♥ 不動産屋で住居探し 2
粐莓さんが持って来てくれた資料をセロと一緒に見るけど、何れも1ヵ月の家賃が30万を超えている。
どうしてだよ??
マオ
「 粐莓さん、どの物件も家賃が篦棒に高いんだけど、これってどういう事なの?
防犯設備ガバガバな物件ばっかりなんだよね?
何で異常に高いのさ? 」
不動産社員:粐莓
「 ──それは事故物件ではないからです 」
マオ
「 事故物件じゃない??
どゆこと?? 」
不動産社員:粐莓
「 えぇと──、既に御存知かと思われますが、この米●町は発生する事件が異様に多いんです。
毎日、何処かで必ず事件が起きていて日常茶飯事と言っても過言ではありません。
多い時では1日に8件も事件が起きます。
1週間で50件以上の事件が起きる町──、それが米●町です。
そんな町ですから、彼方此方で事故物件が多発していまして──、今や事故物件ではない物件は高値となっているんです。
ですから、防犯設備よりも事故物件ではない方が重要視されているので、防犯設備に期待が出来ない物件でも家賃が高いんです 」
マオ
「 マジかよ……。
防犯設備は二の次なのか……。
“ 犯罪都市 ” だなんて言われる程、犯罪件数が多いのに防犯設備を後回しにして大丈夫なのかな? 」
セロフィート
「 マオ、ワタシ達が心配する必要の無い事です。
粐莓さん、家賃1万以内で住める事故物件の資料をお願いします 」
不動産社員:粐莓
「 えぇっ?!
事故物件の資料ですか?
そ…それも月々の家賃が1万円以内の物件ですか??
本気……ですか? 」
セロフィート
「 ワタシは何時でも本気です。
お願いしますね、粐莓さん 」
不動産社員:粐莓
「 わ…分かりました。
資料を集めて来ますので御待ちくださいませ 」
粐莓さんは持って来てくれた資料──ファイルをテーブルの上から回収すると、そのまま去って行った。
御客の希望を聞いて何度も資料を用意しないといけないなんて大変だよなぁ。
申し訳ない気持ちになって来たよ……。
マオ
「 事故物件かぁ。
事故物件ってさぁ、何で “ 事故物件 ” って言うんだろうな? 」
セロフィート
「 物件で何等かの事故が起きたからではないです?
殺人,自殺,孤独死とか──、理由は山程あります 」
マオ
「 だよな~~。
発生する犯罪件数が1番多いって噂されてる犯罪都市だもんな~~。
そりゃ、普通に死人だって出るよな? 」
セロフィート
「 事故物件なら家賃も多少は安いでしょう 」
マオ
「 だと良いけどさぁ~~。
流石に家賃1万以内で借りれる物件があるのかな? 」
セロフィート
「 無ければ今夜もラブホテルに宿泊するだけです。
明日は他の不動産屋で探してみましょう 」
マオ
「 そだな…。
でもさぁ、出来れば殺しや自殺のあった部屋を借りたくはないよな?
孤独死は致し方無いと思うけどさ… 」
セロフィート
「 何を言いますか。
次の入居者の為に隅々まで手直しや掃除はされている筈です。
心配する事ないです 」
マオ
「 …………そうだけどさ…。
気持ちの問題だと思うんだよなぁ~~ 」
セロフィート
「 死体には慣れているでしょうに 」
マオ
「 いや、まぁ……そうだけど…… 」
オレは出されているクッキーを指で摘まんで口に入れて食べる。
クッキーじゃなくてケーキが良かったけど、そんな我が儘は言えないよな。
マオ
「 このクッキー、美味いな 」
セロフィート
「 高級品のクッキーだからでしょう。
流石に御客に安物のクッキーは出しません 」
マオ
「 そだな。
セロとオレって金持ちに見えてるみたいだし? 」
セロフィート
「 紅茶は手軽なティーパックですね 」
マオ
「 淹れてる所を見てないのに何で分かるんだよ… 」
セロフィート
「 ワタシ、紅茶に関しては煩いですよ 」
マオ
「 セロが紅茶好きなのは知ってるけどさぁ。
この時代の人間は本格的な紅茶はカフェとか喫茶店とか紅茶専門店とかで飲むみたいじゃん?
ティーパックとかインスタントステックで手軽に飲めるのが人気なんだろ 」
セロフィート
「 この≪ 島国≫にはマオと同様の容姿をした民族が多いです。
背も低いですし 」
マオ
「 ははは……。
セロは無駄に背が高いなら浮いちゃってるよな~~。
この≪ 島国 ≫だとオレよりも背の低い大人も居るから、一寸だけ優越感に浸れるよ 」
セロフィート
「 子供扱いされませんし? 」
マオ
「 そうそう!
オレ、この≪ 島国 ≫を気に入っちゃったよ 」
セロフィート
「 永住します? 」
マオ
「 いや、流石に永住はしないよ…。
他にも≪ 島国 ≫があるんだろ?
行ってみたいもん 」
セロフィート
「 ふふふ。
飽きたら次の≪ 島国 ≫へ行くとしましょう 」
マオ
「 だな! 」
セロと他愛ない話をしていると粐莓さんが、別の資料を両手に抱えて戻って来た。
不動産社員:粐莓
「 ──御待たせ致しました!
此方が家賃1万以内の事故物件になります 」
マオ
「 へぇ?
1万以内の事故物件って結構あるんだ?
セロ、この中に優良物件があると良いな! 」
セロフィート
「 そうですね 」
セロとオレは丁寧にファイルされている資料を見ながら、住めそうな物件を探し始めた。
セロフィート
「 ──この物件は良さそうですね 」
マオ
「 どの物件? 」
セロフィート
「 月々の家賃が2.000円と書かれてます 」
マオ
「 に……2.000円だって?!
マジかよ??
セロ、どんな物件だよ! 」
セロフィート
「 あぁ──、1人2.000円のようですね。
2人でも家賃4.000円です。
風呂なし,洗濯機共同,トイレ共同になってます 」
マオ
「 風呂なしって事はさ、近くに銭湯でもあるのかな? 」
セロフィート
「 徒歩10分の場所に銭湯があるみたいです。
その道中には公園とコンビニもありますね 」
マオ
「 ふぅん?
トイレが混んでたら公園やコンビニのトイレを使える訳だな?
便利なのか不便なのか分からないなぁ 」
セロフィート
「 マオとワタシには関係無い事です 」
マオ
「 そだな。
──あっ、裏庭があるみたいだ!
花壇とか畑とかにして家庭内菜園とか出来るかも? 」
セロフィート
「 他にも入居者が居るようですし、話し合いになるでしょうね 」
マオ
「 こんなに家賃が安い物件だから、壁は薄そうだよな?
問題ないけど 」
不動産社員:粐莓
「 あ、あのぅ──、御客様……もしかして……その物件がお気に召されたのでしょうか?? 」
マオ
「 どうなんだ、セロ? 」
セロフィート
「 そうですね。
銭湯から徒歩10分の先に最寄り駅もあるようですし、最寄り駅の中には様々なテナント店が入っていて賑わいがあるようです。
便利ではありますね。
銭湯へ向かう反対方向には病院や学校,図書館もあるみたいです。
中々の優良物件と言えるでしょう 」
マオ
「 じゃあ、此処に決めちゃうか? 」
セロフィート
「 1度、現物を見たいですね。
実際に周辺も歩いてみたいですし 」
マオ
「 そだな。
物件見学ってヤツかな?
粐莓さん、今から此処に行ける? 」
不動産社員:粐莓
「 ヒェッ──、い……行かれるんですか?? 」
マオ
「 何か都合でも悪いの? 」
不動産社員:粐莓
「 い、いえ……そんな事はありませんけど……。
其処の物件は確かに優良物件ではありますが……その…………問題が多々ありまして…… 」
マオ
「 あぁ……裏庭の前が墓地って事なら、セロもオレも気にしないよ。
教会と墓地がセットみたいなもんじゃん。
あっ、此方だと寺とか神社だっけ?? 」
セロフィート
「 神社と寺が1つになっている社寺がありますね。
階段を上がると行けるみたいです 」
マオ
「 セロもオレも霊的な類いは平気だし、心配ないよ 」
不動産社員:粐莓
「 ………………そ、そうですか??
そのハイツに入居されてる住人達は変わり者揃いで、一癖も二癖もある方達ばかりでして……隣人トラブルとかしょっちゅう起きるみたいで……前回の入居者も1ヵ月も経たない内に解約をされたぐらいでして…… 」
セロフィート
「 隣人トラブルです?
問題ないです。
誠意と真心を込めて “ お願い ” しますし。
ですよね、マオ 」
マオ
「 ははは……。
誠意と真心ね……。
──まぁ、引っ越しの挨拶が肝心なんだよな?
誰がボスなのかちゃんと教えれば隣人トラブルも起きないんじゃないかな? 」
不動産社員:粐莓
「 ボス……ですか?
物騒な事を言われるんですね? 」
マオ
「 えっ、ボスは駄目?
じゃあ──、リーダー?
班長?? 」
セロフィート
「 そんな事より、案内をお願いします。
米●町の裏野ハイツ──ですか?
物件見学へ行きましょう 」
不動産社員:粐莓
「 は、はい……。
直ぐに準備致します! 」
粐莓さんは引き吊った笑顔で準備を始めた。
行きたくないのかな??
米●町の裏野ハイツか。
どんなハイツ何だろうな?
──っていうか、 “ ハイツ ” って何だろうな?