【第16話】どうでも良いとされること
この物語はフィクションです。登場する人物、地名、団体名などは実在するものと関係ありません。
3月7日金曜日、受験した県立大の結果が出た。合格していた。嬉しかった。頑張れば国家資格持ちのカウンセラーになれるかもしれない。久しぶりに希望を感じた気がする。合格発表を確認した時、母親も近くで確認していた。そして、合格したことを確認した上でこう言われた。
「県立大行かんやろ?辞退の連絡は早くしとかな先方に迷惑かかるけん。」
そう言われて少し立ち向かうことにした。しかし、あまり効果はなかったようだ。そこで、今度行われる県立大の入学生説明会に参加してから考えることを提案してみた。すると、母親はしぶしぶ許可した。その日の夜は、県立大に通えないかもしれないと思い布団でめっちゃ泣いた。
3月9日日曜日、説明会の現地までバスと電車を乗り継いで現地に行くことになった。電車の乗り継ぎが2回くらいあった気がする。その後、ローカル線に乗って移動することになった。定期券はなく回数券を買う方が便利になるようだ。ローカル線に乗っている時に母親からこう言われた。
「家から通学するの大変やろ~?ここまでに3時間くらいかかっとるし。」
実家から通わせる予定やったんかい!思わず心の中でそうツッコんでしまった。因みに、下車する時に賃金の支払いに手間取ったため車掌さんに悪態をつかれた。
会場に少し早い時間に着いた。会場付近で少し待つことになったが、案外すぐに案内された。入学生はネームプレートを作って首から下げるよう指示された。
説明会が始まった。眠気で首が上下に動いてしまう。前夜に食器の片づけと洗濯物を畳んで、寝る時間が2時を過ぎ出発が6時前だったからだと感じていた。すると、隣に座っていた母親からこう言われた。
「ほら眠いんやろ?朝早く起きてここまで来るの疲れたんやろ。」
少し腹が立った。
壇上にいる人が話し終わり、新入生は食堂に誘導された。新入生はレクリエーションをし、保護者は大学の説明を聞くことになっていた。
場所が変わり、大学側が決めたグループ毎に分かれ大学生の先輩に施設を紹介してもらいながら大学に関するクイズに答えることになった。自分のグループは男女が半々ぐらいだった。探索の前に自己紹介をすることになった。他の人の自己紹介を聞いていると話しやすそうだなという印象を受けた。その印象の傍ら、夢とか目標とかの構想がみんなしっかりしているなと思い、自分の手ぶら加減に恥を感じた。道中の会話面白かった。人柄の良さも垣間見えた。非常に充実していたと思う。
レクリエーションも終わり、初めの教室に戻された。そして、説明会も終わり全員食堂に案内され、入り口から少し離れたところで昼食の引換券を渡された。無償で昼食を提供してもらって各自解散って感じだった。
再び電車やバスに乗り、家に帰りついた。そして、母親から色々言われた。
「やっぱりあそこに通うのはきついんじゃない?あれが毎日ってなったら授業中寝るやろ?絶対。それにあそこの地域は昔からガラの悪い人たちがおって治安が悪かったんよ。」
そう言われて、身に覚えのある感覚がした。それと同時に、これ以上行きたい理由とか熱意とか語っても意味がないことを悟った。だから、県立大の入学を辞退することにした。
それから数日程無気力に過ごしていた。3月14日金曜日、母親に連絡したのかと聞かれて、辞退の連絡をしなければいけないことを思い出した。
落ち着いた状態で話すために自分の布団の上から電話を掛けた。電話から男性の声が聞こえてきた。氏名と辞退する旨を伝えた。自分の口から辞退すると言う時、声が震え泣きそうになった。相手の淡々とした声は、めんどくさいなと感じているように聞こえた。気に留めてもらえることを心のどこかで期待していたのかもしれない。




