⭕ 事件は続くよ、いつまでも
──*──*──*── 5年後
──*──*──*── 1階・縁側
オレは今、縁側に腰を下ろして日向ぼっこをしている。
セロと一緒に裏野ハイツへ引っ越して来た日から既に6年の月日が過ぎていた。
6年かぁ~~~~。
6年も米●町に暮らしてるから、色んな事件が起きても慣れちゃったなぁ。
近所で事件や事故が起きても、今はもう何も思わない。
裏野ハイツは今日も平和だ。
畑の世話をしているマオキノが可愛いし、花壇の世話をしているセノコンが可愛いし、雨上がりの空には虹が見えている。
平和だぁ~~~~。
裏庭の前にある墓地で事件が起きていても全く気にもならないやぁ~~~~。
あははは~~~~。
セロフィート
「 マオ、薬草を使ったパンが出来ました。
食べます? 」
マオ
「 食べる、食べるぅ~~~~♥️ 」
セロフィート
「 練乳クリーム,豆乳クリーム,生クリームを用意してます。
好きなのを付けて食べてください 」
マオ
「 うん!
薬草入りパンかぁ。
セロ、これも入居者へのお土産にするのか? 」
セロフィート
「 その予定です。
感想を聞かせてください 」
マオ
「 任せろ!
いただきまぁ~~す! 」
6年目を迎える頃には裏野ハイツの住人は、セロとオレだけになっていた。
老後施設に入る為とか、結婚するとか、仕事の転勤で引っ越すとか、実家を継がないといけなくなったとか、留学する事になったとか、実に色んな事情で住人達は裏野ハイツから卒業して行った。
102号室と202号室以外は完全に空き部屋になっているんだけど──、入居者がセロとオレだけになった時点で、セロは不動産屋から裏野ハイツを買い取っていた。
だから、この犯罪天国都市の米●町にある裏野ハイツはセロの所有物件なんだ。
セロとオレの住居になっている102号室と202号室以外の空き部屋では現在も怪奇現象や心霊現象が起きている。
セロは裏野ハイツで巻き起こる不可思議な現象を売りにして、怪奇現象体験,心霊現象体験がしたいディープなオカルティアン達を対象にした短期の入居体験が出来る事業を始めた。
いやね、これがネットでバズっちゃってさ、今や7年待ちの大人気イベントになっちゃってる訳だよ。
怪奇現象や心霊現象を体験してみたいっていう人が多くて驚いた。
この島国の国民ってオカルトが好きなのかな??
県外からの希望者も多いし、「 動画配信をしたい 」っていうユーチューバー達からの希望者も多いんだ。
1泊2日の3食・デザート,お土産付きで1人1万円なのに大盛況だ。
勿論、セロが始めた【 尻牛蒡事件 】も1週間に20件、必ず起きている。
悪どい事をする人間が全然減らないから、6年も続いてるよ。
流石は犯罪都市の米●町だ。
米●町から始まった【 尻牛蒡事件 】は、米●町から飛び出して、今や島国中で起きている。
セロ──、遊び過ぎだぞぉ!!
お蔭でガッポリ出来てるから、不動産屋から裏野ハイツを買い取る事が出来た訳だけどな。
どんな【 尻牛蒡事件 】が起きたのかと言うと──、ほんの一部だけ紹介したいと思う。
本来ならば、本物の絵画を展示しないといけないのに、贋作を展示して高額な入場料を取っていた美術館の館長が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、図書館の奥で眠っていた多くの書籍を内緒で転売して荒稼ぎしていた図書館の館長が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、事件で押収した薬物を繋がりのあるヤクザな奴等へ内密に横流ししていた警察の上層部に居た8名が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、宗教分離ってのに違反していながら政界に居座って私腹を肥やして悪さをしている大物政治家達が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、宗教を悪用して、純粋に教えを信じている信者達を騙して、洗脳して、悪事を働かせて莫大な金を集めている腐った上層部の信者達が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、オリンピック事業を悪用してを賄賂を送り合ったり、自分達だけ贅沢三昧しているオリンピック関連者やスポンサーをしている企業の社長達やらが【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、生徒達の日常を盗聴したり、盗撮した猥褻画像を好き者達に売り付けて小遣い稼ぎをしていた教師達が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、金持ちの政治家や企業の社長なんかの馬鹿息子や馬鹿娘を裏口入学させる代わりに多額の金を手に入れている学校の理事長や協力している教師達が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり──、痴漢をしてない男の乗客に痴漢容疑を持ち掛けて、示談金をせしめて小遣い稼ぎをしている女子学生が【 尻牛蒡 】の被害者に選ばれたり────。
まぁ、色んな悪どい事をしている奴等が次々とセロの起こす【 尻牛蒡事件 】の被害者になっている。
1週間に20件へ減ってからかは、全裸に剥いて、被り物で顔を隠して、尻に牛蒡を捻り込んだだけじゃなくて──、男には去勢も兼ねて陰部を切り取った状態で放置しているし、女に関しては秘部に長ネギをブッ刺しているだけじゃなくて、左右の乳房を削ぎ落とした状態で放置している。
“ 未成年者だから ” って理由で見逃されたりはしない。
大人と同様──平等に全く同じ制裁を受けている。
被り物で顔を隠されているから “ 身元はバレないだろう ” なんて思っていたら大間違いだ。
何故かと言えば、世の中は便利なネット社会だからだ。
セロは〈 器人形 〉を使って、被害者になった加害者達のパソコンをハッキングなる事をして、彼等が犯してきた悪行の数々をネット配信して拡散している。
色んな新聞社や色んな週刊誌にも証拠となる資料を送り付けてるし、警察にも証拠品と証拠資料を送り付けている。
ネットの中では「 【 尻牛蒡事件 】は正義の鉄槌だ~~~~!! 」とか「 正義の行いだ!! 」とか話題になって盛り上がっているけど──、【 尻牛蒡事件 】は微塵も正義の行いなんかじゃないんだよ。
ただただ、セロがガッポリしたいが為に始めた迷惑千万な珍事件なんだ。
別にさぁ、尻に牛蒡をブッ刺さなくても良かったんだよ……。
他に別の何かを──、そう言えば「 全裸ついでに尻の穴に何かを突っ込んどいてやろう! 」みたいな事を言ったのオレだったな。
言い出しっぺのオレにも責任あるじゃんか……。
綺麗さっぱり忘れてたな~~~~。
マオ
「 ──セロ、この薬草パン、美味いよ!
練乳クリームも豆乳クリームも生クリームも美味いし、何れも合うよ。
何も付けなくても十分美味いし 」
セロフィート
「 気に入ってもらえて何よりです 」
マオ
「 お土産は体験入居者に選ばせてるんだよな?
もう増やさなくて良いんじゃないか? 」
セロフィート
「 この裏野ハイツでしか手に入らない美味しいお土産が増えれば、オカルト目的ではない人達からの入居依頼も来るようになります 」
マオ
「 今でも7年待ちじゃんか。
これ以上増やしてどうするだよ? 」
セロフィート
「 ガッポリ出来ます 」
マオ
「 ガッポリは【 尻牛蒡事件 】で、十分してんじゃんかよ… 」
セロフィート
「 人が増えて賑やかになれば、事件も増えます。
米●町は益々騒がしくなるでしょう 」
マオ
「 しなくていいよ!
事件を起こす為に人を呼び込むなよな~~~ 」
セロは「 ふふふ 」と上品に笑いながら、オレに笑顔を向けてくれる。
今日も島国の何処かで誰かが【 尻牛蒡事件 】の被害に遭っているってのに──、セロは暢気だ。
オレもセロの事を言えやしないけど……。
セロは何時迄、この犯罪天国都市で暮らすつもりなんだろうな??
◎ 今回で最終話です。
11話と短いですけど、最後まで読んでくださり、有り難う御座います。