ロマンも性差もありません
殿方の婚約者同士が懇意にしていた為、自然とわたくし達も関わる機会が多く、皆様素敵な方々でしたので学園でも共にいる事が自然になっておりました。本日は皆様の予定を合わせ、高位貴族のみ使用可能なサロンでお茶会をしておりました。勿論高位貴族の開くお茶会に伯爵以下の方達、将来の職の為に必要な方だと判断致しましたら平民の方もご招待させていただいております。簡単に言いますと、わたくし達も含め皆様が貴族社会を、お作法や交流、繋がり、などをお勉強出来るようにとの学園のご配慮で作られたサロンなのです。
お茶会を終え皆様とお別れしたわたくし達は、殿下達にお会いする為に向かっている途中で、目を疑う様な場に遭遇致しました。
「キャー!足が滑ったぁー」
何という事でしょう…ユーキリアス様が両手を広げて階段から滑った…?いえ、とにかく殿下方目掛けて落ちて行くではありませんか。
グラッセン様が受け止められました。流石期待の騎士様です。わたくし達もホッとしたのですが…アリア様の手に持たれた扇子がギシギシいっております。ユーキリアス様はグラッセン様に抱きついているからです。アリア様お気持ちは分かりますが、よく見て下さい。ロマンどころか男女の性差さえ感じられないご様子…そうですよね、ベタベタ触られた事が許せないのですね。
「カトリーヌ!」
「アリア…」
「ロッティ!」
あら、皆様がわたくし達に気がついたようですわ。アリア様、お手柔らかにお願いしますね。
「ハリス様、女性1人振り剥がせないとは鍛錬が不足しているのではないですか?鍛え直さなくてはなりませんねぇ。」
アリア様がにこやかにグラッセン様におっしゃいます。
アリア様は完璧な淑女であり、侯爵令嬢であり、凄腕の騎士様でもあります。体力の差で僅かにグラッセン様の方がお強いと言われていますが速さではアリア様が断然優っています。
「殿下、アリア様。婚約者の不甲斐ない姿をお見せし申し訳ございませんでした。火急に改善したく、わたくしとグラッセンが離席することをお許し下さい。」
「構わない。」
「お気になさらないで。」
「はっ、ありがとうございます。
ハリス様、行きますわよ」
「あ、あぁ。殿下、カトリーヌ嬢、失礼します!」
わたくし達に騎士の礼をしてアリア様は足早に鍛錬場の方へ行かれます。グラッセン様も慌てて礼をしアリア様を追いかけて行かれました。「アリア!すまない!アリア?返事してくれ!アリア~…」グラッセン様の情けない声が聞こえて来ます。お二人のおかげで皆が苦笑し、この場の雰囲気がほんの少しだけ柔らかくなりました。