二人の神獣
「………………少し出かけてきます」
「………………同じく」
ものすごく怖い顔でミシェルさんとタマモが歩きだしました。
一体どこへ――って聞くまでもなかったですね。
おそらく東洋国家に行こうとしていました。
「待ちなさい。まだそうと決まったわけじゃないのよ。一旦落ち着いて……というかタマモまで、ミシェルの真似しなくてもいいのよ」
「……真似じゃない。お嬢に何かする奴は消す……」
「そうです。お嬢様を害そうとする輩は完全消滅させます。此度はその魔法の作成に関わったもの全てを排除します」
もうやる気満々です。
二人の周囲の精霊たちもざわざわしています。
ユミエラさんはみんなに愛されているのですね。
「……そんな魔法作ったって神獣には意味ないわよ。知っているでしょ? その人たちは神獣がどんなものかよくわかっていないのよ」
「そうかもしれませんが……」
「それに、やるなら徹底的にやるのよ。だから今こうして話し合いをしているの。こんな子供たちを利用しようだなんて、許せないもの」
あれ? ユミエラさんも意外とやる気あったみたいです。
ここの人たちはみんな過激でした。
『まあまあ、ミシェルもタマちゃんも落ち着きなさいって。もぐもぐ。結局殲滅するんだから、焦っても仕方ないじゃない。もぐもぐ。どうせ黒幕はあのじじいなんだから。もぐもぐ』
「ティア様……カレー頬張りながら言うことじゃないですよ。というかお行儀が悪いです」
『気にしない、気にしなーい。あたし精霊王だし~』
と言って、カレーとスプーンを両手にふわふわしている精霊王様。
まったく威厳を感じられませんでした。
その様子を見て、ママたちも少し緊張が和らいだみたい。
「……ねぇねぇ、ノアちゃん」
「どうしたの?」
「……今って何のお話ししているの?」
カナモは今までのお話を全く理解していませんでした。
改めてこの子にわかりやすく説明してあげました。
「えぇぇぇぇぇ!? そうなの!? びっくり~!」
「急に大声出さないでよ!」
「ご、ごめんね~。でも、タマモちゃんとユミお姉ちゃんはどうして悪い人に狙われるの?」
「今説明したじゃない! ちゃんと聞いてた?!」
「う、うん。ちょっと難しくて……」
もうこれ以上わかりやすく説明することはできないわよっ。
また同じ話をすることに。
「ふふっ。カナモちゃんがもーっとわかりやすいようにお話ししてあげる。そのためにも……カイ、おいでなさい」
ユミエラさんが手をパンパンと叩き誰かを呼んだ。
この前の虎さんかな。
私たちの下へ来たのは引き締まった体をした長身の男性だった。
執事のような服を着ていて凛々しい雰囲気を感じた。
しかし……虎耳と尻尾が付いていた。
「「「えっ??」」」
ユミエラさんたち以外の声が重なった。
誰もが驚いた。こんな人ここにいたかと。
「タマモ、あの子呼べる?」
「……もち。キュウちゃん、お嬢がお呼び。出る……」
タマモがそう言うと、突然髪が金色に変化した。
そして狐耳と九本の尻尾が生えた。
「主、全て聞いている。俺はいつでもいけるぞ」
「ふっふっふ。わらわの大事なタマモを狙う不届き物がおるとは。姫、加減はせずともよいのだろう?」
二人は好戦的な目を浮かべ、ユミエラさんにそう言いました。
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