43、勝者の一言。いや、勝者だなんて…いただきます。
花音、ナン、キンはゴルクの様子を見にゴルクが吹っ飛んだ方向へ歩いていた。
「しかしよく飛んだっすね。」
「そうだね、まぁそのお陰で炎の範囲から離れたんだけどね。」
「ゴルクさん怪我してなければいいんですけど…。」
「心配しなくても大丈夫だよ、ゴルク爺は頑丈だから。」
「あっ、居たっすね、あそこっす。」
「運が良かったね、木にぶつかったりはしてないみたいだね。」
「上手く避けて吹っ飛んだっすね、カノンちゃんは狙って飛ばしったっすか?」
「いえ全然、ゴルクさんの運が良かっただけじゃないですか?」
ゴルクに近づき様子を見る、ゴルクは白目を剥いて倒れていた。
「生きてますよ…ね。」
ナンはゴルクに近づき確認をする。
「息はしてるから、大丈夫、生きてるよ。」
「よかったです~。」
キンは収納袋から2本の棒の間に布を張った担架のような物を取り出す。
「ゴルク爺を運ぶっすかね。ナン手伝って欲しいっす。」
「了解~。」
キンとナンはゴルクを布の上に乗せ担架を持ち上げる。
「結構重いねゴルク爺。」
「そうっすね。迷惑っす。」
「私が代わりましょうか?」
「いいっすよ、カノンちゃんは勝者っすから。」
「そうだよ、それにこの件でゴルク爺に貸を作るのも有りだしね。」
ゴルクを運んで戻ってくると昼食の準備が整っていた。
「おぉ、戻って来たのぅ。」
「なんじゃ、ゴルクの奴は気を失ったままか。」
「しょうがあらしまへんね、『水術冷水』」
シグレから冷水がゴルクの顔に浴びせられる。
「……。」
「目覚めまへんね。」
今度はゴルクの鼻を摘み直接口へ冷水を入れる。
「ガフ…ゴホッ、ゲフッ…なにしやがんだ!」
「なんしやがんやとは悲しおすね、起こしてやったんに。」
「そ、そうかぁ?すまねぇ。俺はどうしたんだ?娘っ子に攻撃をしようとしたまでは覚えてるんだが…。」
「…そのあと、お主はカノン殿に突き飛ばされて、吹っ飛んだ挙句に気を失っておったんじゃ。」
「俺の負けか…。」
「そうじゃ、お主の負けじゃ。土下座してもらおうか。」
「それは無しだつぅ話だっただろ!」
「チッ覚えておったか。」
「おめぇなぁ、この娘っ子の強さを知ってただろ!」
「いや、儂もあそこまでとは知らんかったぞ。お主のお陰で儂も1から修行のやり直しをしようと思ったぐらいじゃ。」
「ああ、それは俺もだ…こう言うのを確か…天水桶の孑孑っていうんだろうな。」
「なんと⁉お主…そんな言葉を知っておったのか!」
「あたりめぇだ!って言いたいがなぁ、代表になったときに爺さんから教えてもらった…。俺は、俺より強い奴なんざぁドラゴンか魔人ぐれぇだと思ってたんだが、爺さんが言った通り強い奴はいるもんだな…。」
「そうじゃな…。」
「ゴルクも起きたしの、昼にしようかのぅ。」
「そやね…うち見物料忘れてたんや。ギランすんまへん。」
「別にいい、某も忘れてた。
それで…カノンさん。こっちのワイバーンを村人に振舞うという事ですが本当にいいんですか?」
「別にいいですよ。」
「そうですか…キン、ギルに声をかけておいて欲しい。」
「了解っす。それより早く食べたいっすよ~。」
「そうじゃのぅ、食べる前にカノン殿、勝者から一言頼むのぅ。」
「え?私がですか?普通村長さんの役目じゃないんですか?」
「わしは観客6じゃからの、カノン殿にお願いしたい。」
「ひ、一言…一言…それじゃあ、いただきます。」
「「「「「………。」」」」」
「カノちゃん、いただきますとはなんニャ?」
「え?食べる前に言う言葉ですよ?」
「そうかニャ…勝者としての言葉はニャいのかニャ?」
「ん~…特にありません、あっ、ゴルクさん怪我はありませんか?」
「「「「……。」」」」
「ねぇな、身体強化してたお蔭かもな。」
「よかったです~、お昼食べましょ。」
「…そ、そうじゃのぅ、皆食べよう。」
それぞれが食事を始める。
「いただきます。あ♪この串の肉、これ美味しいですね♪何の肉ですか?」
「それはカノンさんが拾ったワイバーンです。」
「ワイバーンって美味しんですね♡こっちのワイバーンはいつ調理するんですか?」
「こっちはタレに浸けようかと思ってますので、明日の夜ですかね。」
「タレも美味しんですか?」
「ええ、今回は時間がありませんでしたから、簡単に塩を使って焼いただけです。」
「へぇ~、明日も楽しみです♪」
しばらく全員が食事を楽しんでいると…。
「カノン殿、申し訳ない!」
とギルルドが突然花音に土下座で謝罪してきた。
「ふご?もふもぐ……んぐ。」
花音はギルルドの土下座の意味が分らずに、急いで口の中の物を飲み込む…。
「どうしたんですかギルルドさん?突然。」
「弟子の件を反故にして欲しいのじゃ。」
「どうしてっすか!師匠!」
この言葉にキンが一早く反応する。
「キン…すまん、今日のカノン殿戦いを見て、儂が教わることはあっても、カノン殿に教えられることが何もなかったのじゃ…。」
「師匠!…あ~…そうっすか…師匠がそう感じたんならしょうがないっすね、残念っすけど…残念っす。」
「ギルルドさん、私、素人ですよ?なんでそんな結論になったんですか?」
「カノン殿…あれだけゴルクの攻撃を躱し続けられる素人はおらぬよ…ゴルクは村でも3番目に強いのじゃ。」
「ちょっと待て!おめぇ2番目は誰だつぅんだ!」
「無論、儂じゃが?」
「ちょ、おめぇふざ」
「ゴルクさん!少し黙っててください。」
「うぐ…すまねぇ。」
「続きをどうぞ。」
「う、うむ…手合わせを間近で見て、儂がカノン殿に教えられることが何もないと…逆に儂が教えて欲しいぐらいじゃと思うたのじゃ…。」
…これはあれかな?動きが素人でも躱し続けたから、なんか凄い!レベルが違う!みたいに感じたのかな?
(そうかもしれませんが、花音様の動きはご自身が言うほど素人ではありませんでしたよ。)
そうかな?運動なんて体育ぐらいしかしてないよ?
(体育が何かは分かりませんが、素人には見えませんでした。)
そっか、それじゃあ仕方ないのかな?
「はぁ~分かりました。」
「それで、恥を忍んでお願いしたいことがあるのじゃが…。」
「なんですか?」
「まず、箸の件はこの場所に家を建てる許可で教えてもらえんじゃろうか?」
「別にいいですよ、箸はすぐに教え終わると思ってましたから。」
「有り難い。あと…儂を弟子にしてもらえんじゃろうか。」
「師匠!それはダメっす!師匠がカノンちゃんの弟子になったら、自分孫弟子っすよ、それだけは勘弁して欲しいっす!」
「しかしじゃな、教えを乞うなら弟子にならねば」
「ギルルドさん、私、弟子なんて取りませんよ?っていうか弟子をとっても教えられませんからね…それなら折角近くに家を建てるんですから一緒に修行しましょう。」
「カノン殿がそう言われるなら…それでお願いしたい、いや、お願いします。」
「娘っ子…喋ってもいいか?」
「え?…」
ゴルクさん、もしかして黙ってって言ったからず~っと黙っての?悪いことしたかな?
「いいですよ。」
「娘っ子、こいつだけじゃなく俺らとも修行しねぇか?」
「あっ、私も一緒に修行したい。」
「ナンさんも?」
「うん♪」
「あ~…ん~…村長にギルルドさんとキンさんもこの辺りかなり広げてもいいですか?」
「わしはギルルドとキンが構わんのなら問題ないのぅ。」
「儂はかまわんぞ。」
「自分も構わないっすけど、どれぐらい広げるつもりっすか?」
「そうですね…家を建てて、皆で入れるぐらいの大きなお風呂、畑、スズたちの小屋に修行できる体育館…じゃないや武道場を作りたいです。」
「武道場っすか?」
「はい、頑丈で結構大き目のやつを…3人ならまだしもナンさんやゴルクさんも…
…ゴルクさん、俺らって言ってましたけど、何人ぐらいですか?」
「そうだな…欲を言えば狩りに出る全員っていいてぇが、それはよくねぇだろうから…俺を含めて4・5人ってとこだな。」
「なら…10人かな?その倍を想定して…昨日の会議に使った建物の12倍ぐらいのを作りたいですね。」
「そ、そんなに大きい建物っすか⁉」
「大は小を兼ねるという言葉もあります、大きい方が色々なことに使えるかもしれませんしね。例えば…避難所とか?」
「そうっすか、大小兼ねっすか…手伝うことはあるっすか?」
「まだ、こんなのを作ろうかな?って思ってる段階なんで、特にないです。何かあればそのときお願いします。」
「了解っす。遠慮なく言って欲しいっす。」
そんな話をしながら昼食は続く。
お待たせしましたm(__)m
え?待ってない?ですよね~…ということで45話か46話から説明回と言う名の
ナビちゃん回に入れると思います、長かった…。




