178、熱湯。
話し合いが一応終了したので、それぞれが武道場から出て来る。
エレンシアはまだ目覚めてないので、ラクネアが付き添っている。
「スリーピーさんすまニャかったニャ。」
「ん?」
「折角集まってもらったのに、出番がニャかったニャ…。」
「大…丈夫…。みんな、マスターの為、喜んで…る。」
「そうかニャ?ニャら良かったニャ。」
「ん。」
「さて、私はエレンシアさんが目覚めるのを待ちながらお風呂の準備してきます。」
「ニャ⁉お風呂ニャ♪」
「お風呂っすね♪後でナンとスダレに声かけて来るっす♪」
花音はみんなのそう告げてお風呂場へと向かう。
「わーたちはニグルの所に行くニャ。それからお風呂ニャン♪あ、ハルちゃん助かったニャ。」
「…特に何も起こらなかったみたいだナ。」
「どうかしたのかニャ?」
「いや…なんでもないナよ。」
「ハルサメはスリーピー殿の分体に結界をあっさり壊されて落ち込んでおるだけじゃ。」
「ニャ⁉それは悪かったニャ。ちゃんと対策と時期を伝えおくべきだったニャ。」
「いや、本当に良いんだナ。ただ分体でも魔王ということを再確認させられただけナ。
そして魔王の強さを改めて思い知らされただけナ…。
…自分でも気づかないうちにこの村の中だけで、わては満足してしまってたようだナ。
カノちゃんの、スリーピーさんのお陰で、上を目指す切っ掛けになったナ。」
「ハルサメはそれ以上強くなる気なのか⁉」
「当然ナ!」
「そうかニャ、わーはニグルに武器を頼みに行って来るニャ。」
「シナちゃんが武器⁉」
「わーのも一応用意してもらうつもりだがニャ。タマたちにギルルドやキンのやつみたいニャのを頼もうと思ってるニャよ。」
「この木刀のことっすか?これ良いっすよ♪普段の武器に戻したら剣速が上がってたっす。ただ…しばらくしたら分からなくなったすけどね…。」
「そうニャのかニャ?まあ試してみニャいと分からニャいからニャ。」
そう言ってシナ婆さんはキルト、クルト、カルトとタマを引き連れてニグルの下へと向う。
一方…。
花音はお風呂の準備を始める。
さて、お風呂はさっき作った貯水タンクを試してみよう。
「タラッタッタッタ♪チャラッチャッチャン♪先ず貯水タンクに水を張ります。
はい♪溢れました…ダメじゃん…。」
(花音様、無理されてませんか?)
ナビちゃん…無理はしてないんだけどね…。
(そうですか?)
うん。オルトさんの件は回答待ちになってるけど、準備は進めないとだからね。
あっちをどうにかしないとオルトさん救出もだけど、今後の問題にもなりそうなんだよね…。
(あっち?他にも何かあるんですか?)
…忌避感のこと。
(ああ…。)
今後のこともそうなんだけど、私としては、他の獣人の人も捕まってるんなら、協力して全員救出ってのが理想になるから…。
(そうですね。何かの目標に向かって協力が可能であれば、打ち解けるのも早くなるとは思います。)
だよね~。
「良し!そうと決まれば、頑張りますか!次は貯水タンクの水をお湯にします。」
花音はそう言って火の玉を作り出し、貯水タンクの中に放り込むと…
ボフォーン!っと貯水タンクの中で爆発が起こる。
「あ…。熱!熱!熱!」
貯水タンクはあの爆発にも耐え、壊れているところはなかったが、爆発によって、貯水タンクの中の熱湯は噴水のように吹き出し、周囲に撒き散らされ、人が花音以外に居なかったことが幸いして、被害はほぼゼロであった。
「お師さん!何事ですか!」
「カノンちゃん!面白いことしったっすね!」
「あの音の何処が面白いというんじゃ!バカ弟子!」
「それで何があったのか…ナ⁉カノちゃん…その煙はなんナ?」
「煙?ああ、湯気ですよ、これ。」
「え?湯気っすか?」
キンが貯水タンクの中を覗くとボコッ、ボコボコッと沸騰していた。
「熱!熱いっすよこの湯気!それにこれぐつぐつ沸き立ってっるっすね。ダンジョンの11階層みたいっすね。」
「お湯なんですけどね…ちょっと湯加減間違えました。水も半分近く減ってしまいました。」
「これは…ちょっとって感じではないと思うがナ。」
「確認して見ますか?湯加減。」
「自分は遠慮するっす。でも師匠が確認するっす♪」
「な、なんじゃと!儂を殺す気か!」
「そうじゃないっすよ。師匠はカノンちゃんの弟子っすから譲ったんっす♪」
「ぬぅ…弟子…そうじゃな…って、ちょっと待て、儂がカノン殿弟子なら…カノン殿、不肖の孫弟子が確認すると言っておる。」
「ちょ!師匠⁉」
「何を慌てておる?孫弟子なのじゃから、師匠として譲ってやったんじゃ。」
「むっ、何っすか!その取って付けたような言い分は!」
「お主が先に言い出したんじゃろうが!」
「あははは♪冗談ですよ。ハルサメさんお願いします。」
「わてかナ⁉」
「あ、お願したのは湯加減の確認じゃなくて、水魔…術で湯加減の調整して欲しいんです。」
「ほっ…そっちかナ、カノちゃんは……まだ威力調整が出来てないのかナ…。」
「残念ながら…ハルサメさんに教えてもらって、最初よりは威力の調整は出来るようになってますけど、まだ、この大きさだと難しいみたいです。」
「この大きさって…これも結構な大きさなんだがナ…まあいいナ。ん~『豪散水』」
ハルサメ『豪散水』というと水が勢いよく貯水タンクの中に注がれていく。
「カノちゃん。これはちょっとやそっと水を加えたぐらいじゃ無理みたいナよ?」
水を加えていてもまだ貯水タンクの水はボコ、ボコボコッと煮立ったままである。
「みたいですね…貯水タンクのは今回諦めて直接お風呂にお湯を張ることにしましょう。」
「それが良いナ。キン。」
「何っすか?」
「悪いがナ。スダレとシグレを呼んで来て欲しいナ。」
「スダレは大丈夫だと思うんすけどね…シグレさんが問題っすかね?」
「わてが呼んでると言えばいいナ。」
「それなら大丈夫っすか…ね?ちょっと行って来るっす。ついでにナンも呼んで来るっす。」
「それならナンの方は某が行ってきます。」
「そうっすか?それならヨギリん、頼むっす。」
そう言って2人は貯水タンクの上から飛び降りて走って行く。
「梯子の必要が無かったね…。」
「梯子?この高さなら赤ん坊でもなければ大体の者が飛び降りれるナよ?」
「そうですね、武道場の観客席2階に行くのも梯子を必要としてませんでしたからね。」
「何かわて、変なこと言ったかナ?」
「いえ、私の常識とは違うんだな~って思っただけです。」
「カノちゃんが常識とナ⁉」
「カノン殿が常識じゃと⁉」
「何ですかその反応は!」
「いや、だって…ナ…。カノちゃんのお陰で、こちらの常識が壊されるからナ…。
そのカノちゃんが常識っていうとナ…。」
「そうじゃな…。」
「酷いです…って、エレンシアさんが目覚めたみたいですね、ちょっと行ってきます。」
「分かったナ。」
花音は武道場の方へと戻って行く。
「カノちゃんの常識かナ…。」
「聞くのが怖くなるの…さて、儂は川にでも行って来るか。」
「ん?ギルルドは風呂に入らないのかナ?」
「このお風呂というのは男は入ることが出来んそうじゃ。」
「そうなのかナ?男が入れないとは変わってるナ。」
「いや、キンが言うには、まだ男はダメだとカノン殿が言ってたそうじゃがな。」
「まだ…どうして、まだなのかナ?」
「そこは儂にも分からん。」
「カノちゃんに後で聞いてみるかナ。」
「そちらの方が儂に聞くよりもよかろう。ではな。」
「そうナね。顔とか首とか真っ黒になってるからナ。良く洗うんだナよ~。」
「分かっておる!」
因みにキンはスダレたちを呼びに行って、トウガとスダレに真っ黒な顔を笑われ、シグレは笑いを堪えることとなり、シグレの文句回避に役立ったそうである。
Gotoトラブルキャンペーン開始しましたね…。
うん。トラベルではなくトラブル…
(山田君、座布団全部持ってって)は~い♪




