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イカ追いクエスト5「せすじが凍るその瞬間」 - 1

【前回までのあらすじ】

ついに大王イカを討伐したAZ。

しかし彼は立ち止まらない。

終わりとは次の始まりの時じゃなイカ。

 田中を見つけたことで僕は気持ちを新たに業務に励むようになった。

あれから数年。

召喚実験は順調に進み、僕がいた世界の知識は研究所内でそこそこ知られるようになった。

召喚物から文化の考察を行う講演が開かれるほどだ。

それは一般人にも波及してて、僕がここに来るきかっけになった展示会もそれなりに好評になった。

なんせあの父さんでさえ興味を持ち始めているほどだとか。

それくらい集客も伸び、お客さんもある程度定着化してなんとか成功といえる結果が出てテテツさんは大喜びだ。

といっても微々たるものだけど。


 ちなみに各異界にはそれぞナンバーがふられてて、僕がいた世界は1-26と呼ばれてる。

頭の数字は重要度を示し(1が最上)、続く数字は重要度を問わず見つけた順にナンバリングしただけらしい。

26番目に見つかった世界で学術的にも価値がある世界、というわけだ。


 この数年で僕は研究への貢献が評価されて、なんとまさかのサブリーダーに就任。

メイさんのメインプロジェクト以外に小さなプロジェクトを担当することもある。

なんだけど先輩達からは冷やかされている。

「大役ご苦労さん。エイゼットがいてくれて助かってるよ」

と業務上の面倒な管理をしなきゃいけないことに皮肉を込めて感謝の言葉を浴びせられた。

はじめは出世したと喜んだんだけど、どうやら誰もやりたがらない役を押し付けられたみたいだ。

でもまあ、それが出来るとみなされたわけだし、どんな世界でもやっぱ評価されるのは嬉しい。


 それから転移学関連の催しになるべく出席して人脈を広げてたら面白い研究者と出会った。

その人は召喚でモノを持ってくるのではなく、直接対象に干渉する術というものを考えていた。


 転移学の派閥は意外と多い。

その転移学に該当する術は召喚と転送をベースに構築されている。

召喚術は対象をこっちの世界に引っ張ることで召喚という現象を起こしている。

転送術がその逆でこちらから異界に送る術。

転送術はなぜかまだ成功例が少ない。


 そのことを研究所のみんなで話してる時にちょっとふざけてみたことがある。

「この僕なら転送術だろうといけるかもね、ふふふ」

と冗談半分に口にしたら反撃を受けた。

「術にはいまだ不完全な部分がある。現状の成果は運しだい。だから誰がやっても結果は大差ない。調子に乗るな」

とメイさんにたしなめられたのだ。


 さて、学会で知り合った研究者が面白いと思えたのはどちらとも違う新しい分野を切り開こうとしてるからだ。

彼は召喚ゲートを開いた後、対象の世界に直接干渉する魔法を考案した。


 魔法術式の名前は干渉術。

この術はまだ転移学会では認められていない。

だからなのか辛辣な態度をとる研究者も多い。

そもそも異界を行き来するわけじゃないんだから転移学ではないだろ、と揶揄されてたりする。

という感じだから費用の工面が大変で研究が思うように進まないらしい。


 で、この干渉術。

僕の目的にとても役立つものだと気づいた。

この術を使えば僕がこっそり進めてる田中調査がきっと進めやすくなる。

だから何とかしてテテツさんを説得して干渉術をうちで研究できないか考えてみた。


 色々考えたけど、ストレートにいくのが一番いいと思う。

召喚術の調査に役に立つ、という理由を前面に企画をあげた。

実際そうだし。

なんせこの術を使えばこちらに持ってこられないモノも直接調査が出来る。

それを所長に話をしてみたところ一旦検討となった。


 テテツさん曰く。

「今やメイ君がこの研究所の実質トップだからねぇ。彼女がノーと言ったらそれまでになるんだよ。なんでかって?色々任せてたら彼女なしではまわらなくなってしまってね。学会の連中には彼女がここの所長だと思っている研究者もいるくらいだ。以前、所長宛と書いてある手紙が届いたが差出人に覚えがないものだからメイ君に聞いたんだ。そうしたら実は彼女の知り合いだったなんてこともあってね。それにほとんどの会合にも出席してもらっているし。彼女は誰もが認めるほど優秀だからね。今や彼女が出席するのが当然みたいになっているから、たまに私が行くと代理の方ですか?なんて言われるんだよ。ははは、笑えるだろう。うむ、君の言いたいことはわかる。私が責任を放棄しているのではと思うのだろう。しかし私にもやるべきことがあってね、だから彼女を怒らせて助けてもらえなくなると困るから逆らうわけにはいかないのだよ。というわけだから未来の所長が戻るのを待っていてくれたまえ」


 そんなわけでテテツさんも勝手に進められないそうだ。

それにしてもやるべきことって、ほんとにいつも何やってるんだこの人。


 保留にはなったけど、とりあえず却下されなかったからよかった。

メイさんが戻るまでの間、干渉術の未熟な部分を完成させるべく僕はその研究者とこっそり研究を進めることにした。

僕にできることは召喚物実験で得たデータの提供とその中で得た知見。


 関係者の中では僕の召喚術に対する適性が高いことは有名で、そのおかげで協力を申し出るとあっさり受け入れてくれた。

他にも興味を持った学者と連携して術式を構築していった。

だけど研究が進み、その学者の拘束時間が長くなってくると彼は報酬をよこせと言いだしてきた。

普通なら断るけど費用は僕が自腹で払うことにした。

これで研究が進むなら安い買い物さ。

きっと学者もその辺わかってて言ってきたんだろうけど、構うもんか。

後はメイさんを何とか説得するだけでいい。

するだけなんだけど、許可してくれなかったらどうやって説得しよう。


 メイさんが許可してくれない点として考えられるのは、この干渉術も他の召喚術の例にもれず、稼働時のエネルギーが膨大なのだ。

干渉術の起動にはいつもの召喚と同様にまずゲートを開く。

次に干渉術用に構築した魔法を対象世界で発現させればいいという。


 術式の構成は複雑でよくわからないけど、召喚術を組み込んだ術だから、他の研究施設で実験する時には適性の高い僕が魔法を行使することになった。

実験では危険性も定かではない非公認の術をどんどん試すことになったから、なかば実験対象扱い。

何度か魔法の暴発が起きかけた危ない瞬間くぐり抜け頑張った。


 逃げ出したくなることたびたびあった。

けど、目的の為に危険を顧みることはなかった。

なによりちょっと危険だからといって逃げ出すほどやわではない。

メイ様に日頃鍛えられている僕ら召喚物研究所員はたくましいのだ。

次回、イカ追いクエスト5

「せすじが凍るその瞬間」 - 2

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