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アリュシアになったイシュリア  作者: アシストライフ
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屋敷の庭にいた白い一角獣が嘶く。

「ドライ!」

イシュリアは嬉しそうに駆け寄り、一角獣の頭を撫でる。イシュリアが長年世話をしている一角獣だ。興奮する一角獣を、イシュリアは「どうどう」とあやしていた。一角獣はアリュシアの姿をしたイシュリアを、イシュリアだと認識している。一角獣は嬉しそうにぶるぶると首を振っていた。

「ドライでいくの?」

歩み寄るウィルへ、一角獣の頭を撫でながらイシュリアがそう尋ねた。

「はい、イシュリア様」

「ドライの足でも、城までは丸一日。だね・・・」

一角獣の鼻先を撫でながら、イシュリアは少し寂しそうに呟いた。屋敷の地下にある寝室では、アリュシアが眠りについている。早く目覚めた姉に会い、話をしたい。そして叶うのなら、この身を元に戻してほしい。イシュリアは、その為にも早く自分の義務を終えたいと思っている。

(このままでは、とにかく駄目だ。僕のせいで姉さまを苦しませて。もし姉さまを失うことにでもなったら、後悔では済まない。それだけは絶対に、駄目だ!)

アリュシアの優しさに甘えてまで生きていたくはないと、イシュリアは強く思っている。そんなイシュリアの焦る気持ちを感じ取ったウィルが、柔らかな微笑みを浮かべる。

「大丈夫ですよ、イシュリア様」

ウィルは手慣れた様子で、一角獣へと駆け上がる。彼女は手綱を引くと、その手をイシュリアに差し出した。

「さあ、参りましょう。イシュリア様」

笑顔のあふれるウィルに、イシュリアの心は落ち着く。

「うん」

ウィルの手を取り、その背後へとイシュリアは回った。

「風の精霊よ!」

ウィルが叫ぶと同時に、柔らかな光が一角獣の周りを取り囲む。精霊エレメントの力を感じ取ったイシュリアが、驚いた様子でウィルに尋ねる。

「これは?」

この国一とも評される風使いのウィルは、その身を誇るように張った。

「わたくしは魔法師ウィザードなのですよ。イシュリア様がご心配なさるような、そんなお時間は取らせません!」

風の精霊は集い、ウィルの手によって束ねられる。

「翼の、風!」

柔らかな光は風の束となって、一角獣を包み込んだ。ウィルは手綱を引く。

「さあ、ドライ!風になりなさい!」

一角獣は嘶き、歩みだす。風は一角獣の翼となり、羽ばたいた。空に舞い、イシュリア達を乗せた一角獣が駆けだす。

(すごい!)

一角獣は空を切り裂き、駆け抜けて行く。

(本当に、風になったみたいだ)

アリュシアの屋敷は、あっという間に見えなくなった。

(姉さま。すぐ戻るから、待っていてね)

イシュリアは消え去った屋敷の方角を見つめながら、アリュシアを想っている。


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