イカ追いクエスト2「なぜに答えを求めるならば」 - 1
【前回までのあらすじ】
ついに伝説と対峙したAZ。
唸る触手、迎え討つAZの胃袋。
その時、伝説がイカりの咆哮を放つ。
学校から帰ってポストを開けてみるとまたチラシの山が押し込まれていた。
投入口に「チラシお断り」と貼ってはいるが用をなしていない。
番犬でも飼おうかな。
せめて興味が沸くようなものならいいのに、と思いつつ一応目を通してみると控えめなデザインのチラシに目がとまった。
タイトルは召喚物展示会、サブタイトルに隣人の暮らしを知ろうと書いてある。
僕の記憶の中の召喚術といえば、かっこいい術セルフランキングの上位に位置するステキな術だ。
いろんな魔物を呼び出したり、強い武器を出したり、とにかく便利で強くてかっこいい。
なのにこの世界において召喚術といえばけっこうマイナーな術だ。
以前、学校の授業で教わったっけ。
実用性はないし、しかも行使するのに大掛かりな設備が必要。
研究内容が大衆向けでないのに加え、なによりたいした研究価値も未だ見つかってない。
世間に見向きもされない術なのだ。
じゃあ実際召喚されるものはといえば、実は僕のイメージとそれほど違ってないさそうだった。
召喚物の図鑑にあったスケッチを見たときは、まさか、こんなものも出せるのかと一時熱くなったものだ。
用途はわかわないけど、見た目がなんかすごかった。
が、しかし致命的な問題がある。
それは召喚したモノの物理法則がこの世界と一致していない場合が往々にしてあるとかなんとか。
つまり、召喚しても構成要素の違いから存在できないことがほとんどなんだそうで。
チラシを見て何となくそんなことを思い出した。
召喚術に失望したとはいえ、召喚されたものってどんなものがあるのだろうか。
以前から実際に見たいと思ってたから、休日に行ってみることにした。
1人で行くつもりだけど、たまには善行を積むのもいいかもしれない。
両親におかれましてはこの世界での楽々生活に感謝の念がたえないのでありまして。
僕はバイトで稼いだお金で親孝行をしてみようと2人を誘ってみることにした。
かつての社会人の頃を想うとほんと楽だからね。
自由の少ない子供のメリットを満喫しないともったいない。
今だけだし、それに親孝行はできるときにしないと。
なのに、この人たち興味を全く示さない。
父さんに至ってはちょっとムカっとすることを言う。
「そんなもん見に行くなんておまえほんと変わってるよな」
こう言われ、軽い反抗期にいる僕は1人で行くことにした。
親孝行は思い付きでするもんじゃないな。
休みの日、期待を胸に僕は会場に向かった。
会場についてみると、展示会場はそれなりに大きなスペースをとってあった。
まばらだけど意外と人の出入りがあるみたいでちょっと驚く。
でも賑わってるというほどじゃないか。
チケットを買ってパンフレットを見ながら進んでいくと、メインと思われる展示品が会場のど真ん中で存在感を放っている。
他の展示品はその大きな謎の何かを取り巻くようにぐるりと壁に沿って並んでいた。
あと、ちらほらと研究員ぽい人が立ってるのが見えた。
説明とかしてくれるのかな?
さて、あの大きな何か。
なんだか複雑に絡み合った金属の塊にしか見えず、近くにあるプレートには「未知との遭遇」と記載されている。
展示品の紹介には推測だけが書かれてて、どうやら主催もあれが何かわかってないようだ。
適当なタイトルだなと思ってたら近くの人達も、召喚物って全部未知との遭遇じゃない?と話してるのを聞いて、やっぱそうだよなぁと同意。
もうちょっと考えてほしいものだと思う。
パンフレットの見出しには「召喚術はまだまだ発展の途中で可能性に満ちている」と書いてあるけど、要はなにもわかっていないんじゃないかと思えてきた。
この世界の召喚術ってほんと微妙なのね。
パンフレットによると、召喚されたモノがこの世界に存在する物質であれば消失しないらしい。
ざっと見た感じだと展示品の多くは無機質なものが大半を占めていた。
生物は構成が複雑で、仮に部分的に存在できてもすぐに死んでしまうのだそうだ。
身体が分解されるんだからそりゃそうか、なんかむごいな。
作りが簡単そうなボウフラっぽい生物はいたけど、動物と呼べるモノはいなさそう。
ボウフラ、どうやって見つけたんだろ?
水を召喚したらその中にいたとかかな。
偶然に助けられているような業績出できてたりしないよね?召喚術。
うーむ、この展示会、はっきり言ってすごくつまらない。
キャッチコピーの「隣人を知ろう」というテーマがまるで伝わってこないし。
しかも展示品は用途がわかってないものばかり。
ただ収穫物を並べただけな気がしてきた。
まだちゃんと見れてないけど、来るんじゃなかったと後悔。
でもこのまま帰ったら父さんに、そらみろと言われそうだ。
何か面白いものがないかやっきになって周っていると、思いがけず懐かしいものが目に入った。
長方形で片面にガラスっぽいものがはめ込まれているこれは、間違いない。
「スマホじゃん。ははっ、召喚されていきなり消えたら持ち主は相当困るだろうな」
なんて思わずつぶやいてしまった。
スマホの素材はどうやらこちらにも存在してるらしい。
もしかしたら外枠だけかもだけど。
ふと顔を上げると、近くに研究員っぽいおじさんと僕と同じ年頃の女の子がいた。
独り言が聞かれてないかちょっと心配になった。
けどあの様子だと聞こえていなかったようだ。
よかった。
他にも知ってるものがあるかもって思ったらだんだん楽しくなってくる。
どうやら対象とした異界ごとに並べられてるようだ、といまさら気づいた。
何かないかと何周かしてみたけど結局あれだけだった。
仕方がないから帰ることに。
売店に行って召喚術で得た正体不明のキーホルダーをお土産に帰路についた。
帰り道、なんだか懐かしくなって過去の自分を思い出していた。
でも、でも同時に忘れていた嫌なことも思い出してしまった。
人気がない公園を横切ったとき、急に声をかけられ驚いて振り返った。
後ろにいたのは研究員っぽいおじさんと女の子、さっきスマホの近くにいた人達だ。
しまったな、やっぱり独り言聞かれてたのかも。
次回、イカ追いクエスト2
「なぜに答えを求めるならば」 - 2