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中華マフィアとのアルバイト1


「俺、中華マフィア」

男は若干癖のある日本語で短くそれだけを語り、反応を待つように黙った。

僕は居心地の悪さを感じ、自分も自己紹介するべきなのかな、と思い反応した。

「僕は魔術士です、テレキネシスとパイロキネシスを得意としています。」

名前は語らなかった、相手が名乗らなかったため、こういう時は名乗らないものなのかなと思ったためだ、緊張から若干ぎこちない日本語になってしまったが、男にとっては十分な反応だったようで、一瞥すると夏子の方を向いた。

「子供じゃないか、大丈夫なのか」

「大丈夫ですよ、少し見せますか」

そう言うと夏子は少し腋を上げたかと思うと”パスパスパス”と音を出した。

————少し遅れて硝煙の匂い

この女は都会のど真ん中の雑居ビルでサイレンサー付きの拳銃をぶっ放したのだ。


「やめてよそういうの」

銃弾は空中で三発並んで止まっていた、勢いはなくなったが完全に空中に浮き、回転は続いていた。


僕が宙に浮いている銃弾をゆっくりと素手で集めはじめたあたりで、男はやっと反応らしきものを見せた。

サングラス越しでも目が泳いでいるのがわかる、さすがの中華マフィアもこのような事態は見たことなかったらしい。常に防御魔術による結界を張っていて、夏子のことだから何かはやるだろうと身構えていた僕は男よりも精神的な余裕があったので、その反応から男が魔術界隈とは関わりのない、もしくは薄かった人間だということを分析する余裕もあった。

 そして、夏子の突発的なパフォーマンスは、まあ許容範囲かと考えに至り、もう少し何か見せる方がいいかなと思い始めた頃、男はすでに平静を取り戻し、十分といった様子で来客用らしい黒い革製のソファーへと僕たちを促した。


男は座るとテーブルに用意してあったファイルを開き、写真といくつかの資料らしきものを広げた。

「俺たちの組織は実力主義だ、血縁というものをまず信じない、それは血縁による裏切りで血が流れた過去からくる伝統なのだが、ゆえにボスが引退する時は組員の中から次のボスを指名し、それができない場合、つまり死亡によって席が空いた場合はある"ゲーム"をして次のボスを決める」

 男は一枚の写真を見せた

写真には古い歴史を感じさせるほど古ぼけた金の小さな像が写っていた。

「金印だ、これは魔術の道具で普段はボスの右手に封印されていたものだ。組に入ったものは、これで全員手の甲に印を捺される。 印はこの組織の力そのものだ、印を捺された者同士は傷つけあえず、またお互いの位置が分かるようになる、つまりは文字通りの絆だな、そしてこの印を捺す資格のあるもの、つまり組のボスには絶対に逆らえない、逆らったり傷つけてはいけないというルールに逆らうと、印が赤く光りだして、そいつの全身に激痛を走らせ、それでも無視した場合、最悪死に至る。この組織はそういった絶対の繋がりによって強固なものとなっていたんだ。・・・印は普段は半透明だったがボスが死んだ途端に文字がずっと浮かび上がるようになった。」

 男は手袋を外すと手の甲を見せた、そこには"虫"のような・・・例えるなら古代の象形文字のようなものが浮かび上がっていた、ディズニーランドの再入場スタンプみたいだなと思った。


「印を持つ者には自然に理解できる事なのだが、この金印をボスが死んでから240時間後に持っていたものが次のボスになれる。

ただし、さっきも言った通りこの印を付けたもの同士は直接は殺しあえない、しかし、印を付けたもの同士は金印本体の場所と他のライバルたち全員の位置がわかるから、それで殺さない範囲内で奪い合って力を見せる、というルールのゲームとして設定されているんだろうな。」

「なるほどね、で、それって第三者ならば組員を殺したりしても問題ないっていうルールだってことですよね。」

「ふん、最初にそこに突っ込むとはいい性格してるな、そうだよ、そこを含めたゲームだからな

この組は一次団体、つまり組員それぞれがまた自分の組を持っている、組員の力を示すってことは必ずしも"個"としての力を見せることに限らないってことさ。

 ちなみに、印を捺されているのは一次団体のメンバーだけだ、印自体の効力は実際大したものではない、逆らったり仲間を傷つけたら死んでしまうというデメリットの割に、メリットは”仲間の位置”と”次のボスになる権利”だけだ、”非魔術士”に”誰にでも”能力を与えられるという点では十分なものかもしれないがな、下の者たちとしては、忠誠を示すだけのものと言ってもいいだろう。ただ、そのハイリスクローリターンな忠誠を示させる、それが形になっているというだけあって、普段の組の結束はとても強い、ただただ強い絆を求められる分、組織としてはいろいろな面で絶大なリターンがあるんだ、この世界では”絶対の信用”は何ものにも代えがたい力になるからな。」


「ルールは分かりました、早速その印の能力を活用しましょう、今、印を持っている人の居場所を教えてください、あとは僕たちで何とかすることを約束しますよ。ターゲットはどこにいるんですか?」


男はすこし皮肉っぽくニヤリとして天井を指さした。

「月」

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