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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

名は体を表す高速魔王討伐物語

作者: まっしゅ@

 初の短編です。

 思い付きと勢いで書きました。

 反省と後悔は少ししてる。

 ここはホウビヤラン王国。


 この国の国王であるヒトマカセ=ケチンボーは謁見の間に四人の少年少女を呼び出していた。


「面を上げよ」

「「「「はっ!」」」」


 その場に並んでいる四人はヒトマカセ王の言葉で顔を上げる。


「貴殿達には魔王討伐に向かう事を命じる」

「陛下、直言をお許しいただけますか?」

「構わん」


 声を上げたのはこの四人のリーダーである赤髪の少年。

 王国より勇者と定められた彼の名はドウキワ=カネノタメ。 

 彼は貧乏な家庭で生まれ中々に酷い幼少期を過ごしたが、今回勇者に選ばれた事でその生活は良くなりつつあった。


「魔王を討伐した際の褒美はどれ程頂けますでしょうか?」


 そんな環境で育った彼はやる事為す事の全てが金を得る為である。


「そうだの……。魔王討伐の暁には金貨一万枚でどうだ?」


 金貨一万枚……それはこの国において四人家族が一生遊んで暮らせるだった。


「一万枚ですか……。命を掛けても向かうにも関わらず一万枚…………」


 しかしドウキワは難色を示した。

 本来ならば充分過ぎる報酬なのだが、王国を……はたまた世界を救う大偉業を果たした末がそれならば割に合わないと感じている。


 ヒトマカセ王はそんな彼の心中を察したのか更に条件を付け加えた。


「ならば報酬とは別に、旅の道中の費用は全て王国側が持つ。それに加えて、魔王軍の者を討伐した際には一体に付き別途金貨千枚を支払おう」

「はっ!魔王討伐の命、この身を賭して完遂してみせます!」


 読んで字の如く、何とも現金な勇者である。

 見事に買収されてしまった。


「では、直ちに魔王討伐に出発しろ。馬車は王都の外に用意してある」

「はっ!では、行って参ります」


 四人はもう一度ヒトマカセ王に頭を下げ、謁見の間から出ていった。


 四人の姿が見えなくなった頃、ヒトマカセの隣にいた宰相マワリニ=フリマワサレルがこっそり声を掛ける。


「良いのですか?あの様な大金、とてもではありませんが……」

「構わん。魔王討伐後であればいくら勇者とその仲間とは言え、相当に弱っている筈。そこを秘密裏に処分してしまえば魔王討伐は出来た上に一銭も払わんで済む。いやぁ、余って天才か!?」

「…………」


 ヒトマカセ王のケチな性格に心底呆れた様な表情を見せるマワリニ。

 だがそんな事は全く気付かず、彼は高笑いを上げるのだった…………。




 王都を出て、馬車に乗り込んだ勇者一行は魔王が居ると言われている切り立った山々が連なる天然の要塞マオウジョーへと向かっていた。


「全く、いきなりあんな事を言うなんてヒヤヒヤしたじゃない」

「何でだ?だって皆金は欲しいだろ?」


 謁見の間での勇者の言動に苦言を呈すのは、数々の大規模魔法を扱える賢者で、大きな魔女っ子帽子を被った少女。

 名はヒンヌー=ツンデレー。


「そりゃそうだけどさ!それよりもあんたと一緒にいられる方が……………ゴニョゴニョ」

「え?何て?」

「何でも無いわよ!この馬鹿ぁ!」


 幼馴染である彼等はいつもこの調子。

 ヒンヌーはずっと片思いしているが、鈍感で金にしか興味の無いドウキワは気付いていない。


「相変わらず仲が良いなぁ、お前達」


 御者をしている金髪を短く刈り込んだ大柄な少年の名はソコヌケニ=オヒトヨシ、剣聖と呼ばれる剣の達人だ。

 先の二人と比べて二回り程縦も横も大きいが彼等は同い年である。  


「べ、別に仲良くなんかっ!」

「俺とヒンヌーはずっと仲良しだぞ?」


 同時に全く逆の事を言う二人に苦笑しながら視線を前方に戻すソコヌケニ。


 今度は馬車内にいたもう一人の少女が二人を嗜める。


「これから魔王の本拠地へと向かうんですよ?遠足気分じゃ足元を掬われますからね。頭に栄養足りてます?」

「足りてるし!それにそんな事あんたに言われなくても分かってるわよ!」


 丁寧な口調で話す彼女は聖女と呼ばれ、死人すら生き返らせると言われている。

 名はハラグロ=ボイン。


「そうですよね。そうでないとそんな貧相な……失礼、身軽にはなれませんものね」

「はぁ!?あんたこそ!その駄肉に栄養吸われて頭、足りてないんじやないの!?」


 圧倒的平原と圧倒的山脈。

 この二人はこの二人でいつものこの調子だ。


 そんな四人は道中で様々な街や村へ寄り、ソコヌケニの正義感とドウキワの金目的によって様々な事件や魔物の討伐をこなしながらも、たった一ヶ月という短い期間で魔王城に到着した。


 尚、後の話によれば勇者一行が戦う姿はあまりにも圧倒的過ぎて、戦いでは無く蹂躙と呼ばれる程。

 そんな彼等に付いた二つ名は勇者一行改め、チートパーティだった。




 魔王城に到着した彼等を待ち受けていたのは予想外にも敵の幹部の一人だった。


『よく来たな。とでも言っておこうか、勇者共。我は魔王軍筆頭幹部、四天王の一人セツメイダケシテ=シュンサーツだ』


「まさか最初から幹部と戦う事になるとはね……」


 頬に一筋の汗をかきながら杖を構えるヒンヌー。


「こいつが金貨千枚……こいつが金貨千枚……こいつが金貨千枚……」


 既に相手を金としか認識していないドウキワ。


「あらあら、魔王軍と呼ぶからどんな化物かと思えば意外と良い男じゃないですか」


 相手の肉体美を見て舌舐めずりをするハラグロ。


「その前に聞きたい事がある!良ければ教えてくれないか!」


 唯一まともな事を言っているソコヌケニ。


『良いだろう、冥土の土産に何でも教えてやろう』


 ソコヌケニの問いに全て丁寧に答えていくセツメイダケシテ。


 聞きたい事が終わり、互いが臨戦態勢に入る。


『聞きたい事はそれで終いか?では、そろそろ始めようとしよう。魔王軍筆頭幹部セツメイダケシテ=シュンサーツ!参る!』


 そう名乗ってセツメイダケシテが駆け出した瞬間―――


「一刀両断剣!」

「爆裂魔法カイジン・ト・カセ!」

「聖魔法オブツ・ヲ・ショウドク!」

「金エエエエエエェェェェェェェ!!!」


 各々が必殺の一撃を、名前(ドウキワは欲望を)を叫んで放った。


『ば、馬鹿なっ!矮小な人間共に我が―――ぬわぁぁぁぁぁ!!!』


 四人の力を合わせた一撃の下、魔王幹部を討ち倒した。

 セツメイダケシテがいた場所には彼の物であろう鉢金が落ちていた。

 ドウキワは幹部を倒した証明としてそれを拾い上げ懐に仕舞う。


「さぁ!次の金貨千枚を探しに行くぞ!」

「魔王幹部でしょう!?」


 金に目が眩んでいるドウキワを戦闘に四人は魔王城に突入する。




 勇者一行は何の苦戦もせず魔王城を隈無く漁る。


「ねぇ、ドウキワ。明らかに強そうな奴の気配が此処とは違う場所からするわよ……」

「ヒンヌー。ただ幹部と魔王を倒すだけでは駄目だ」

「おぉ!流石は勇者だ!」

「何処に金目の物があるか分からないだろ!見逃すなんて勿体無い事出来るかっ!」

「やっぱりドウキワ様はドウキワ様ですね……」


 勇者と言えどドウキワはドウキワ。

 中身は変わらない。


「どっちにしたって魔王を倒す迄はどうしようも無いでしょ!さっさと行くわよ!ソコヌケニ、お願い」

「分かった。行くぞ、ドウキワ」

「待て!まだ漁ってないタンスが―――。おい、引っ張るな!待って、待ってくれ!もう終わるからぁぁぁぁぁ!!!」

「もう……本当に緊張感が無いんですから……」


 ドスドスと音がなってあるかの様に先頭を歩くヒンヌー。

 首根っこを掴まれて引き摺られていくドウキワと引っ張っているソコヌケニ。

 3人の背中を見て溜息を吐いて、胸を揺らしながら付いていくハラグロ。

 他者から見ればハラグロが一番の常識人に見えるのも仕方無いのかもしれない。





 魔王城の最上階にそれはあった。

 他と比べ物にならない程大きな扉。

 その前に勇者一行は立っている。


「ここね……」

「あぁ、鈍い俺でも分かるぞ。嫌な気配がする」

「ゴクリ…………」

「あら?珍しく緊張しているんですか?」

「この奥に金貨1万枚と3千枚達がいるのか…………」

「魔王とその幹部を金貨の枚数で呼ぶのはどうかと思われますが…………」


 相変わらず平常運転のドウキワにツッコむハラグロ。

 対してヒンヌーとソコヌケニは緊張した面持ちをしている。


「何はともあれ、この奥に進むしか道は無い。…………行くぞ」


 そう言って扉に手を掛けるソコヌケニ。

 此処もまた他者がいれば「そこは勇者の役目じゃない?」と言われるのは明白だが、残念ながら4人以外はいない。


 重厚な扉はすんなりと開く。

 そこは一際大きな、まるでダンスホールの様な、そんな部屋だった。


 その大きな部屋の真ん中に佇む1人の少女。


 現代で言うゴスロリ風のドレスに身を包む彼女は4人が入ってきたのを確認して見事なカテーシーをする。


『ようこそいらっしゃいました。わたくしは魔王軍幹部が1人。名を「金貨1000枚ぃぃぃぃぃぃぃ!!」きゃあああああああ!!』


 名乗りを上げようとした少女、ナノラセテ=モラエナイを欲望のまま横一線して見事討伐したドウキワ。

 これで残る幹部は後2人。


「いやいや……。あんた、さっきの娘が人質だったらどうするの?」

「そ、そうか!人質だったとしたら救出すれば更に報酬が増える可能性が…………」

「そうじゃないでしょ!あんたは本当にっ!」


 こうして、魔王幹部をまた1人討伐した勇者一行。


 ちゃっかり彼女の残した頭のリボンを回収するドウキワ。


 彼等の高速討伐は更に加速する。


 ダンスホールを抜け、ソコヌケニが次なる扉に手を掛けようとしたその時―――


「嫌な気配がします!聖魔法ミンナ・ヲ・マモーレ!」


 ソコヌケニを押し退け、結界魔法を使いながら前に躍り出るハラグロ。


 直後、結界に紅蓮の炎が直撃し爆散した。


「そっちがその気ならこっちだって!氷壊魔法コオッテ・クダケロ!」


 まだ残る炎の熱を掻き消すような極寒冷気がヒンヌーの杖の先かから放たれた。


 彼女のソレは、まだ姿形が見えない炎を生み出した張本人にぶつかり、凍らせ、そのまま砕け散る。


「ああぁぁぁぁぁ!!討伐証明出来ないじゃん!」

「1人くらい良いでしょ!」

「金が!減る!」

「私の分少し分けるわよ!」

「あ、なら良いです」

「貴方達…………」


 こうして姿すら知らぬまま3人目の幹部を倒したのだった。


「次は…………最後の扉か?」

「そうみたいですね。中から邪悪な気配が漂ってきています」

「金を1人見逃した!?」

「だから、敵を金って言うの辞めなさいよ」

「多分ですが、最後の一人は魔王の側近でしょう」

「じゃあ2人共中にいるんだな!行くぞ!」


 最後の大扉を開け放ったソコヌケニ。


 そこは謁見の間になっており、その最奥の数段高い位置にある玉座に豪華な衣装に身を包む1人の男が、横には控える様に1人の執事服に身を包んだ老紳士が佇んでいた。


「よく来たな、勇者共。我こそは魔王カゲムーシャ!この世界を手中に収める存在なり!」


 声高らかにそう宣言するカゲムーシャ。


 彼から放たれる威圧感は…………そうでも無い。


「あれが……魔王……?」

「何か他の幹部達より弱そうですね?」

「あんなの雑魚よ、雑魚」

「安そうだな、あいつ」


 好き放題言っている勇者一行。


 それが聞こえたのか、カゲムーシャは肩を震わせている。


「貴様ら!好きに言わせておけば!殺れ!シン・ノ・マオウ!」

「承知致しました」


 カゲムーシャに一礼したシン・ノ・マオウの姿が消えた。


「仲間はやらせんぞ!」


 他の勇者一行を守る様に前へと躍り出たソコヌケニは愛剣を構え、敵の姿を探す。


「そこかっ!全力薙払い!」


 気配を感じた場所目掛けてソコヌケニ渾身の剣技が炸裂するが―――


「遅いですね」

「ぐはぁ…………」

「先ずは1人」


 軽々と躱したシン・ノ・マオウは技を放った隙を狙い、ソコヌケニの鳩尾に掌底を叩き込んだ。


 口から大量の血を吐いたソコヌケニは吹き飛ぶ事も無く、その場に、前のめりに倒れ込む。


 彼の着ている鎧は生半可な攻撃で傷付く事は無い逸品だ。


 それが砕けてはいないものの、シン・ノ・マオウの一撃で大きく凹んでおり、攻撃の威力を物語っていた。


「よくもソコヌケニを!喰らいなさい!聖魔法オブツ・ヲ・ショウドク!」


 仲間をやられた怒りをぶつけるかの様にハラグロから放たれた魔法の光。


 光が収まると、そこには傷どころか汚れ一つ無いシン・ノ・マオウがつまらなさそうな顔をして立っていた。


「勇者一行と聞いて少々期待していましたが、この程度ですか」


「油断してるんじゃないわよ!獄炎魔法アトカタナク・モエツキロ!」


 その場を動く気配の無いシン・ノ・マオウに対して、ヒンヌーは地獄から生み出された炎を顕現させた。


「やったわ!」


 炎に包まれた相手をみて勝利を確信した彼女だったが―――


「油断など一切しておりませんよ。これは余裕と言うのです」

「なっ―――」


 自分の背後から聞こえた敵の声に振り向うとするが遅かった。


 首に打ち込まれた手刀で意識を一瞬で刈り取られてしまう。


「お前……ヒンヌーの魔法で焼かれた筈じゃ……」


 皆から一歩引いて魔王を斬るタイミングを見計らっていたドウキワ。


 そんな状態にも関わらず、今目の前で何が起こったかを理解出来ていなかった。


 ヒンヌーの魔法が直撃したのは玉座に座っていた筈のカゲムーシャだった。


 炎に包まれるあの一瞬でカゲムーシャとシン・ノ・マオウは入れ替わり、更に彼はヒンヌーの背後に回り込んでいたのだ。


 何故態々カゲムーシャを囮にしたのかは本人以外知る由も無い。


「これで魔王軍は私1人、貴方達は残り2人。さぁ、どちらから来ますか?貴女?それとも貴方ですか?勿論、2人同時でも構いませんよ?」


 余裕の笑みを浮かべ佇むシン・ノ・マオウ。


 彼から溢れ出す圧倒的な強者の雰囲気と気配にドウキワは一歩も動けずにいた。


「勇者様!2人はまだ息があります!それに、私であれば誰が死んでも直ぐに生き返らせる事が可能です!」


 竦んでいるドウキワを奮い立たせる様に言葉を掛けるハラグロ。


 その実、自分さえ生き残ればどうにでもなるから特攻しろと言っている様なものだ。


 正に腹黒である。


「そうだったな。よし!あいつは金、あいつは金、あいつは金…………。金、金、金、金、金…………。カネカネカネカネカネカネカネカネカネ…………。カネェェェェェェェェ!!!」


 金欲しさに恐怖を払拭しまドウキワは今まで幹部達を葬った時よりも更に速く敵へと接近し、勢いそのまま剣を振り抜いた。


 流石のシン・ノ・マオウもその圧倒的な速度と圧に思わず飛び退く。


 しかしドウキワの攻撃を完全に躱しきる事は叶わず、その頬には傷があった。


「くっ……存外にやりますね。では先にそちらの女から始末しましょう」

「金ぇ!!」


 シン・ノ・マオウの姿が消えるのと同時にドウキワの姿も消える。


「2人とも消えましたわ…………キャッ!?」


 2人を見失ったハラグロが呆然としていると突如目の前にシン・ノ・マオウが現れたかと思えば、間に割り込む様にドウキワも姿を表し、彼女に伸ばしていた腕を斬り飛ばした。


「お前は……俺の……金だぁぁぁ!!」

「貴様ぁぁぁ!!」

「私を守ってくれたと勘違いした私が馬鹿でしたわ」


 寸前のところで命を救ってくれたドウキワに一瞬でも感謝したハラグロは複雑な表情をしている。


 ドウキワは常に平常運転だ。


 しかし、シン・ノ・マオウに致命的な隙が出来たのは間違いない。


「それよりも今ですわ!」

「おう!金ぇ!」


 トドメの一撃を与えようと剣を振り下ろすドウキワ。


「舐めるなよ、人間風情がぁぁぁ!!」


 当たる寸前のところでシン・ノ・マオウは己の魔力を解放した。


 その威力は凄まじく、ドウキワもハラグロも、離れていた筈の倒れた2人も等しく壁に叩きつけられ、城中の壁に亀裂が入る。


 老執事の姿が一変、漆黒の体表に2本の大きな角、背中に三対六翼

 の蝙蝠の様な翼を持つ真の姿となったシン・ノ・マオウ。


「これが私の真の姿だ。人間共よ、恐怖するが良い」

「何か全身タイツみたいですわ」

「魔王が変態してヘンタイになった」

「貴様ら、好き勝手言い過ぎではないか?」


 勇者一行の物怖じしない物言いに思わず呆れてツッコミを入れるシン・ノ・マオウ。


「今だっ!」

「何っ!?」


 そんな緩んだ空気の中、衝撃で目を覚ましていたソコヌケニが背後から近付き、シン・ノ・マオウを羽交い締めにする。


「ソコヌケニ!起きていたのか!?」

「そんな事は良い!今がチャンスだ!俺ごと魔王を「分かった!金ぇぇぇぇぇ!!」

「躊躇なくいったぁぁぁぁぁ!?」


 自分諸共……と決死の覚悟を見せたソコヌケニを、何の躊躇いも無くシン・ノ・マオウごと斬るドウキワに思わずキャラ崩壊しながらツッコむハラグロ。


 この物語にシリアスは存在しないのである。


「グワァァァァァ!!」


 体を一刀両断されたシン・ノ・マオウは叫び声を上げながら霧のように消えていく。


「魔王を討ち取ったぞぉぉぉ!これで俺は億万長者…………いや兆万長者だぁぁぁ!」

「やりましたわっ!勇者様っ!」

「いや……そこは……俺の心配を…………ぐふっ…………」

「そうでした。はい、聖魔法イキカエール」


 体を真っ二つにされてまだ生きていたソコヌケニも異常だが、それを指の一振りで治癒するハラグロもまだ人外に差し掛かっているが、それを気にする者はこの場に誰もいない。


「よしっ!これで金貨一万枚とその他諸々で更に貰えるぞ!早く帰ろう!」

「そうだな。褒美はさておき、これで世界は平和になった」

「ふふふ……。これで名実共に歴史に残る聖女に……。後の人生バラ色ですわ…………」


 崩壊の一途を辿るマオウジョーから意気揚々と出ていく勇者一行。










「ちょっと、あんた達!?もしかしなくても私の事忘れてるでしょぉぉぉぉぉ!!」









 王都へ帰る道中正体不明の暗殺者集団に幾度も襲撃を受けたものの、ご褒美を貰えると張り切っていたドウキワによって返り討ちにされ、無事に誰一人欠けず(ヒンヌーも自力で追い付いた)勇者一行は王国への凱旋を果たした。


 その一報は直ぐ様世界中を駆け巡り、世界は湧きに湧いていた。




 その1週間後、勇者一行を祝うパレードが開催される。


「キャ〜!!勇者様〜!!」

「剣聖様カッコいい!」

「聖女様の神々しさに磨きが掛かっておられる…………」

「ねぇねぇママ〜!僕と同じくらいの子がいるよ〜?」

「しっ!そんな事言っちゃ駄目です!聞こえるわよ!」

「聞こえてるわよっ!?」


 王都中を練り歩く馬車の上から国民に手を振る勇者一行。


 そして、そのパレードは王城で終わりを迎える。




「世界を救った英雄達よ、面を上げよ」


 勇者一行は謁見の間にいた。


「勇者ドウキワ=カネノタメ、剣聖ソコヌケニ=オヒトヨシ、賢者ヒンヌー=ツンデレー、聖女ハラグロ=ボイン。其方等に褒美を授けようと思う」

「ありがとうございます!此方、討伐した者の報告書です!」

「……うむ。宰相受け取ってくれ」

「は、はいっ」


 ドウキワはこの1週間の間に魔王討伐の旅で討伐した敵を全て纏めていた。


 受け取った報告書に目をやったマワリニの顔がどんどん青褪めていく。


「へ、陛下…………」

「ふむ……。国を救った英雄達の褒美だ。これは余が自ら褒美へ出向き、直接この手で褒美を取らせねば国王の名折れというもの。暫しの間待っていてくれ」


 宰相から渡された報告書に目をやり、近くの兵を数人連れて謁見の間を出ていくヒトマカセだった。




 〜10分後〜


「やっぱり持って来るの大変なんだろうな」

「あの額じゃねぇ……何往復してるのかしら?」

「手伝いに行った方が良いのでは無いか?」

「これは……もしかすると、もしかするかもしれませんねぇ……」

(宰相として私も行くべきなのか?)




 〜30分後〜


「遅くないか?」

「あんたが吹っ掛け過ぎたのよ」

「やはり手伝いに―――」

「これはいよいよ……。方針を改めなければいけないですねぇ……」

(へ、陛下……早く戻ってきてくだされ…………)




 〜1時間後〜




「遅過ぎる!」

「流石はドウキワの言う通りね」

「もしや!陛下の身に何かが!?」

「ここはこうして……いや、こちらのプランの方が良いかもしれません…………」

(陛下…………もしや…………)


 突如、謁見の間の扉が激しく開かれた。


 1人の兵士が肩で息をしながら沈痛な面持ちで声を上げる。


「へ、陛下が…………」

「「「「「陛下が?」」」」」


 兵士は意を決したように叫ぶ。




「陛下が王都の外へ逃亡されました!!」




 兵士の一言に沈黙がこの場を支配する。


「「「「何だってぇぇぇ!?」」」」

((やっぱり…………))


 約2名を除き、全員が驚きの声を上げる。


 そこから大混乱だった。


 ヒトマカセを連れ戻す派と我こそが次の王に派で意見が対立し始める。


 そんな中勇者一行と宰相マワリニはと言うと…………




「あの嘘つき野郎!地の果てまで追い掛けて絶っっっ対に褒美を貰ってやるからな!行くぞ、皆!」


 ドウキワはヒトマカセを追い掛ける準備を始めた。


「ちょっとあんた、それよりも宝物庫に…………でも、その方がまた一緒に旅が出来るのよね……分かったわ!」


 ヒンヌーは敢えて解決策を伝えず、また一緒に旅することを選んだ。


「すまない!俺はこの国の為、混乱を治めなければならない!一緒には付いていけん!」


 ソコヌケニにはこの国の行く先を憂いて国に尽くす事を決めた。


「しょうがないですね。剣聖様1人では大変でしょうから私もこの国に残りましょう(そうすれば魔王討伐に加えて聖女としての名声もうなぎ登り。人生を謳歌出来るでしょうし)」


 ハラグロは自分の順風満帆な人生の為、ソコヌケニ共に国に残る事を決めた。






 無事に魔王の討伐を成した勇者一行は解散となった。


 今後、彼等が再び集まる事はもう無いかもしれない。


 それでも世界の歴史に名は刻まれた。




 守銭奴の勇者ドウキワ=カネノタメ


 お人好しの剣聖ソコヌケニ=オヒトヨシ


 貧乳の賢者ヒンヌー=ツンデレー


 腹黒の聖女ハラグロ=ボイン




 と。




 〜お終い〜

 もし酷似した作品があったら申し訳ありません。

 前書きに書いてある様に勢いと思い付きで書き上げたので、全く下調べをしていませんので、もしあれば教えていただけると幸いです。


 今後、何か新作を執筆する際は先ず短編を書いた後、その反響次第で長編を書くのも良いかなと考えていますが、予定は未定です。

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