アクヤって何かしら?
学園に入学して1年が経ちました。殿下もわたくしも16歳になり、成人、大人として認められる年になりました。わたくし達は お互いを励まし合い、学園入学前に厳しい王太子の教育、王太子妃教育を終えていました。その為学園にいる間は最低限の公務、執務で済んでいましたが、殿下が成人を迎えると公務の量が増え王宮で頑張られ、学園をお休みされる事が増えました。
「キャァァァー!いった~い!ぐすん。もうまた転んじゃったぁ~ぐすん。って、あ、あれ?」
「……。」
はじめましての少女、いえ、彼女もわたくし達と同じ年、名乗りを許していませんから、今まで見なかったフリをして少女ですませていましたが、流石に成人を迎えた女性に少女はいけません。
わたくしの目の前で、頭から滑り込んでクルンクルンと前転?をし、鼻の頭に擦り傷をつくったキャサリン・ユーキリアス男爵令嬢が、チラリとわたくしの方をみてガッカリしたご様子です。殿下もいらっしゃると思われてたのでしょうか。
「ユーキリアス様、大丈夫でしょうか?」
「えっ⁈」
いつもなら、何も言わずに通り過ぎて行くわたくしが話しかけたので驚いたのでしょうが、そのお返事はいただけませんわね。
「あぁ、すみません!まさか悪や、ち、ちが、あの、どうも、すみませんでしたぁ~!!」
「え、ちょっとお待ちに、あぁ、廊下を走られては…、行ってしまわれましたわ」
ユーキリアス様は、真っ青なお顔で全速力で逃げて行きました。
「……。アクヤって何かしら?」
「うん。何だろうね?」
「……殿下、今日は王宮では?」
「少し時間が空いてね。君の顔を見たくなった。」
「さ、左様でございますか。」
「うん。でもごめんな、お茶をする時間はないから、せめて送らせて?君の所の馬車は先に帰って貰ったから。」
「フフッ、ありがとうございます。是非」