光の巫女 *アリア視点
突然やってきた美女が思いもよらないことを口にした。
ていうかとんでもない美女なんだけど。
確実に人間ではないわ。だって羽生えてるもの。
それになんかふわふわしてるし。
もしかして精霊……?
「ティア、アリアさんのこと知ってるの?」
ユミエラさんが美女に話しかけた。
そうよね。私も戸惑っている場合じゃないわ。
彼女に聞きたいことがあるのだもの。
『んー? 知らないわよ。ただこの子が『光の巫女』っていうことは分かるわ。あたし精霊王だし』
……。
待って。今なんて?
「その『光の巫女』って何? 『聖女』とは違うの?」
『『聖女』って人間が決めたあれなやつでしょ? それとは違うわ。『光の巫女』は光精霊に愛された娘のこと。精霊の中で光精霊だけはちょっと特殊なのよ。だから光精霊に愛された子は精霊そのものにも愛されるくらい清浄な魂を持つ。つまり人間にとっても特別な存在なの』
そう言って私を観察する精霊王様。
観察しながら何かつぶやいている。
『……確かに綺麗な子ね。精霊たちに好かれるのもわかるわぁ』と。
あ、あの、そんなに見つめられると恥ずかしいです……。
「『光の巫女』…………って、ああ。聞いたことあると思ったらこれですね」
ミシェルさんが一冊の本を掲げた。
あれは『魔王戦記』ね。
私は実際に読んだことはないのだけど、有名な歴史書らしいわ。
「それがどうしたの?」
「これに『光の巫女』って呼ばれる女の子がいるんです。その子はかつて勇者に力を貸し与えたとか。それにその女の子の住んでいたところは砂漠だとか」
「へぇ。それならアリアさんと何か関係しているのかしら。その方の子孫だったりとか」
「いや、まさか。そんな話聞いたことありませんよ。私の実家はサンドリオン建国から続く名家というだけです」
まず『光の巫女』というのも私は初めて聞いたわ。
あれ? でも騎士たちはいつも私のことを『巫女』って呼んでいたわね。
彼らは何か知っているのかしら。
「それより精霊王様、私も一つお聞きしてもよろしいですね?」
『そんなにかしこまらなくていいわよ。人間のマナーとか面倒くさいもの。ティアでいいわ』
「わかりました、ティア様。それで、先ほどおっしゃっていた私にかかっている呪いというのは?」
『ああ、それね。その気持ち悪いのは、簡単に言うとある国の王が私たち精霊の力を欲した欲望の塊。精霊の力を我が物にしようとして作り上げた魔道具と同じもの。その愚か者はそれを持ってこの聖域までやってきたわ。まあ、その当時に全部ぶっ壊したんだけどね』
精霊の力を我が物にって、なんて恐れ多いことを。
『それはあなたを起点にして精霊の力を奪う。そしてその力は呪いをかけた本人に送られる。あなたの話を聞く限りじゃたぶんその妹ね』
「なるほど。これで辻褄が合いましたね」
「? ミシェルどういうこと?」
「……お嬢様、お話しはちゃんと聞いていましたか?」
そうね。
私もティア様の話を聞いてようやく理解することができました。
ユミエラさんは頭を悩ませているようです。そんな姿も可愛らしい。
そんなユミエラさんの頭をミシェルさんが聖母のような表情で撫でています。
しかし、鼻血が出ています。……ミシェルさんてヤバイ人なのかしら?
「簡単に説明しますよ。
まずアリア様が魔法を使えなくなった理由が分かりました。呪いによる影響です。おそらく光の精霊魔法を使っていたからです。呪いによって精霊の力が奪われて魔法が使えなくなった。
じゃあその呪いをかけたのは? これはおそらくというか十中八九妹さんです。アリア様しか使えなかった魔法を使うことができたことが証拠ですね。アリア様から奪った力を行使していたのでしょう。
そうした理由は……まあ簡単な話、アリア様を陥れるためですかね」
「……そうですね。幼い頃から何だかんだと対抗してくるような子でしたから。私が聖女として持て囃されていたのが気に食わなかったのでしょう。しかし、一体どうやってそんな呪いを……? それに私はその、光の精霊様を見たことがないのですが」
妹は私が『光の巫女』であるということを知っていた?
いや、わからないわ。あの子が何を考えていたのか全然わからない。
考えこんでいると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきました。
「――それについては俺が説明しよう」
「シュウ!?」
視線を向けると壁にもたれかかっている私の騎士がいました。
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