしまったか」

「それって、僕が時間を研究するってことですか?」

「どうだろうね」


 自分で言っておいてはぐらかすのか。

昔からこういうところがあったな、この人。

肝心なことは隠したままにしてるような感じ。

ここまでわかりやすいことはなかったから、これも衰えかな。

かつては口数が多くて困ったけど、今は逆に少なくて調子が狂う。

よし、この際だから今まで聞けなかったことを聞いてみよう。


「以前からお聞きしたかったのですが、テテツさんはなぜ召喚術に興味を持ったんですか?やっぱり危険性を考慮して監督するため?」

「ははは、陰謀論が好きなのかね。実際のところ学会はね、君が思っているほど複雑なことにはなっていないよ」

「そうなんですか?組織立っていたような動きがあるみたいだったけど」

「そんなもの、それ自体はどこにでもあるただの派閥争いだよ。大したことじゃないさ」

「そんなものですか?じゃあテテツさんはなんで研究者になったんですか?」

「どうだったかな。随分昔のことだからね」

「そんな、とぼけないでくださいよ。僕はあなたに誘われて来た教え子ですよ、知りたいです。他にも、その、誰かの指示で動いているってメイさんが言っていたことがあります。そうなんですか?」

「ふふふ。そうだな、ちょっとだけ教えてあげよう。私が召喚術を研究し始めた頃はね、実は熱意なんて全くなかったんだ。それどころか知識さえない。私は別業界のどこにでもいる営業マンだったんだよ」

「意外、というか意外過ぎます」

「だろうね。誰も知らないことだ。あんな短期間で普通ならこんな地位には就けない。私は目をつけられたんだ。私が君を選んだように、私もその人に選ばれたんだよ。彼はね、不器用な人なんだ。自分が望むことの実現に手段を選ばない。しかも極端なやり方がほとんどでね。自分の想いをただ伝えるだけでも随分と回りくどいことをする。どうすればいいかわからないんだろうな。彼はいつも1人だから。身勝手に振舞えないと気に障るらしい。まったく、彼だって監督や脚本家ではない、舞台の登場人物の1人なのだと忘れているんだろうね。とはいえ私もだいぶ歳を取ったし、もう用はないようでね、最近は何も言ってこない。きっと後任でも探しているんじゃないかな」

「へぇ。あ、まさかその人、僕をテテツさんの後継者にするつもりだったり?」

「ははは、後継者か。君らしい言い方だ。ああ、だがそうとも言えるか。だが君は彼に関わってはいけない。そうだな、君は自分がやりたいことをしなさい。それがいい。何かあるなら必ず私が助力してあげよう。おっと話がそれてしまった。そうだな、あと話せることといえば、ああそうだ。君は私が転移術の発展遅延に加担したと、そう思っているようだけど、逆だよ。そう、発展。そのためにいるんだから。それが彼の望みなのだよ。私の目的は初めて会った時に言ったはずだね」

「確かに、発展させようって話してたっけ。それって、じゃあメイさんは」

「メイくんか。彼女はね、私のささやかな抵抗なんだ。そのことであの人に随分咎められたものだ。メイくんとはもう会っていないのかね」

「はい。どこにいるのか大体の場所を聞いたことはありますが、恨まれるようなことしかしていませんので」

「会えないか。それは残念だな。ふふふ。だが、だとしたら私はうまいことやったのかもな」

「どういうことです?」

「さてね。彼女にも悪いことをしたな。あの子は賢く善良だ。だから巻き込んでしまった。私の期待に応えてくれると思ってね。魔法は本当に危険だよ。そう思うだろ?それに気づいたのはこの業界に入ってすぐだった。だが私はそこから離れることはできなかったんだ。どこに行こうと見つかる。すぐに見つかって連れ戻される。だからね、堂々と反抗してやったのだ。それがメイくんだ。効果てきめん、彼はメイくんに干渉したくないからね。舞台に立たせたくなかったのだ。どうせそうなるのはわかっているだろうに。ああ、彼女の働きは素晴らしいものだったよ」

「メイさんはそのことに気づいているんでしょうか」

「さて、どうかな。そろそろ時間魔法の準備も出来た頃だろう。行こうか」


 結局よくわからない話だったな。

テテツさんは、誰かに脅されて所長をやっていたということだろうか。

自分のやってることを妨害させるためにメイさんを迎え入れて、だけど逆らえず僕を研究所に入れた?いや、それは偶然か。

あの展示会には思い付きで行ったんだから。


 うん?メイさんと僕が会えないことが何に結び付くんだ?

やっぱりよくわかんない話だな。

「エイゼット」

「あ、はい」

「このまま研究に携わるなら人に危害を加えないことを約束してほしい」

「もちろんです」

「よろしい。それなら君の思うように進めてみなさい」

「はい」


 テテツさんのペースだな。

まあ、それも含めてなんだか懐かしい。

懐かしいって感じる時、なんだか感謝したくなる。

あの頃は1人じゃなかったんだって。

そうだよ、悲観的にばかりなってちゃだめだ。

こうしてまた会えた、助けに来てくれたんだ。

1人じゃできないことをしよう。


 いや、でも、それがそもそもの間違いかもしれない。

本当に僕にとっての助けなのかな。

信用してもいいのだろうか。

また利用されるだけなんじゃ。

そもそもタイミング良すぎだし。

どうやって僕の行動を知ったんだ。

どうしようかな、どうすればいいだろうか。

こうやって迷うからよくないのか。

どうしたらいいのか、自分がわからなくなる

でも、そうだ。

もう迷わず進むって決心してここまで来たんだ。

テテツさんが利用するなら僕だって。


 ああ、そうじゃない、これでいいんだ。

先生が以前、僕にとって迷うのはいいことだと言ってくれた。

迷うのはちゃんと考えてる証拠なんだ。

焦らずじっくり考えよう。

今一番僕が知りたいのは何か。

それはテテツさんの目的だ。

それが明らかになればいいんだ。

そうすれば頼っていいのか判断できる。

そうだエイゼット、それでいい。


 テテツさんの話が本当なら今は誰の指示も受けていないことになる。

それならこの人の目的は?

僕に何をさせたいんだ?

次回、イカ追いクエスト9

「かみさまお願い助けてよ」 - 2

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