気になってしまって
あれ以降も、相変わらずユーキリアス様は殿下方の周りをウロチョロしている(殿下方いわく)そうです。
彼女の挙動がどんなに珍妙でも、わたくしは学園に通う高位貴族の勤めとして、王族の方のつ、妻となる身のものとして、ユーキリアス様に少しだけでも何とか淑女として、貴族として相応しい姿で卒業して欲しいと思っているのですが…。ユーキリアス嬢はわたくし達婚約者の姿を見ると素早く姿を消してしまうか、サーキュリー様に回収されて行ってしまうのです。
不可思議な彼女ですが、初めてお会いしていた時におっしゃっていた様に、勉学も魔法も、剣術さえ学年上位者なのです。淑女としてのマナーや立ち振舞い、それ以前の常識を学び覚えるのは造作ない事だと、思うのですが…
そもそもユーキリアス様は殿下方に対して恋情がある様には見えないのです。
それでしたら何の為に?殿下方を油断させる為?他国の密偵?いえ、ユーキリアス男爵家も彼女の市井にいた頃も調べましたが何も出ませんでした。
「カトリーヌ、どうした?」
いけない、今は殿下とのお茶の時間でした。
「すみません殿下。もう少しで学園を卒業かと思いますと「カトリーヌ?」!!」
「…ごめんなさい。ユーキリアス様の事が気になってしまって…。」
「それは妬けるね。」
「殿下」
「2人の時は名を、だろ?」
「デュ、デューク様」
殿下が2人きりでいる時はいつも惜しみなく気持ちを伝えてくれるので、わたくしはとても幸せで安心して殿下の隣りにいる事が出来ます。
幼い頃に殿下との婚約が決まり、わたくしは殿下の事が大好きなのに緊張と、殿下に相応しい素晴らしい王子妃にならなくてはと必死になるばかりできちんと殿下の事が見れてなかったのです。そんなわたくしに殿下が言ってくださいました。
「カトリーヌ、僕を見て。王太子としてだけではないデュークも見て。僕はまだ出来ない事もあるし足りないものもある。だからカトリーヌが見てる王子は僕じゃないと思う。そんな僕は嫌い?一生懸命に努力するカトリーヌも、好きなお菓子を食べれば笑顔になるし食べすぎて叱られてしゅんとする。僕はそんなカトリーヌも大好きだよ。一緒に手を繋いでがんばろう?」っと手を出されました。その時見た殿下の切ない瞳は言葉と共にわたくしの心にいつまでも残りまし。