第9話 入団試験と仮面①
騎士団に入っちゃいましょう。
「何をいってるんですか?え?ちょっと?馬鹿ですか??」
「何が?」
「いや、令嬢が騎士団…?そんなのないでしょう…」
「前例がないってだけじゃない。」
私は慌てるセレーネを見て逆に冷静になってゆく、そうして様々な考えを巡らせ決意を固める。
「私が言うのも変なのですが、淑女…?とやらとしてはどうなんですか?それって…だから隠れて女神やってたんじゃないんですか?」
「え?ちがう、ちがう…私はただ…《《聖属魔法》》が使えるから、自分の身の安全のために…それにいざという時の切り札になるし。」
そう、私は《《聖属魔法》》が使えるのだ。聖属魔法は全部で7つある。一つが御光の治癒、もう一つは大地の共鳴、そしてもう一つが異界の枢だ。簡単に言い換えると治癒と自然を詠み、操るという事と他のどの世界のどこにでも行ける戸が開けるという魔法だ。この3つが良く使うものだ。聖属魔法のどれかを使える人は帝国にもいるし、重宝されるが全部使える人はいないのだ。しかも、どの力をとっても格が違う。比べられた方は自分はただの味噌っかすだと気づかされるだろう。そのくらい強力なのだ。
「切り札を今使うの?!おかしくない??」
「いや、魔法のことは隠す。それを取ったって私強いし。調節してそこいらの騎士くらいにするー。ね?いいでしょ?」
「…詳しい意は教えてくれないのですか?」
セレーネの言葉に私は息が詰まった。前々から考えてきたことではあったのだが騎士団に入らなければならない訳がある。
私は息を深く吸って口を開いた。
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「いってまいります。」
私はお父様に頭を下げた。成人すると女性は皆、結婚してその家の仕事をするか少数派だが実力で文官などになったりする。この国では14でデビュタント、15で成人だ。私はもう済んでいるので家庭を持つまでという条件付きで試験を受けること、入隊することの許可をもらった。つくづく私の父は素晴らしい人だ。普通の家なら淑女がそんなことをするなんて…と却下され、傷物になったらどうするんだと言われるとことだ。
「アーリア、気を付けるんだぞ。」
「…はい。」
「うむ、励んできなさい。」
「もちろんです!ではっ!」
私は元気に馬車に乗り込んだ。私と同じく騎士団の制服を着たセレーネが先に乗っていた。私の顔を見るなりセレーネは笑った。
「嬉しかったんですか?」
「うるさい。」
私の目には涙が溜まっていた。
涙が乾いてきた頃、私は馬車に揺られながら1か月前を思い出す。夏の初めに一回、冬の初めに一回行われるナタリタ帝国騎士団の入団試験は面白いものだった。
お疲れ様です。本当の本当に本格始動です。。