夏祭りの射的ガール
この作品は「なろうラジオ大賞4」の参加作品です。
今日は出店の多い夏祭りがある。そこには綿菓子や金魚すくいなど豊富だ。
そして小学生の少年が射的で、目玉の玩具の箱を一生懸命落とそうとしていた。
「どうして落ちないんだよ!」
少年が地団駄を踏みながら悔しそうにしていると、
「そこの少年! 君の腕ではあの的を落とすのは十年早いわ」
颯爽と前に現れたのは、ヒマワリ柄の浴衣を着た中学生の少女だ。妙に自信満々な顔をしていて、少年からしたら少し不気味にすら思えた。
「えっと姉ちゃん誰?」
当たり前の事を聞かれて、
「あたしの名前は的場外美って言うの。よろしく」
「僕は純平。それで姉ちゃんならあの玩具の箱落とせるの?」
「当然。純平君良く聞きなさい。あれを落とす為にはただ撃てば良いって訳じゃないの」
外美が説明を始めるため、
「おっちゃん一回お願い」
「あいよ!」
店主にお金を払って、コルク銃に弾丸を装填する。チャンスは三回。
「まず適当に撃っても落ちない。そして標的には弱点があるわ」
「弱点?」
純平が聞き返すと、外美は頷く。
「そう、弱点。人間にも心臓や頭に急所があるでしょ?」
「うん」
「それと同じで、あの箱にも弱点がある……!」
力強く外美はコルク銃を箱に向けた。
「た、確かに! 凄い天才だ!」
「えへへ、そうでしょ。そしてその弱点は……」
「弱点は?」
「商品の中心以外の外側の軽い部分よ!」
外美はドヤ顔で続ける。
「まず左右の部分を二発撃つの。そして上部で終わりよ」
外美は言いながら箱の左右上部を撃ち当てて、倒れはしないものの確実にずりずりと箱は後ろに下がっていく。
店のルールは倒せれば景品をゲットできる。あと一発撃てば揺れている箱の、前後どちらかで倒れそうに見えた。
「凄い、もう倒せるよ!」
パンッとコルクが発射され、上部に当たるかと思いきや外れた。当然箱は倒れない。
「「…………」」
二人は黙ってしまった。
そこへ三人の小学生たちが店へとやって来ると、全員で外美が狙っていた箱へと間髪を容れずに一斉に撃ちまくり、あっさり箱は倒れた。
そして三人は景品を持って行ってしまった。
「え、そんなのあり?」
「さぁ?」
外美は顔を真っ赤にしながら、深くため息を吐いていると、
「気にしなくて良いよ。僕は姉ちゃんと遊べて凄く楽しかったもん!」
「へっ?」
「この後も一緒に遊ぼうよ」
純平の満面の笑みに外美の胸はドキッとして、まるで銃で撃たれた衝撃を感じた。と言うより、リアルにコルクが胸に当たっていたのだった。