44、魔王の口封じ。いや、ほんのちょっと考えただけで…してませんよ?
食事をしながら修行の話は続いている。
「娘っ子…修行はどんなことするつもりだ?」
「正直、全然分かりません。私はギルルドさんに教えてもらうつもりだったんですから…。」
「だとさ、ギルルド。」
「む…申し訳ない…です。」
「それはもういいんですけど…修行…修行…か~、私の知ってるのは、私はしたことないですけど…敢えて視界を狭めるとか、重りを着けるとかですかね?」
漫画とかで見るけど、実際にしてる人見たこと無いんだよね…異世界ならいけるかな?
「視界を狭めるとはどのように?」
「重りってぇのはどうすんだ?」
「私も実際にやったこと無いですから、どんな効果があるのか分かりませんけど…
視界の方は片目を敢えて見えないようにしたり、両目を塞いで…目に頼らないで普通に動けるように修行したりするらしいですよ?
重りの方は両手・両足に重りを着けたり、重りを背負ったりして修行してたら外した時に軽く感じる?まあ、普通より速く動けるようになるのかな?」
「ふむ…視界を敢えて奪うことで感覚を研ぎ澄ますのか?」
「重りか…。」
「重りの方は私が用意しますけど、ギルルドさんはニグルさんに頼んで鉄でも銅でもいいんで、キンさんの分も一緒に重い刀を作ってもらってください。」
「何のために用意するんじゃ?」
「私がやったことがあるなら分かるんですけど…どれも私がやったことがないですし、それで本当にいいのかサッパリですよ。」
それでもギルルドから根掘り葉掘り聞かれて…
「あぁぁ~もう!私、こんなの苦手なんですよ!
とりあえず!ギルルドさんは素振り用の重い刀の用意!キンさんの分も一緒に!
気を付けて欲しいことは、重すぎて素振りができない、重過ぎて今までの戦闘スタイルが狂うことにならないように注意してください!以上。」
「う、、うむ。了解したのじゃ。」
「娘っ子…すげぇな…。」
「そうっすよゴルク爺、カノンちゃんは凄いんっす。で、カノンちゃん、その重い刀を使ったらどうなるっすか?」
「え?そうですね…普段重い刀を使うことで、普通の刀を使ったときに軽くなった感じがして剣速が上がる?」
「疑問形なんっすね。」
「それはそうですよ。私したことありませんもん。」
「さて、そろそろお開きにしようかのぅ。」
「そやね。とっしょりが盛り上がったやけどしたね。」
「シグレ、年寄りてぇのは俺らのことか?」
「あんさんたち以外にいてへんでしょ?若い子に喋らせへんでわてたちばっかり、カノンのお嬢ちゃんと話してばかりやったんやから。」
「それは…すまねぇことをした。」
「うちやなくて、スダレ達若い子に謝りよし。」
「ぐ…スダレ、タマ、キルト、ナン、キン。すまなかったな。」
「儂もすまなんだ、修行のことでちょっと浮かれておったわい、すまんかった。」
「別にいいっすよ、修行が楽しみっす♪」
「私もカノンちゃんと話したいときは押し退けて話すからいいよ。」
「私は特にカノンと話すことなどないのじゃ。」
シグレさんよりスダレさんの方がツンデレさんなのかな?
「私も特には…。」
「にゃーはお話したかったですにゃ、にゃーも修行に参加してもいいですかにゃ?」
「それは別にいいけど…私、素人だよ、教えることなんてそんなにないと思うんだけど…。そうだ!村長さん。」
「なにかのぅ?」
「タマちゃんの修行のときにキルトさん貸してください。」
「キルトを?…わしは構わんがのぅ、キルトはどうじゃのぅ?」
「…村長のご命令ならば。」
「キルトさん、それはダメです。村長に言われたから参加するのと自分から参加するのでは、修行の成果が全然違います!…たぶん(ボソ)。」
「だ、そうじゃ、どうする?」
「………私もカノン殿たちの修行には興味がありますし…タマのことも気にはなっていましたから…村長の許可を頂ければ参加したいと思います。」
「ふぁふぁふぁ、そうか、そうか。許可しよう。」
「ありがとうございます。カノン殿もよろしくお願いします。」
「にゃ?キルト兄さまも参加するのかにゃ?カノンちゃん、にゃーもよろしくお願いしますにゃ♪」
なんですかこれ?事案でも発生するんですか?
「あ…はい、よろしくお願いします。」
「話は終わったよね?片付けしよっか。」
「片付けですね、分かりました。」
「カノちゃんは片付けしなくていいニャ。」
「え?いいんですか?」
「いいニャ、カノちゃんは勝者ニャ、カノちゃんの分もゴルクを扱き使うニャ。」
「ちょ、シナロナ、そりゃかねぇだろ。」
「敗者は大人しく片付けを手伝うニャ!」
「クッ…敗者、敗者…言い返せねぇ…。」
「え~っと手伝いますよ?」
「カノンちゃんはいいっすよ、それより家の建造をした方がいいっすよ。」
「そうニャ、最悪もう一晩ぐらいならわーの家に泊めてやるニャ。」
「シナ婆さんそれは狡いっすよ、近くだから自分の家に泊めるっす。」
「あ、ありがとうございます。そうならないように早く家を建てちゃいますね。」
「そうかニャ。」
「そうっすか。」
あれ?なんで落ち込むの?
「ははは、それじゃ片付けしようか。」
「そうなのじゃ、師匠が絡むと碌なことがないのじゃ、その前に片付けるのじゃ。」
「何やいやはったか?スダレ。」
「ナニモイッテナイノジャ、師匠。」
「そうどっか?そんなら行きまひょか。」
「はい…なのじゃ。」
「行くって何処に行くんですか?」
「川だよ、川で洗い物するんだよ。」
「あぁ…川ですか、この量を?やっぱり手伝いましょうか?」
「いや、娘っ子は遠慮してくれ、でねぇとずっと敗者、敗者って言われちまう。」
「わ、分かりました、はい。」
「それじゃあ、行って来るっす。」
「はい、ワイバーンが落ちてましたから気をつけてくださいね。」
「了解っす、気を付けるっす。」
あれ?何か忘れてるような?…忘れてるなら大したことないよね…。
「あっ!キンさんスズは何処ですか?」
「スズちゃんはニャーさんに預かってもらてるっすよ、手合わせで何かあったら困るっすから念のためっす。」
「そうなんですね、あとで引き取りに行けるように小屋も建てなきゃ。」
「大丈夫っす、最悪の場合はカノンちゃんもスズちゃんも自分の家に泊まるっすよ。」
「その時はお願いするかもしれません。」
そうならないように早く家と小屋を建てよう。
「分かったっす、行って来るっす。」
キンは他の皆と川へ向かった。
「キルトさんは一緒に行かないんですか?」
「はい、私は一応かん…護衛も兼ねてますから。」
監視兼護衛ってことかな?なら口止めするか気絶させないと…どっちにしよう…。
「キルト交代ニャ、キルトは皆と川へ行くニャ。」
「しかし、シナロナ様…。」
「村長の許可は貰ってるニャ、早くするニャ。」
「わ、分かりました、お願いします。」
キルトは皆を追って川の方へ向かう。
「どうしたんですか?急に。」
「カノちゃんのことニャ、どうせ創造錬金か別の能力で家を建ててしまうと思ったニャ。
それニャらキルトが邪魔にニャるニャ、キルトに能力のことを話すか別の方法を採るか…ニャらカノちゃんの能力を知ってるわーが変わったほうが後々楽だと思っただけニャ。」
な、なんと⁉ズバリ正解ですよ⁉これで本当に若い頃は脳筋だったの?
「ありがとうございます、助かりました。」
「で、どうするのかニャ?」
「え?どうするって…何がですか?」
「はぁ~カノちゃんはどうやって家を建てるのかニャ?と聞いたつもりだったニャ。」
「シナ婆さんが言った通りですよ、この林の木を素材に家を作ろうと思ってます。」
「どうやって木を切るつもりかニャ?」
「それは木刀で」
「ワイバーンの首を落とした技かニャ?あれは…範囲や距離を指定できるのかニャ?」
「………無理ですね…あぁぁ~どうしよう!」
「そんなことだと思ったニャ、わーが魔法で木を切ってやるニャ。その後のことは知らニャいニャ。」
「切ってもらえれば、空間収納で回収していきますから大丈夫です。ありがとうございます。」
「時空魔法も使えるのかニャ…カノちゃんは人族を辞めますかニャ?」
「辞めませんよ!」
「そ、そうかニャ…まあいいニャ。早速始めるニャ、カノちゃんが能力を見られたくニャいニャら皆が戻ってくるまでにある程度やってしまわニャいといけニャいニャ。」
「そうですね。すいませんお願いします。」
「分かったニャ、何処を切るか教えて欲しいニャ。」
「はい、急ぐのは家とスズたちの小屋とお風呂ですから、ここから直線に………。」
花音はシナ婆さんに切ってもらう範囲を伝える。
「分かったニャ、『風よ、集まるニャ、切るニャ!』」
え⁉スダレさんたちと全然違いますよ!
と、花音が驚いてる間もシナ婆さんは花音が指定した範囲の木を切って行く。
家を建てるまでいけませんでした(´・ω・`)
次に持ち越しです。




