177、お話し合い終了?
「誰も私の身の心配はしてくれないんですね…。」
「ニャ⁉も、勿論してるニャ…よ?」
「ですですです。」
慌ててシナ婆さんとラクネアは言い返すが、その中で…。
「私は別のことを心配してます。」
「ん?キルトさんは他って、何が心配なんですか?」
「キンとカルト、それにヨギリが付いて行こうとするのではないかと…。」
「ああ…。」
「当然付いて行きますわ♪」
「いやいやいやカルト、それはカノンさんにとってとても迷惑な事だからな?」
「そんなことありませんわ!…ありませんわよね?」
…そこでどう答えろと?
「人族の街に俺達尻尾付が付いて行くことが迷惑になる可能性の方が高いと言ってるんだ。」
「…返す言葉がありませんわね。」
「シナ婆さんはどう思いますか?」
「わーかニャ?」
「はい。後でギルルドさんとゴルクさんにも聞いてみますけど…。」
「あの2人では参考にはならんじゃろうな。」
村長の言葉にその場の花音とラクネア以外が賛同して頷く。
「皆さん納得の一言ですか…。」
「納得と言うかニャ…。」
「あの2人は旅に出ましたが、人族の街や村には寄り付かなかったようですね…話を聞く限りではありますが。」
「ゴルク様とギルルド様は意思疎通の最初が肉体言語ですからね…意思疎通する前に相手が気を失ってると思います。最悪…。」
「でも、ギルルドさんはちゃんと意思疎通で来てたんでしょ?武士に成る為に…。」
「あれはニャ…その島だけの話みたいだニャ。他の大陸ではダメだったみたいニャよ?
島で多少強くなったギルルドの肉体言語に耐えれる人族には会ってニャいみたいだニャ。
2人共、目的が強くなるためだけの旅だったからニャ…。」
「見聞を広める為じゃないから最初に拳ですか…何て迷惑な。」
「わーにしても、目的は見聞を広げめる為じゃニャかったからニャ、それでも目的の為に我慢して意思疎通を試みたニャ。
ほとんどぶっ飛ばした形にニャったがニャ…。」
あ、シナ婆さんも同類でした…。
「だがニャ…ん~…カノちゃん同行で村の外、人族の街や村へ行くことは付いて行く者たちにとっては安全ニャ旅にニャるんだがニャ、カノちゃんにとっては面倒事が更に増えることにニャるだけだと…わーは思うニャよ?尻尾付であるということは当然として、実力的にもニャ。」
「そうですか…それなら期限を決めて、その間でシナ婆さん、ギルルドさん、ゴルクさんが認めたらってことで―――」
「それやると、ギルルドとゴルクが付いて行くって言い出しそうだニャ。」
「そうじゃのぅ。あやつらは言い出しそうじゃな。」
「言い出しそうですわね。」
「ラクネアさんの配下についてもらうのはどうですか?」
「うちのです?……護衛として主が考えてるならそれは止めておいた方が良いですです。」
「そうですか?」
「護衛としてならそれなりの大きさになってしまうですです。その大きさのモンスターが一緒だと更に大騒ぎになってしまうですです。」
「ああ、そっか。モンスターなんでしたね…ラクネアさんは。」
「ですです。」
「この村で村の外に出ても良いのは、ハルちゃんぐらいかニャ?それ以外とニャると…わーはこれでも代表だしニャ、それにもう歳ニャ。
ゴルクも同じ代表ニャんだがニャ…ゴルクは代表を譲って付いて行きそうだニャ。
ギルルドは……カノちゃんの目的には邪魔にニャるだけだニャ。」
「ギルルドさんはって、ゴルクさんは邪魔にならないんですか?」
「ゴルクもギルルドと大差ニャいがニャ、ゴルクは代表をやり出して、待てが出来るようにニャったからニャ、ギルルドよりはマシって程度ニャ。」
「待てって…お代わりとかもしそうですね。」
「ん?それはいつもやってるニャよ?」
「いや、そういう…いえ、気にしないでください。」
「そうかニャ?」
「それならキンたん達が付いて来ると言い出した場合は、ゴルクさんにギルルドさんを倒せたらって条件にしときますか。」
「それが無難だニャ。」
「さて今後どうするかは各自で考え結論を出すということで、今回は終わりにしようかのぅ…。」
「そうだニャ。オルトの件は今直ぐにとはどうしても行かニャいからニャ。」
「そうですね。師匠のことは弟子の我々だけでどうにかしたかったのが本音ではありますが…。」
「無理なものは無理。ということだな…俺たちの手でってことなら強くなるしかない。」
「私はカノン様の雄姿を見られないことが残念ですわ。」
「私の雄姿って…。」
「カルトも口ではああ軽口を言ってるがニャ、気持ちはキルトやクルトと同じニャんだニャ♪」
「っ…。」
「にゃ~は助け出しますにゃ。あの時あの人が来てくれてなかったら、にゃ~は今、ここには居ませんでしたにゃ。キンお姉様やナンお姉さま、スダレお姉様、キルト兄様にシナお婆ちゃんに出会うことも出来ずに…。」
「………。」
「………。」
「なによりカノンちゃんに出会うことが出来ませんでしたからにゃ。この恩は自分の手で返したいと思いますにゃ。」
「そうですか…タマにゃんの気持ちが固まってるなら、私の方はそれを視野に入れて動くとしましょうか。」
「それでは解散じゃの。」
みんなが村長の言葉に腰を浮かせそうになった時に…
「あの話は良いんですです?」
「あのって何ですか?」
「被害状況ですです。」
「被害状況?被害状況って何のです?」
「カンダチがカノちゃんに後で伝えると言ってたやつニャ。」
「………ああ、村長さんが後で私に伝えるって言ってたやつですか?え⁉被害状況聞かされるんですか⁉」
ラクネアとシナ婆さんの言葉に花音は驚きながらも浮かせた腰を落とし、座り直す。
「…村長さん?」
「無理じゃったか…寄りにも由ってラクネア殿の発言では文句も一つも言えんしのぅ…。」
ぶつぶつと村長は座り直しながら聴こえないように愚痴を呟く。
「カンダチ、諦めるニャよ。」
「う、うむ…すぅ~はぁ~、すぅ~はぁ~…カノン殿。」
「はい。」
「カノン殿がわしの所にスリーピー殿を連れて来たあとのことなのじゃが…。」
「はい。あの後ですね。あの後………って、もしかして!」
「うむ。気付いたかもしれんが、カノン殿がオルトの件で怒ってくれたことには感謝する。するが………それが原因で起こった被害を報告させてもらう。」
「………はい。それは私が聞いて受け止めなければならないものですね。どうぞ。」
「では、失神45名、恐慌状態15名、弱恐慌状態17名、恍惚状態1名、爆睡1名となっておる。」
「そんなに………って!子供たちは!子供の被害はどうなんですか!」
「うむ。運が良いと言ってもいいのかのぅ…失神の方に含まれておるの。一瞬で堕ちたそうでのぅ、目覚めは爽快、体に異常もなく、特に問題いそうじゃ。」
「それならよか…良くはないですけど、救われます。すいませんでした。ご迷惑をおかけしました。」
「その謝罪を村の代表として受け入れよう。」
「ありがとうございます。」
「ところで…その被害状況の恍惚と爆睡ってなんですです?」
私もそれ気になったけど、聞き難かったんだよね…。
「恍惚はのぅ…。」
「ああ…それはなんとなく視線で分かったですです。そこのカルトです?」
「正解だニャ。」
「ということは爆睡は殺戮…ハルサメです?」
「残念じゃがそれは不正解じゃのぅ、ハルさんはこの被害状況の中に含まれておらんの。」
「え?じゃあこの爆睡って…。」
「セーだニャ。」
「ああ…セーちゃんか…なんか納得です。」
「あの状況で爆睡するとは…セーは大物だな。」
「あの子たちの中で一番肝が据わってますわね。」
「それ、ちょっと違う気がするんだが?」
セーの爆睡のお陰で、その場の雰囲気が少し和らぎ、その隙にと…。
「それでは解散じゃな?解散で良いの?」
「良いんじゃないかニャ?」
「ふぅ~肩の荷が下りたのぅ…。」
「何もそこまで気を使ってくれなくても…。」
「そうは言うがの、カノン殿が来て数日でこの村に、特にシナ婆さんや猿人族と他の種族間の問題とか、儂が気を配ってっても何も出来なかった問題が解決されてきておるのじゃ。」
「気を配ってたのかニャ?」
「勿論じゃ。とは言え…何も出来んかったがのぅ…。」
「そうかニャ…わーはカノちゃんが来るまでそんニャ周囲のことにも気付けニャかったのかニャ…カンダチ、すまニャかったニャ。そしてありがとうニャ。」
「村長、尻尾が…。」
「どうしてそこで尻尾を逆立てるのニャ?」
「いや、シナ婆さんから礼を言われると、何処かむず痒くなってしまってのぅ。他意はないのじゃ、他意はのぅ。決して悪寒が走った訳ではないぞ?」
「わーだってお礼の一つや二う言うニャよ!」
「そうだったかのぅ…歳の所為で記憶に無いんじゃがのぅ…。」
「失礼ニャ!」




