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マイナス100の好感度が上昇する話。  作者: ななどり&えれしーぷ
2/5

変わらぬ現実の地獄

「どうしてよりにもよってあんたが……。」


 不満っぽい小桜。不満っぽいというか、絶対不満に思ってるよな……。



 というのも遡ること1時間前、クラス内で席替えが行われた。日頃から俺のことを不満に思っている小桜の席は、元々俺の席の斜め前だった。


『やっとあんたと離れられる!』

 そんなことを言う小桜。これを聞いた俺は少し嫌な予感がしていたが、その嫌な予感は見事的中した。


 席替え後、俺と小桜の席は隣同士となった。

 そしてこの状況である。


「どうして何人もクラスの人がいるのに、隣があんたになるわけ?」

「知らないよ! でも言ってても仕方がないし、切り替えないか? 運が良かったってことで……。」

「なるわけないでしょ!!!」

「それはちょっと傷つく! もう慣れたけど!」


 やっぱり俺、小桜になんでこんな嫌われてるんだろう?せっかく人が良い提案をしてあげてるのにさ。……良い提案……なはず……。

 高校に入学してから、ことあるごとに小桜とよく揉めている。当たり前になってしまっていること現状はクラスメイトにもよく知られていて、歪み合いをしている際にはヒソヒソと俺たちを噂する声がよく聞こえる。

 はっきり言って小桜と俺の相性は最悪だ。味噌汁とショートケーキを一緒に食べるかのような、確実に相性が悪い2人だと思う。


 席替えは朝のホームルーム中に行われた。しかしそれはつまり、その日の一限目から新しい席ということになる。


 今日の一限目の授業は数学だった。

 休み時間の時とは違い静まり返った教室は、先生の声とチョークが黒板に当たる音が響いていた。

授業中、俺はふと隣、すなわち小桜の方を見た。 静かな教室で、まっすぐ前を向き真剣に授業を受けている小桜の横顔が俺の視界に映った。

 『……黙ってれば普通の女子だな……。』

 そんなことを考えていると、小桜は視線を感じたのか、俺の方へ振り向く。

 振り向いた直後こそは表情は普通だったが、すぐに俺に向けて鋭く睨み始めた。


「じゃあこの問題をー……じゃあ小桜!答えてくれー。」

 俺と目が合っていた小桜は数秒間授業を聞いていなかったが、そのタイミングでまさかの先生からの指名が。

 先生から名前が呼ばれた瞬間、小桜はビクッとして先生の方へ顔を向けた。


 しかし鋭い目つきで俺のことを睨んでいた小桜。

「えっと……その……。」

 当然先生の話なんて聞いておらず、明らかに焦っていた。

 そんなとき、俺はふと脳裏にとある天才的な発想が浮かんだ。


 幸い俺はこの問題の答えがわかる。ここで助ければ、小桜に借りを作れるのではないか。そうすれば俺のことを睨みにくくなるのではないだろうか。


 そう考えた俺はすぐさまノートの端っこの方を破り、答えを書き四つ折りにして小桜の机へと投げた。

 小桜はそれに気づくとすぐに紙を開き、小桜は答えた。 

 「えっと……答えは4です。」

 「正解だ。流石だな。」

 小桜は先生に褒められていた。自分の考えた答えではないのに。

 小桜は席に座り、こちらへ顔を向けてきた。

 俺は小桜のピンチを救ったのだ。感謝されて当然だと思う。


 しかし小桜の表情はドヤ顔だった。

 そして「これくらい簡単だわ。」と言わんばかりの表情になった。なんだこいつ。


 俺が紙を投げたことは小桜自身も明らかにわかってるはずなのに、先生に褒められたことを俺に自慢してきた。

 まぁ俺に異常なまでに当たりが強いあの小桜が俺に対し素直に感謝なんてするわけないよな。


 その後も、1日中睨み合いが行われた。

 そして帰りのホームルームにて、先生がこんなことを言った。

「来月行く校外学習の行き先決まったぞー。浅草だー。」

 それを聞くとクラスは大盛り上がり。周りからは「おおー!」「いいね」などという声がたくさん聞こえる。

 浅草か……。悪くはないな……。


「で、行動するグループについてだが……。新しい席で仲良くなるために近くの席4人で1グループだ。」


 え???

 俺たちのクラスの席は6×6の36人で、近くの席で4人だと縦2列ごとに隣の人とは必ず同じグループになる。

 隣の人……。俺は静かに小桜の方を見る。

 やはり小桜は、睨んでいた。今回は悔しそうな雰囲気も入り混じっていた。

「なんでせっかくの校外学習があんたなんかと……。」

「それはお互い様だよ……。」

「なんでそんなこと言うの!?」

「そっちから言ったんでしょ!!」

 俺と小桜がそんな言い合いをしていると……。


「またやってるよ……。」

「近くの席4人で1グループって言われた瞬間ふと小桜さんたちの方見たけど、案の定だったね……。」

 クラスメイトの、俺たちに対するいつもの少し茶化すようなヒソヒソ話。聞こえるんだけどね。


 すると俺たちの1つ前の席の2人がこちらへ向いてきた。

「よろしくね。」

「よろしくなー。」

小桜の前の席の女子、青木(あおき) ちひろさんと俺の前の席の男子、山本(やまもと) 優斗(ゆうと)くんだった。


「ちひろ〜!ありえなくない〜?」

「まぁまぁ。落ち着こ〜?」

 小桜は青木さんに頼った。この2人は元々仲が良く、クラス内でもよく一緒に話していた。 


「大変だな……。」

「わかってくれるんだ……!」

 俺の気持ちを山本くんはわかってくれるんだ……! 山本くんは青木さんと幼馴染で、クラスでも結構な頻度で2人仲良く話している印象だった。


 今回の校外学習は、この4人で1グループとなる。が、不安だ。



現在の好感度

・小桜→笹原 マイナス100

・笹原→小桜 マイナス100

笹原や小桜たちクラスは計36名。

縦と横それぞれ6列である。


笹原は右端の1番後ろの席。

小桜はその右の席である。


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