【第12話】確認大事
この物語はフィクションです。実在する人物、地名、団体などとは関係性を持ち合わせておりません。
声優大学の説明を聞いたり体験したりするために、以前オンラインで話を聞いたキャンパスに応募してみた。場所は東京だったが用事があるため都合がいいと思った。しかし、予定前日からの悪天候のため予定は瓦解した。チャットで行けなくなったこととキャンセルを書き込み送信した。
14時過ぎに電話が掛かってきた。内容は、キャンパスの欠席についてだった。少し戸惑ったが、欠席理由と謝罪をした。後で確認してみると、チャットで送ったと思っていたメッセージはエラーにより送信できていなかったらしい。ネット環境は悪くないはずなのに、こういうことがよく起こるの理解できない。
12月19日、学年主任の先生が敬愛している先生の講義と面談への参加を以前志望していた。過去に講演をこの高校でされたことがあるが、学年主任の先生が無理強いをして忙しい時期に来てもらったらしい。呼んだ理由は、大学に進学する受験生への激励だったはずだ。大学や知ってる人の間では有名な人で、努力という言葉では表せない人生を生きていた方だと認識している。
今日の講義の集合時間は13:30だったはず、学食行ってご飯食べとこ。めっちゃ人おるけど時間間に合うやろ。
なめてました。いや、並んでる列が想定の所と違って並びなおしたら、列がぐちゃぐちゃで順番が分からないから相手に譲ったし。予めとっておいた席に座り、左腕の腕時計を確認すると13:00を過ぎたくらいだった。普通に食べてたら時間に間に合わないし、よりによって何で熱々のうどん頼んだんだろう…。猫舌じゃないけど熱すぎるの食べれないし、今日比較的暖かいし。カーディガン脱いでも絶対暑いじゃん。しかも、食べた後走んなきゃ間に合わないじゃん。やばっ、舌火傷した。
ここで残念なお知らせです。13:30になっても講義の開催場所に誰も来てない。もしかして。集合時間間違えた?とりあえず勉強とかプロットとかして待と。
しばらく待っていると井口さんが来た。
「――――早くない?」
「開始時間さっき確認したら一時間早かった。」
「馬鹿やん。」
そう笑われてしまった。
講義の内容は、講義をする先生の人生の概要、今までに出会ってきた人達の話、これまでの人生からの経験則だったと思う。聞いていて有意義なものだった。講義の後は、希望者のみ講談をした先生との面談を行うことになっていた。順番になったら1人ずつ別の部屋に呼ばれていく感じだった。講義で3時間ほど経っており、面談希望者が以外と多いためみんなとの時間をとるために学年主任の先生がなるはやでしますと言った。
面談は1人30分くらいで行われた。ただ、公共機関の都合や帰宅時の安全性などの事情で順序を入れ替える必要のある人はたくさんいた。自転車通学の人達は大変だなって思った。自分は、案外遅めのバスがあるから問題はないけど。
「面談が時間かかって、」
一応話したけど連絡は入れた方がいいなって感じやな。最後の方に残ったのは知人なのは何というか不思議な感じだ。
「次どうする?私は別に後でも良いけど、できれば早い方がありがたい。」
「私は最後でも構わないけど。」
「こっちも最後でも問題ないよ。」
結局、井口さんが1番自分が最後になった。
自分の順番になり、面談の部屋に入った。ある程度の情報は共有されているようだった。それらの情報を基に進路相談は進んだ。
「K―――――――大とかどう?君の取得しようとしてる資格も取れるし、頑張れば行けると思うんだよね。それに、僕の友達もそこにいるし。」
そんなことを言いながら、自分の荒れた手を触った。触られた瞬間体がビックリして動いてしまったが、悟られないように動きを抑えた。その後も少し話は続いた。
「どう?行ける気がしてきたんじゃない?」
「はい、そうですね…。」
「じゃあ、最後に君は右手と左手どっちを選ぶ?僕の右手は努力、左手は才能を授ける。」
前に来た時も講義の時もその話をしていた気がする。正直分からないが、触れた手と触れた人の名前を憶えていることがすごいと思う。
「…では、左手で、お願いします。」
迷いはないはずなのに、戸惑いを感じられそうな声でそう言った。努力よりも才能が欲しい。努力しても才能がなきゃ無駄だと偉人が名言を残している。その人の才能は、発明した商品を売るための嘘により一日2食だった世界を一日3食の世界に変えてしまったことからも理解できる。それに、努力は後付けできるはずだし。
「ほう、そう来たか。」
自分がそっと手を触れた後、即座に握手へと変化した。学年主任の先生と講義をした先生に挨拶をしてその場を後にした。下校時刻はとっくに過ぎており、21:00になっていた。暗くなった校舎は雲に隠れていない欠けた月や星で照らされていた。
高校からバス停までのそんなに長くない道のりのなか考えていた。K大目指してみるのもいいかもなって。自分の視野や可能性を広げられるかもしれない。不確定未来を考えるのは楽しい。星空の下、思考も照らされていたのかもしれない。
バス停で歌いながらバスを待った。30分ほど待ったが、手がかじかんだことも気にならなかった。
バス停から歩いて2分ほどの家に帰った。家の鍵を母親が開けた。
「やぁ~、あんた。帰りが遅いけん心配した。」
大根役者でももっとマシな芝居するだろと感じる声でそう母親が言った。
「連絡しとったやろ。」
「そ~やけど。心配する~~。」
今まで心配したことなんて碌にないくせによく言えたな。そう思うと一気に気持ちが沈んだ。




