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イカ追いクエスト7「いのちを大事に」 - 3

【前回までのあらすじ】

第1の四天王は海の藻屑となった。

そして次なる刺客が現れる。

「イカにも、私がスクイドである」

「エイゼット、大丈夫かい?なんだか思いつめた顔してるけど」

「うん、ちょっとね。ねぇ、先生は転移術の危険性ってやっぱり知ってるの?」

「知ってるよ。時空間を超越してやりたい放題になるって話でしょ。ボクの知ってる人もよくそんなこと言ってた。けどね、ボクに言わせればそんなの今更だよ」

「今更って、なんで」

「だってそもそも魔法は危険でしょ。それを危惧して法律で制御しようとしてるけど、そんなの隠れて使っちゃえば誰にもわからない。設備が大掛かりな転移術にしたってそう」

「だからこそ発展させないようにしてるんじゃないか、って僕が言うのもなんだけど」

「そんなのそのうち誰かが推し進めていくでしょ。ボクらが今こうしているように。誰にも止められやしない。止めたいなら魔法っていう存在自体を消すしかないんじゃないかな。できるものならね」


 魔法を消す、か。

そうかもしれない。

メイさんはその研究をしているのかも。

消すのは無理でもそれに近い結果を出せるようになればいいんだ。


「方法はないのかな。魔法のない世界にするなんてことは出来ないのかな」

「えー?うーん、召喚術で世界そのものを魔法のない世界に転移させるとか?でも魔法っていう法則がなければ対象の世界で魔法が使えないから転移は無理か。転移術における異界間での構成物質の相違問題と同様だね。存在しないんだから存在できない」

「それって、じゃあなんで僕がいた世界で魔法が使えたんだろ?あの世界にも魔法が存在してたってこと?」

「そうだなぁ。例えばだけど、とある魔法のない世界がある。その世界に向けて誰かが魔法を行使することで概念を持ち込む。これでその世界に魔法が存在することになる。あとは繰り返すことでいずれ魔法を行使できる人が生まれてくる、とか?」

「なんかすごく飛躍した考えだね。そもそも魔法は発現できないのが問題だったんじゃ」

「そこは、魔法だからね」

「ちょっと、魔法だからねって適当だな。それなら魔法がないから使えないって問題もクリアしてるじゃん」

「ま、適当に思いついた例え話しだし」

「むー、さては全然考えてないな。じゃあその話でいくと、僕らが召喚術を使った全ての世界は魔法が存在する世界になってて、何度も調査をしたらその世界の人も魔法が使えるようになっちゃうってこと?」

「そうだよ。それ、さっきボクが言ったことを繰り返しただけじゃん」

「理解できてるか自分の言葉で確認しただけだよ」

「そうかい。まあ案外この世界の魔法もそうやって誕生したのかもね。ああ、だとすると誰かが干渉してるのか。やだやだ」

「神様みたいな人がいるってこと?いるとしたらどんな人だろ。きっと僕らじゃ及びもつかない考え方とかしてるんだろうな」

「ボクらと大差ないさ。きっとひねくれてて嫌な奴だよ」

「そうかな、神様なんだから人間を超越した絶対的な存在でしょ。たぶん」

「超越した絶対的、ね。神といえど世界の一部。そこに優劣の尺度はないと思うけどね。ただ役割が違うだけだよ。いちいち優劣つけるのってすごく人間的だね。でもそうだな。神は、上下関係とかルールを作ってそれを破ることを許さず押し付けてくる。法のもとに管理って言えばましに聞こえるけど、見方を変えると縄張り意識が強いお山の大将やってるだけなんだよ?そんなのがボクらを超越した存在だと思うの?仮にそれが神だとしても所詮それは人間の神だよ。森羅万象に優劣なんてないからね。小さな存在さ。案外エイゼットみたいな奴かもね」

「それって僕が小物って言いたいの?うー、でもひていできない」

「ははは。大物なんてなる必要もないでしょ。ボクらはやりたいことをやる。それだけでいいんじゃないかな。それが自分の道を切り開いていくってことだと思うよ。君には、難しいかもしれないけどね」

「そんなことないよ。僕だって自分のやりたいことをやって進んでるよ」

「そうかい。じゃあ、もしこの世界に神様がいて、そのおバカさんがボクらの道を勝手に作ってるとしたらどうする?ボクなら余計なお世話だって彼に突き返してやるんだけどね。そんなことしなくてもいいのにさ。誰も望んでいない」

「そうだね、勝手に決められたら誰だって嫌だ」


 人間の神か、たしかに神話にでてくる神様って人間臭いのしかいないもんなぁ。

神様がどんな奴か、うーん、最近の出来事を思うと嫌な奴だと思いたくなってきた。

うん、先生の考えに一票だ。


「私はこの世界が彩り豊かで希望に満ちていると信じたい。そんな世界を意固地な奴の思い通りになんてさせたくはない」

「先生?急に私とか、ちょっと目を離した隙に頭打った?」

「そんなわけないでしょ。まったく。昔、知ってる人が口にした言葉を思い出しただけ」

「その若さで昔っていつのことだよ。ふーん、希望に満ちた世界ねぇ」

「そう、この世界は好きだよ。ボクの気持ちも同じだ」

「そうなんだ、実験楽しそうだもんね」

「ああ、何をやっても色んな発見がある。やってみたいことばかりで時間が足りないよ」

「はは、先生ってそういうところは年相応って感じだね」

「ふん、そんなことはないさ。ボクは何年生きたって今と変わらない」

「そーですか」

先生って純真だよな。


 それにしてもさっきの例え話通りなら、召喚術を何度も繰り返せば存在しない物質を生み出すことが出来るってことになるんじゃ。

実験してみようかな、もしかしたらほんとに魔法の起源に行きついちゃうかも。

いやだめか、またメイさんともめることになる。

会えるなら、だけど。

こっそりやるとか。

うーん、それやったら先生の言った発展の抑制はできないってことを自分で証明しちゃうのか。

こんなこと考えるなんて、僕はどうしたいんだろうか。


 本来やるべきではないことが自分の進路だと思ったらどうすべきか。

どう考え、どう判断すべきか。

メイさんに以前、迷った時はまず極端に考えてみるといいって教わったっけ。


 そうだな、例えば神様だったら。

制限なんてないんだろうから、やりたいと思ったらやる。

けど、思い通りにしたいのにみんながどうにかしてその通りにしてくれなかったら、きっと不満だろう。

見守ってくれたりしないかな?

無理強いしちゃうかな。

だとしたらみんなを不幸にしたり、壊したりして次第に意固地になっていく。

1人だから誰も指摘してくれない。

些細なことでも躍起になって、それで何でも大変なことみたいに感じちゃう。

本来保つべき基準が上手く維持できなくなるのか。

やっぱり辛いな、孤独って。

そこまでしてやりたくはないか。


 僕は、孤独になってまでやりたいと思うことがあるだろうか。

メイさんは、たとえ1人でも世界の為にって研究を続けてる。

先生はやりたいことをしてて、1人になっても構わず好きなことを続ける。

どんなことであっても打ち込めることがあるってほんと、いいことなんだな。


 でもメイさんと先生は違う。

他人のためと自分のため。

同じようで違う。

その違いって自由でいられるかってことかな?

他人のためだと周囲の状況に振り回されちゃう。

でも自分のためだと身勝手になりかねない。

そうだとしたら今の僕は、自由じゃない。

みんなの思惑で泳がされて、大切にしたい人と溝が出来て。


 なのに僕は考えて行動した、自分の思うようにやってるなんて考えてる。

なんだか苦しい。

やりたいことじゃないってわかってたじゃないか。

さっさと手を引けばよかったんだ。


 ああもう、何度も何度も、またこう考えてしまう。

まったく進めない。

出口が見えないよ。


「で、どうするの。この研究続ける?降りる?」

「なに、急に」

「なんかためらいがあるように見えるから」

「そう?続けるよもちろん。ここまで来たし、問題なさそうだし。目的は、果たすよ」

「ふーん。君、やっぱり考えなしに進むね。だからこそここまで来たのか。もうちょっと自分の意思を明らかにしてから取り組んだ方がいいんじゃないかな」

「ちゃんと考えて選んでるよ。迷いはするけど、そのつもりだよ。ほんとなんだよ急に」

「ならいいさ。状況に流されてないならね。君にとって迷うことはいいことだと思う。さて、開発は済んで十分な結果を出した。これ使って何するのか知らないけど、問題はないと思うよ」

「さっきは研究続ける?とか聞いてきたのに、先生は辞めちゃうつもり?」

「そうだね。まあ聞いてみただけ。あとはご随意にどーぞ」

「もう、手伝ってくれないの?」

「ボクの役目はここまででしょ。他に何かある?君の目的に付き合えって?」

「先生がいれば、すごく助かる。僕1人じゃできないことができる」

「だろうね」

「やっぱり、だめかな」

「駄目っていうか嫌だ」

「そんな。まあそう、か。仕方ないよね。そりゃそうか。その、投影術の共同開発、ありがと」

「どういたしまして」

「もう、会えないのかな」

「ボクと?君が考えるべきは君のやりたいことが叶うかどうかでしょ」

「そうだけど、そうだけど。でも、わかった」

「そう。よろしい」


結局またひとりか。

1人になるとすごく不安になる。

僕はこの先1人でやっていけるろうか。


そう思ってたら先生が僕を見て言った。

「大丈夫。いつかまた会えるさ」

「うん!」

次回、イカ追いクエスト7

「いのちを大事に」 - 4

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