⭕ ガッポリの恩恵
──＊──＊──＊── １年後
──＊──＊──＊── 裏庭
オレは今、セロや裏野ハイツの住人達と一緒にセノコンとマオキノが準備してくれたＢＢＱを楽しんでいる。
裏野ハイツへ引っ越して来た翌月から、１ヵ月に２回は開いている定期的な住人限定のお楽しみ企画だ。
肉類や魚介類，野菜を絶妙に焼いてくれるのは、セノコンとマオキノだ。
飲み物やタレの補充や一切の雑用やらも分身体が全てしてくれる。
そんな訳で、セロもオレも裏野ハイツの住人達も焼けた食材を好きなだけ美味しく頂くだけで良いから楽チンなんだ。
ＢＢＱの準備も後片付けもする必要が無くて、タッパを持参すれば焼けた食材をお持ち帰りする事だって出来る。
食後にはセロが手作りしてくれた絶品デザートだって食べれる。
ＢＢＱに必要な道具類や食材，飲み物，調味料なんかに支払われる必要経費は全部、セロが起こしている完全犯罪【 尻牛蒡事件 】の被害者達から没収した莫大な金から出されている訳だ。
そう──、これこそガッポリの恩恵の１つ！
ＢＢＱだけじゃなくて、毎月の季節に合ったイベントの必要経費にも使っている。
彼此にガタが来ている裏野ハイツの修繕費とかにも使っているし、裏庭の畑や花壇の世話に掛かる費用にも使っている。
裏野ハイツの壁に入ってるヒビを直したり、壁の色を塗り直したり、階段に滑り止めを付けたり、手摺を付けたり、屋根の雨漏りを直したり──と、まぁ色々と有効利用させてもらっている。
原因不明の怪奇現象や心霊現象に悩まされて困っている住人達の負担を少しでも軽くする為に住人限定のお楽しみ会を開いている訳だ。
枯れっ枯れに干からびる前に、心へ少しの潤いを与えてる──って感じかな？
３人居る子供の内、両親と３人暮らししている１人は、リビングに首を吊ってる男女が１人ずつ天井からブラ下がっていてプラプラ揺れている姿が見えているらしいんだけど、両親には全く見えていないようで、話しても信じてもらえないらしい。
両親は共働きしていて帰りが遅いから、学校から帰宅すると両親が仕事から帰宅する迄、１人で留守番をしていないといけないらしい。
それが耐えられなくて長い事１人で悩みながら耐えていたんだけど、セノコンとマオキノが話や悩みを聞いて相談に乗った事が切っ掛けで、現在は両親が仕事から帰宅する迄は、家の１階で過ごすようになっていた。
セノコンもマオキノも頭が良くて、勉強を見てあげているみたいで、そのお蔭もあってか学校の成績も上がったそうだ。
今では他の子供──２人も一緒にセノコンとマオキノに勉強を見てもらうようになっている。
祓い屋や退治屋じゃないオレには、天井から首を吊ってプラプラ揺れている霊体をどうにかする事は出来ないし、セロだって解決させる気は更々無さそうだし、何かをしてあげる事は多分ない。
祓い屋や退治屋に依頼をするとしても、請求金額が高過ぎて一般人は頼めない。
然も、見えるのは子供だけだから、天井から首を吊ってプラプラ揺れている霊体を見えない両親が、祓い屋や退治屋に言葉巧みに騙されて、都合良くカモられて不幸になる可能性も否定が出来ない。
霊能力者とか除霊師とかにはインチキ詐欺師も多いみたいだから、信じ過ぎて頼らない方が良いらしい。
セノコンとマオキノが確りしているから、裏野ハイツに時々やって来る面白半分な迷惑野郎共を論破して追い返してくれているみたいだから、裏野ハイツの住人達が、インチキ詐欺師達の被害に遭っている事は今の所は無いみたいだ。
金が絡むと人間は何でも悪用するからなぁ。
困ったもんだよな？
≪ 大陸 ≫でも問題になっていたけど、宗教だって同じだ。
宗教も信仰も悪い事じゃないのは皆が知っている。
だけど、１部の心無い人達の所為で、宗教や信仰は “ 悪い事だ ” とか “ 良くない事だ ” とか思われて、宗教を信仰している人達まで “ 何かおかしな事を始めるんじゃないか ” って誤解されたり、毛嫌いされたりしている。
宗教や信仰を金儲けの道具に悪用して私腹を肥やしたり、戦争を起こす為に悪用したり、純粋に信じている真っ当な信者達を言葉巧みに洗脳して、知らず知らずに悪い事をさせて金銭を荒稼ぎする信者の上層部の奴等とか、悪いのは全部、悪事に利用している罰当たりな人間達なんだ。
罰当たりな事をしている事にすら気付かない馬鹿な奴等だって居るだろうし、気付いているけど知らん顔して悪事を続けている腐れ外道な奴等も居るだろう。
財力，地位，名声，権力に目が眩んで罰当たりな事を平然と犯して私腹を肥やして贅沢三昧してるような腐った上層部の奴等も纏めて【 尻牛蒡事件 】の被害者になって、恥ずかしい思いをすれば良いんだ！！
自動車に乗って大勢の人を引き殺しても、それは自動車の所為じゃないし、自動車の責任でもないし、自動車を発明した人の罪でも所為でもない。
自動車を人殺しの道具に使った人間が悪いんだ。
包丁だって、人を刺し殺す凶器に使われたとしても、包丁自体は悪くない。
包丁の間違った使い方をした人間が悪いだけだ。
爆弾も同じだ。
正しい使い方をすれば大いに役立つ爆弾も、人を殺す目的で使われたからって、爆弾を発明した人を責めたり、貶したり、世界から爆弾を無くそうと活動するのは異常だ。
爆弾が悪いんじゃなくて、悪用した人間が悪いだけだ。
誤った使い方をして悪用した悪い人間を厳しく罰して、裁けば良いだけだ。
正しい使い方をしないで、間違った使い方をして他人に迷惑を掛けるような犯罪者達も【 尻牛蒡事件 】の被害者になれば良いのに！！
いや──、“ 尻牛蒡 ” なんて生温いな。
もっと相応しい罰にしないと！！
ん～～～でもなぁ、オレにはセロの実験のモルモットにする以上の罰は思い付かないんだよな。
…………まぁ、そんな事は別にいっか。
良く良く考えたら、オレは≪ 日本国 ≫の国民じゃないんだから関係無いな。
裏野ハイツの住人達が、怪奇現象や心霊現象に耐えられなくて出て行ったとしても何等問題は無いんだろう。
リビングに首を吊ってる男女が１人ずつ天井からブラ下がっていてプラプラ揺れている心霊現象以外に他の部屋にはどんな心霊現象や怪奇現象が起きてるのか──、オレは知らない。
セロしか知らないんだよな。
セロはオレには教えてくれない。
セノコンとマオキノだって、住人達から色んな相談を受けているから知っている筈なんだけど、セロから口止めされているみたいで、全然教えてくれないんだ。
オレだけ仲間外れにされてる疎外感が半端無い。
だけど──、それもセロの優しさなのかも知れない。
何も知らないで日々を暮らせている事は、案外１番幸せな事なのかも知れない。
──＊──＊──＊── ２階・寝室
長々と続いていた井戸端会議が漸く終わって解散した後、オレは階段を上がって寝室へ向かった。
セロが設置してくれた冷蔵庫を開けて冷やしているスイーツを取り出したら、ソファーに腰を下ろして座った。
デジタルＴＶのリモコンを手に取って電源ボタンを押すと、デジタルＴＶの画面に映像が映る。
丁度、お茶の間に事件を伝える報道番組が流れていた。
報道番組では公園にある池の中から子供の死体が発見された事が流れている。
マオ
「 おい──、この公園って…………近所にある公園じゃんか！！
嘘だろぉ～～～！
あの池に子供の水死体って…… 」
何でもボートデートをしていたカップルのオールに何かが引っ掛かって、それを確認したら子供の死体だったらしい。
コッワぁ～～～～！！
あの池──、２日前にセロと一緒にボートデートした池だったんだぞ！！
マオ
「 オレ達が発見したんじゃなくて良かったぁ～～～～ 」
一体何時から池の中に水死体があったんだろうな？
これから警察が捜査するんだろうけど……。
なんて画面の外で暢気にスイーツを食べながら画面を見ていると、画面の中で悲鳴が聞こえた。
何の悲鳴かと思っていたら、屋台でホットドッグを買って食べた御客が吐血して倒れたみたいだ。
池から発見された水死体の取材に来ていた報道記者が屋台の方へ走って行く姿が映る。
マオ
「 これって──、生放送なのか？！
あっ、倒れてる人が沢山居るじゃないか！！ 」
どうやらホットドッグを食べて吐血した人は１人じゃないらしい。
生放送中に別の事件が起こるなんて、流石は犯罪天国都市だな～～～～。
…………もう１人で公園に行けないじゃんかよ…。
特に──、屋台でホットドッグを買うなんて…………怖くて出来ない。
因みにホットドッグの屋台の主人は、公衆トイレの中で発見されて、刃物が胸に刺さったままの状態で血を流して死んでいた。
生放送で死体をガッツリ流すなんて犯罪都市ならではの報道方法なのかな？
………………ドラマでは見られない現生の死体か。
人間の死体なんて見慣れている筈なんだけどな……。
