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イカ追いクエスト6「かりそめの平和は崩れ去る」 - 2

【前回までのあらすじ】

イカ語を理解し自宅の道を教えたAZ。

そんなAZの前に立ちはだかるイカした男。

「一緒にテッペン目指さなイカ?」

 それから予定通り田中家を調査対象に設定して進めることになった。

けど、調査対象に指定された中の1つになっただけ、いつでも調査できるわけじゃない。

それに原住民がいた場合、干渉術は行使しない決まりになったので何もできない。

それでも不意を突いて僕は手紙や周辺の物体干渉を使ってアプローチしようとした。


 そう、何度も挑戦した。

ようやく見つかった田中だけど、あいつすぐ逃げるし、うまく追い詰めて文字使って対話しようとすると機材が突然エラー出して調査終了したり、ほかにも干渉術が不安定になって逃げられたり、とにかくうまくいかない。

しかもどれも原因が特定できてない。

明らかにおかしい。

あまりにも不自然なことが立て続けに起きてる。


 不自然な状況が続いていることにみんな不安になってる。

この間の報知機の誤作動でいたずらじゃないかって話から、やっぱり誰かが何かしてるんじゃないかって気が気じゃない。

中には僕らと同様に干渉術みたいな力が使える異界人が仕返しをしてるんじゃないか、なんていう人もいる。

所長もメイさんも対策がとれず困っているようだった。

2人には珍しく、余裕のない表情をしていた。

いったい何が起きてるんだ?


 あくる日、先輩達に呼ばれて部屋に行くと、出迎えてくれた先輩はすごく警戒した様子で僕の背後や部屋の周りを見てから招き入れた。

「研究所内で起きている一連の出来事についてだ。エイゼット、きみが狙われている可能性が高い」

「僕ですか?なんだろう、干渉術が気に入らないとか、召喚術の実績をねたんでとか?」

「ねたんでるって、それ自分で言うんだ。でもまあそうかもね。私たちもそういう話になった。と言うのもエラーが起きるのも報知機の誤作動も君が関わっている時だけしか起きていない。理由はわからないけど、きみの調査を妨害したいというのが結論だよ」


 僕の調査。

その言葉にドキッとする。

もしかしてばれてる?先輩たちにも?まさか、だから席外してくれてたとか?

「ぼ、僕の調査って、普段やってる異界調査のこと?それか倉庫の召喚物チェックかな」

「それ、まだやってたんだ。理由がわからないから特定できないよ。きみの業務全部かもしれないしどれか1つかもしれない。とにかくきみが調査に関わることに異論がある者がいるんじゃないかって話。そいつが妨害のため暗躍しているのではないかと考えている」

「そうそう。他の研究員が干渉術を使ってもエラーが起きることはないし、召喚術も同様。単純なロジックだけど、これらのことから妨害したい対象がエイゼットであると考えているよ」

「そんな。僕の妨害をしたいって、なんで」

「エイゼット、きみを呼んだのはそれについて話したかったからじゃない。ここからが本題だ。いいかい、なぜ妨害したいかは現状不明だしそれほど重要じゃない。大事なのは誰がやったかだ。いや、誰ならできるのか、だ」


 誰って、なにを言いたいんだ。


「誰って、ちょっと待って整理が追い付かないよ」

「ああ、じゃあまず報知機だ。これは研究所員にしかできない。この研究所には機密情報がたくさんあるからね、入館者は厳重なチェックをされているし、研究者内の重要個所は常に監視しされている」

「ああ、そうですね。たしかに、いつも入り口で入出管理されてる。大事なものには結界魔法もかけるくらいセキュリティすごいですもんね」

「そうだな。次にエラーや干渉術についてだ。これは機材に対してそれなりに知識がある者でないとできない。みんなが使っている機材にタイミングよくエラーを出すなんて実際どうやってるんだか。干渉術も現段階ではまだ完成とはいいがたい部分がある。おそらくその点をついて術を不安定にさせているのだと思う。」

「エイゼット、落ち着いて聞いてね。犯人は召喚調査中にその場にいる人で、報知機を誤作動させられるような研究所を自由に動ける人。つまり各種セキュリティを通過して、それでいて召喚術の機材にまで及ぶ専門性を兼ね備えた人物ってことになるの。わかる?」

「それは、それって僕らの近しい人に犯人がいるってこと?というかそれって、それって」


 メイさん?というかあの人しかいないじゃないか。


「メイさんが犯人って言いたいの?」

「そうだと思ってる。証拠はないけどね。干渉術の導入にはみんなが驚くいたほど苛烈に反対したし。何か思うところがあるのかも」

「でもそれならもっと、直接言えばいいじゃないですか。いつもならそうしてる、遠慮なんてしない人だよ?犯人は別とか。所長だって十分怪しいじゃないか。いつも何してるかわからないし。きっと、きっと違う」


 きっと違う。

この言葉にメイさんが無実である可能性が低いと、そう思っていることが表れてしまった。

自分の言葉に含まれた疑念の強さに、やり場のない悔しさが湧いてくる。

「まだ確証はない。だからこんなところで話しているんだ。犯人が誰にせよ、いま研究所内はピリピリしていて、とてもじゃないが研究に集中できない。みんなのストレスが高まっているのを感じる。早く手を打ちたいものだよ」

「僕、メイさんに聞いてきます」


 そう言って部屋を出た。

先輩たちは追ってこなかったし、そもそも止めもしなかった。

僕がこうすることを見越してあんな話をしたんだと、しばらくしてから気づいた。


 メイさんはどこにいるだろうか。

目に入った職員に聞いたら研究室にいると教えてくれた。

そこに行ってみると、ドア越しにメイさんが1人で何かを考えている姿が見えた。

ちょうどいい。

僕は研究室に入っていった。

ノックもせず勢いよく入ったのからか、彼女は咎めそうなそぶりを見せたけど僕の様子を見て何も言わずに立ち上がった。


 僕は今どんな顔をしてるんだろうか。

怒りなのか、失望なのか、困惑もあるし、自分がどうしてこんなにも憤ってるのかわからなかった。

でもこれからそれが何かわかる気がしていた。


 メイさんは静かに僕を見ている。

僕が聞きたいことがわかっているかのようだ。

だから本題をすぐにぶつけた。

なんであんなことをしたのかを。

次回、イカ追いクエスト6

「かりそめの平和は崩れ去る」 - 3

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