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考え中  作者: ひやしかきごおり
第1章
3/3

出会い②

1時間くらい経っただろうか。

時間を全く確認していなかったので、どれくらい経ったかは勘でしかわからない。

ずっと座って何をしていたかというと、ただただひたすらにボーッとしていた。

人生でここまで時間を無駄にしたことは無いんじゃないかと思うくらいボーッとしていた、ほんとに。

そうなるのも仕方ないのである。

帰る方法はわからない、何をすればいいかわからない、そもそも俺がどういう待遇になるかもわからない。

父さんと母さんがこの世界でどういう関係なのかもわからない、もうわからないない状態だ。

そんな待つしかできない俺にできるのは、わからないことを永遠と考える事ではなく、頭を空っぽにして気持ちを落ち着かせる、という考えに至ったのだ。

もうすごい冷静。ほんとに。

ただ、1つだけ言わなくてはいけない事があり、それが追い討ちのようで少し気は沈んでいた。


「随分とお待たせしてしまったね」


不意に声をかけられ立ち上がる。

いつの間にか話を終わらせていた王様が目の前に立っていた。


「いえ!全然!逆に心の整理する時間が出来て良かった的な!」


一瞬で冷静ではなくなっていた。

仕方ないじゃないか、この人からはすごいオーラを感じるんだ、しかもイケメンだし。

ブロンドの長い髪に、整った顔立ち、服は派手過ぎず、しかし王としての気品を感じる赤と白を主に使っていて、赤いマントもめちゃくちゃ似合っている。

あの騎士、クレスもイケメンだったが、王様は優しそうな雰囲気がプラスされて印象が良い。


「そう言ってもらえると助かるよ、だけど、待たせていた事に変わりはない、手違いで召喚してしまった事も含め、本当に申し訳ない」

「いや、ほんと、気にしないでください!」

「……ありがとう、そうまで言ってもらえるなら、早速だけれどこれからの話さなくてはいけないね、でもその前に、私の自己紹介がまだだったね」


王様はピッと姿勢を正し、真剣な表情で口を開いた。


「私の名はヘンリー・アズ・レリア・オブ…………いや、そうだ、君は気軽にヘンリーと呼んで構わないよ」


真剣な表情で格好良かったのだが、名乗っている途中一瞬止まったかと思うと、フワッと微笑み、面倒になったのかそんな風に言ってきた。

というか、王様をあった初日で、しかもこんな短時間で呼び捨て!?


「無理無理!無理です!!そんなどこぞの奴が王様をいきなり呼び捨てにしてたら怒られますよ!」

「うーん、そうかな?」

「そうですよ、さっきのお爺さんとかにまた怒られちゃいますよ」


って何言ってるんだ俺!

王様のフレンドリーな接し方のせいか、俺はつい半分くらい友達と接するような感覚になってしまっていた。



「あっはは!そうか、そうだったね!ハクロウは変な所で堅いからね、なら、君の好きなように呼んでくれいいよ」



いくら突拍子もない提案だったとはいえ、王様の言葉を食い気味に否定するなんて、冷静に考えれば大変な事をしていた。

王様は笑ってくれたが、ここは日本じゃないんだ。

あの水晶で見た世界通りなら、ここは異種族や魔物、魔法なんかもある世界だ。

こちらの世界のルールも知らない内は、迂闊な行動と言動は危険だ、庇ってくれる味方もいないし、しばらくは気を引き締めておこう。


「おっと、話がズレてしまったね、じゃあ今後の話なんだけれど、とりあえず彰人君がまず聞きたいと思っている事はわかるよ、元の世界の事だろう?」

「えっと、はい、俺は元の世界には帰れるんでしょうか?」

「勿論だとも……しかし1つ問題があって、実は転移用の水晶が砕けてしまってね、大変申し訳ないが、すぐに元の世界へ帰すことはできないんだ」


そういえば、と最初の部屋の事を思い出す。

あの時何も無い部屋だったが、床にガラスのような物が散らばっていた。

あれはその転送用の水晶が砕けた後だったらしい。

しかしすぐに帰れないのは好都合かもしれない、普通なら見ることも無い異世界に来ているんだ。観光というか、色々見たい気持ちがあった。

こっちに呼ばれた理由が人違いで、なんだか居づらい雰囲気で見たりするのは難しいかとも思ったが、やむを得ない理由が出来たという事だ。


「大丈夫です、帰れるとわかってるだけでも、気が楽になりましたし」

「そうだ、彰人君は転移水晶が直るまでの間、食客としてここで面倒を見ようと思うのだけど、構わないね?」

「あ、はい!いいんですか?」


食客……といえば漫画や小説で見た、主人公かよくなるやつだ、たぶんタダ飯くらいの居候だけど、お客として扱って貰えるみたいな、居候の上位互換みたいな感じだったと思う。


「」





えーっと、もう1つ先に言っとくべき事があって……」


歯切れが悪くなる俺を見て、王様は察した様に微笑み、「大丈夫ですよ」と言った。

すごいな、今のでわかるのだろうか、俺もそれに答えるように、1度深呼吸してから、なるべく平常心で言った。


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