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マイナス100の好感度が上昇する話。  作者: ななどり&えれしーぷ
5/5

違和感

「はい、これ。」

 渋々、俺は小桜(こざくら)に抹茶わらび餅のカップを差し出した。

 小桜はそれに対し、驚いたかのような顔をしていた。

 でも、この後どうせいつも通りあーだこーだ言ってくるんだろうな。俺が小桜にあげるか迷っていたのは、単純に自分も食べたいのもあるけど、なにより俺の親切心に対し反発してくる小桜の姿が容易に想像できるからである。


 しかし、小桜が口にした言葉は、予想外のものだった。

「......ありがと......。」

 手をゆっくりとカップに伸ばす小桜。

 嘘だろ......? あの小桜が素直に感謝してくるとは.......。


 すると小桜は伸ばしかけた手を止め、口を開いて何かを言いかけていた。

「でも......!」

 その顔はいつのまにか驚いた表情からいつもの睨むかのような、鋭い目つきへと変わっていた。

 やっぱり何か言われるじゃんこれ。

 しかし、小桜が続けた言葉は、またもや予想外のものだった。


「全部もらうのも悪いし......。半分ずつ食べましょ......。」

 そう提案をする小桜は、いつの間にか気恥ずかしそうな、少し照れた表情を浮かべていた。

 予想外の出来事に少し驚きながらも俺は小桜にカップを預けてレジに戻り、店員さんに声をかける。

「すみません、爪楊枝をもう1本ください。」

「かしこまりました!」

 店員さんは笑顔で返事をし、俺は店員さんから爪楊枝をもう1本受け取って小桜の方へ戻った。

「食べようか。」

「うん。」


 俺たちは1つのカップの抹茶わらび餅を分け合って、それぞれ口に運んだ。

 食べ進めながらふと横を見ると、小桜が幸せそうな顔で抹茶わらび餅を頬張っていた。その姿を見て、俺は分け合って良かったと思った。



 食べ終えた時刻は14時50分で、集合時間は15時。あと10分しかない。

 俺たちは、浅草の町を走っていた。

 (※人が多くて危ないので走るのはやめましょう。)


 走りながら、ふと山本(やまもと)がこんなことを聞いてきた。

「なぁ笹原(ささはら)、今日行った中でどこが一番良かった?」

「絶対今じゃないってそれ!」

 山本はバスケ部だから体力に自信があるのだろうか。でも今聞くことじゃない!


 14時57分、なんとかギリギリに集合場所である公園に集合した。

 

 15時になり、担任の畑中(はたなか)先生の話が始まった。

「今回の校外学習を通して、友達との親睦(しんぼく)は深まったか?」


 親睦か......。先生の一言に、俺は今日のことを振り返った。

 ......今日の小桜、いつもよりマシだった気がする。もちろんいつも通りといえばそうだけど、若干素直な一面もあった。

 今後、俺と小桜はもっとマシな関係になれるのだろうか。


「じゃあ気を付けて帰るように。解散!」

 先生の話が終わり、現地解散となった。

 

「じゃあ笹原くん、優斗(ゆうと)、また学校でね。」

 青木(あおき)さんは小桜と二人で帰るみたいで、2人で手を振っていた。

「またね。」

「またなー。」

 俺と山本も返事をして、別れようとした瞬間のことだった。


「あ、ありがとう......」

 小桜が俺の方を見て、少し恥ずかしそうに言ってきた。

 俺は少し驚きながらも顔を合わせ微笑んで、それぞれの帰り道を歩き出した。


 山本と2人になり、駅のホームで電車を待ちながら今日のことを話しながら歩いていた。


「それにしても笹原、抹茶わらび餅のお店で小桜さんと話してるとき、珍しく揉めてなかったよな。」

「そうだよね。俺も少し驚いたよ。」

「解散のときとかわざわざ感謝まで伝えてたよな。」

「うん。びっくりした。」

「このままいつもの言い合いがなくなると良いな。」

「そうだね......。」


『まもなく2番線に、電車がまいります。黄色い線の内側に下がってお待ちください。』


「電車来たな。」

「乗ろうか。」

 電車が到着し、俺たちは乗り込んだ。



 次の日になり、いつも通りの学校生活が再び始まろうとしている。

 俺はふと昨日の出来事を思い出す。

「......昨日の小桜、やっぱり普段と違ったな......。抹茶わらび餅のお店のあの一件以降、いがみ合うこともなかったし......。今後は言い争うこともなくなるのだろうか。」

 俺は期待を膨らませながら、学校に向かって朝日の当たる住宅街を歩いた。

 

 ホームルームが始まる15分前である8時半に俺は教室の前に着いた。

 教室の扉を開けると、すでにクラスの7割程が登校していた。その中にはいつもの3人がいて、机の周りで話していた。

「おはよう。笹原ー。」

山本が俺を見つけて手を振る。

「おはよう、山本。青木さんもおはよう。」

「おはよ。笹原くん。」

 俺は3人に近づき挨拶をした。3人ということは、もちろん小桜もいる。

 昨日の感じなら、小桜との関係もきっとマシになっていると思う。


「小桜もおはよう。」

 俺は珍しく小桜に挨拶をした。

 しかし小桜はいつもの目つきで俺を鋭く睨む。その姿は、昨日の出来事がすべてなかったかのようなものだった。なんでだよ。

 予想外の出来事に少し困惑していると、青木さんが俺の耳元に近づいてきてヒソヒソと話し始めた。

(さき)は昨日の抹茶わらび餅の件で、素直になりすぎたって後悔してるみたい。」

 まじか。なんでだよ。

 

 ......少しはマシな関係になると思ったんだけどな......。まだまだ先は長いらしい。

 どうやら俺は、小桜と多少なりとも仲良くなりたいらしい。




現在の好感度

・小桜→笹原 マイナス95

・笹原→小桜 マイナス90

改めて、キャラクターについてです。


主人公 : 笹原ささはら) はやて)

ヒロイン : 小桜こざくら さき

友達その1 : 山本やまもと 優斗ゆうと

友達その2 : 青木 ちひろ(あおき ちひろ)

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