表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YouTube × Error  作者: のらくろ
8/15

スロウ


「なんだよあれ……気持ち悪りぃ」


『ハハッそんなこと言ってられるのも今のうちさ』


 魔法陣から現れたのは人型の何かだった。全身真っ黒のマネキンのような見た目だ。


『さあ、行け我が子達よ!』


 その声に反応して黒い人形は動き出す。


「うわ、キモッ」


 俺は剣を構え迎え撃つ。

 黒い人形は俺に向かって飛びかかってくる。

 向かってきた人形から切り刻んではいるがバラバラになった体は再生し元に戻る。


(ダメだ、キリがない)


 俺はフローラの方を見る。

 すると彼女は、魔法を放っていた。


「ホーリー・クロス」


 聖なる十字架が人形を貫いて行った。


『ほう、やるじゃないか』


 男は感心しているようだ。


「でも、倒せませんね」


 フローラの言葉の通り、すぐに復活してしまう。


『フッ残念だが倒すことは出来ないさ。その子達は死という概念が無いのでね。さあどうする?』


「クソっ……」


(考えろ、考えるんだ。あの攻撃じゃダメなんだ。もっと強い威力の攻撃が必要だ)


 俺は必死に考えていたが、その時フローラの声が聞こえてきた。


「レインさん、私に任せてください」


(え?)


「大丈夫なんですか?」


「はい、おそらくですが…【アイテムボックス】【収納】!!」


 そう言うと突然現れた亜空間に人形達は飲み込まれていった


「「「………」」」


 俺もフローラもダンジョンマスターもこの光景を見て言葉が出なかった。


「マジか……」


「はい、こんな感じでいいでしょうか?」


『ククク、面白いねぇ。まさか、私の作ったモンスターをこうも簡単にやられてしまうとは思わなかったよ、私の敗けだ』


「では、ここを通して貰えるんですね」


『ああ、もちろんさ。ただ、一つだけ条件があるんだけど良いかな?』


「内容によるけど」


『簡単な事さ、そこのお嬢ちゃんをくれればいいのさ』


「はぁ!?ふざけんな!フローラは物じゃないぞ!」


『分かってるさ、別に奴隷として扱おうとかそういうわけじゃない。私は彼女と契約をしたいのさ』


「契約だと?」


『そうだ。彼女と契約すれば私には彼女の能力が分かる。それによっては役に立つかもしれない。それに君達にとっても悪い話ではないと思うよ』


 俺はフローラの様子を伺う…フローラは俯いていた。

 そして、絞り出したような声で答えた。


「分かりました。それでお願いします」


「フローラ、本当にいいのか?」


「はい、元々いつかは誰かと契約しなければと思っていたので」


「そっか、分かった」


『話が早くて助かるよ。それじゃ早速始めよう』


 そう言うとスロウは扉を開きゆっくりとこちらに歩いてくる。


「待ってくれ、その前にいくつか質問をさせてくれ」


「構わないよ」


「まずは名前を教えて欲しい」


「私の名前はスロウだ」


「分かった。次はなぜフローラと契約をしようとしたのか理由を聞きたい」


「理由は簡単さ、彼女が欲しかったのさ。私は見ての通りこの世界とは別の異世界から来た者だ。そのせいなのかは分からないが、私の世界では女性は男性よりも力が弱いとされている。そこで考えたのさ、女性でも強い人は居るはずだ。そういった人達の力を借りれればと思ったんだよ。しかし、それは元居た世界では叶わなかった……」


「なるほどね」


(つまりは今まで力の強い女性が居なくて、力のある女性と契約したかったということか)


「次の質問だけど、どうしてわざわざ俺達に教えてくれたんだ?黙っていれば気付かれなかったんじゃないのか?」


『君は勘が良いみたいだからね。隠しても無駄だと思ってさ』


「そっか、ありがとう」


 俺はスロウの目を見つめる。

 嘘は言っていないように感じる。


「最後に一つ聞かせてほしい。あんたは元の世界に帰りたいとは思わないのか?」


「正直なところ、今はもうそんなことはどうでも良くなったよ。私がここに来たのは事故のようなものだ。帰れるものなら帰りたいさ。だが、それも今では無理だろうと思っている。だから今はこの世界で楽しく生きるつもりだよ」


「…わかった、俺からは以上だ」


 俺は改めてフローラの様子を伺う。

 すると彼女は涙を流していた。


「フローラ?」


 フローラはハッとした表情になり涙を拭った。


「すみません、少し考え事をしていました。大丈夫です」


「そうか、それならいいんだ」


「はい、お待たせしました。よろしくお願いします」


「こちらこそ宜しく頼むよ」


 スロウとフローラは手を繋ぐ


「それでは始めるとするかね」


「はい、わかりました」


 フローラは呪文を唱える。


「我、汝との契約を望むものなり 汝の名はスロウ 我が名はフローラ ここに契約を結ぶ 今、新たな力を与えん【契約】!!」


 フローラとスロウの間に魔法陣が現れた。

 そして魔法陣から光が溢れだし、辺り一面を包み込んだ。

 しばらくして魔法陣が消えるとそこには、スロウの姿は無く、代わりに白衣を着た白い猫が立っていた。


『これが私の姿かい?』


「ええ、その姿で間違いありません」


『ふむ、中々悪くはないね』


「可愛いですね」


「そうだな…取り敢えずステータスを見てみよう」


スロウ 【Lv1 種族:ケットシー(精霊種)HP:50/50 MP:30/30 攻撃力:80 守備力:15 魔力 :25 素早さ:50 スキル・召喚術Lv3 気配察知Lv1 称号 女神の使い魔、転生者】


『これは驚いたね。まさかここまでとは……』


「何か問題がありましたか?」


『いや、何の問題も無いよ。むしろ大歓迎さ』


「良かった……」


『早速で悪いんだけど、君に頼みがある』


「なんでしょうか?」


『私のレベルアップを手伝って欲しい』


「もちろんです。喜んで協力させて頂きます」


「スロウさん、これから一緒に頑張りましょう」


『ああ、よろしく頼むよ』


 こうして、俺達はスロウを仲間に受け入れた。


「ところでスロウ、君が出てきた扉の先には何があるんだ?」


「あの先には僕の作品があるだけだよ」


「ここは閉鎖しておいた方がいいかもしれないですね、冒険者が迷いこんでくるかもしれないですし…」


「そうだなスロウ、ここは放棄してもいいか?」


「あぁ構わない、面白そうな体も手に入ったしもう必要ないだろう」


 そうして俺達はダンジョンの一部を閉鎖しダンジョンを後にした。

 ダンジョンから帰った俺達はギルドで増えすぎた魔物は今後減るだろうと報告した。

 原因はスロウが実験を行っていたせいだからな…実験施設のことは伏せてモンスターの討伐数を話したら信じてもらえた。

 加えて確認のために何日かダンジョンに潜ってみるという提案も添えておいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ