174、弟子と孫弟子。
かなり時間が空きましたが投稿再開です。
すいませんでした。
「………ステテコになちゃいましたね。」
「これも斬るっすか?」
「そうですね、ちょっと斬ってみてください。」
「了解っす。」
マネキンにステテコを履かせて、キンがそれを斬ると―――
キーンっという音と共にキンの剣が弾かれてしまう。
「…これは凄いっすね。」
「ふむ、儂の刀でも無理じゃろうな。」
「ラクネアの危惧がよく分かったナ。これは常識外過ぎるナ。」
「見た目は普通の厚手の布ですからね…。」
「もう、これをパンツに作り変えて、ミスリル繊維を少なめで行きましょうか?」
「それでもう一度やってみるナよ。」
花音はステテコをパンツに作り変えて、再度マネキンに履かせる。
「お願いします。」
キンは再度斬るが、今度は弾かれはしなかったが、キンの剣は途中で止まり、パンツも斬られて破れてる所はあるが、マネキンに傷は付いていない。
「これなら問題ないですかね?」
「そうだナ………遠目からな問題なさそうだナ。」
「それじゃあパンツはこれで。あとは装備一式ですね。」
そう告げて、花音はエレンシアの装備を一式作り、マネキンに身に付ける。
「おぉぉ~。」
「………。」
「ふむ…。」
「………。」
「なんか禍々しいっすね。」
「エレンシアさんは一応魔王を自称してますからね、それっぽく装備には鬼を意識して見たんですけど…。」
「それでもこれは…どうかと思うのじゃが…。」
「カッコ怖い感じで自分は良いと思うんっすけど?師匠は気に入らなかったっすか?」
「いや、男ならばこれでも良いと思うのじゃが…エレンシア殿は女性じゃからな…。キンはこれで良いのか?」
「恰好良いと思うんっすけどね?ハル婆さんとヨギリんはどうっすか?」
「わては問題ないと思うがナ。」
「そうですね…お師さんが用意してくれたものなら否はありませんが、某が着るってことなら、出来れば…。」
「ヨギリンにも似合いそうっすけど?」
「いえ、似合う、似合わないの問題じゃなくて、なんか、こ~う…強そうじゃないですか、この装備。
それを私がってことに抵抗があるんです。」
「ああ………。」
「偶に居るな。特に人族連中の中には見掛け倒しの奴が。」
「まあそうですね、ギルルド様の仰る通りかと…。」
「いや、ヨギリん。装備するのはヨギリんじゃなくて、エレンシアさんだからね?
ヨギリんには鉢金と手甲とかを用意するから、大丈夫♪」
「お師さんの言ってることが分かりませんが、エレンシア様であるなら…これで大丈夫だと思います。」
「ふむ…ハルサメは兎も角、ヨギリも問題ないとはの………儂の気にし過ぎじゃったか?」
その後、キンが装備を斬ってみて、傷は付くから問題なしと、ハルサメの許可も出たので装備作りは一段落。
「あとはエレンシアさんとラクネアさんの意見を聞くだけですね…。
ラクネアさんから連絡がまだ来ませんから、手合わせしましょうか。」
「カノンちゃんがっすか⁉」
「おぉぉ…喜んでお相手させて頂きます♪」
「ああ、私自身じゃなくて、分体でお相手します。」
「分体っすか?」
「そうです。私の練習も兼ねてってところですね。」
「残念っすけど、それでも良いっすよ♪」
「それでは。」と、花音は分体を2体創り出す。
「結構しんどい…………。」
「当たり前ナ!わてらは1体も出せないのを2体も………魔力が枯渇しないのが不思議なくらいナよ!」
「それでは―――。」
っと、花音は分体を動かそうと試みるが…動き出した花音の分体は2体とも器用に右手、右足を同時に動かしたり、ガックンガックンと動き、移動する。
「操作が難しいですね。」
「当然だナ、幻影ではなく分体だからナ。」
「スリーピーさんが分体をポンポン増やしてるから出来ると思ったんですけどね……。」
「それ、コアも分れてる。」
「へ?」
「ほぅ、コアも分れてるから、カノちゃんみたいに操作せずに済んでいるということかナ?」
「そっ。」
「それなら私のコアも………ってコアなんてないよ?」
「それは種族の違いだからナ、さすがのカノちゃんでも無理ナよ。
1体から始めて、慣れてくれば増やせるようになるんじゃないかナ?」
アニメの分身の術の様にはいかないっか…残念。
花音は今回分体を使うのを諦めることにして、キンとギルルドの相手をすることとなり、キンたちの方も1人ずつ相手してもらうことにする。
花音は2人同時に相手にするつもりだったが、この師弟は師弟で連携がとれないので、1対1の方がまだマシという結論に達しただけである。
「って!何っすかその動き!」
「マ〇リッ〇スです。」
「普通そんな動き出来ないっすよ!」
「はい、文句言ってないで避けてくださいね。」
という花音の言葉にキンは反応できずに首に黒い線が引かれる。
「くっ、首を刎ねられたっす。」
「情けない。」
「次は師匠の番っすよ。自分より黒いくせに何が情けないっすか。」
「むっ…………。」
キンは首と右腕に黒い線が、ギルルドは首、両腕、それに右肩から斜めに下に黒い線が引かれている。
この線は墨汁で、花音考案の筆剣によるものである。
筆剣は墨汁が飛び散らないようになっていて、これに斬られると斬られた部分に黒い線が引かれる。
難点は何故か墨汁が落ち難い点と同じ所だと分かり難いところである。
キンは後でお風呂に、ギルルドは川へ行くことになる…。
「ぷぷ、師匠真っ二つっす。」
「むっ…ここまで差があるとは、師匠を断って正解じゃった。」
「キンたんもギルルドさんのこと笑えませんよ?キンたんの剣速はギルルドさんより遅いんですから、それに私の攻撃を勘で避けてますよね?」
「ギクっす。」
「それが悪いとは言いませんけど、勘にばかり頼ってると…ちょっと本気で行きましょうか。」
「本気っすか⁉」
「本気と言うか、エレンシアさんの真似をしてみます。」
「エレンシアさんっすか?」
そういって対峙して、今まで受けからの反撃だった花音だったが、今回は花音の方から攻撃を仕掛ける。
花音からの不意の攻撃をキンが勘で避けた瞬間、筆剣の軌道が急に変化してキンは胴に横線が引かれる。
「やられたっす。これ…エレンシアさんの技っすね、カノンちゃんはあの技を使えたんっすね。」
「同じかどうかは分かりませんけどね。」
「種明かしをしてもらえるのかの?」
「種明かしって程の事もないですよ。
キンたん。さっき軌道が変わった辺りを触ってみてください。」
「ん?ここっすか……⁉…なんか見えない壁みたいなものが有るっすよ⁈」
「そこにぶつけて軌道を変えたんです。だから勘だけに頼ると、さっきみたいに斬られます。」
「これ、自分たちには無理っすね。魔力で作った壁だと思うんっすけど、自分たちだと魔力が足りなくなるっすね。」
「ふむ、そうじゃな。それに儂の刀では出来たとしても峰打ちになってしまうの…。」
「そこはやりようですけどね。さて、その木刀だけだと実感が湧かないでしょうから、次は普段の武器で行きましょうか。」
「やっふー♪これ少し重かったんすよね。自分からで良いっすか?」
「構わん。」
「それじゃあ行くっすよー。」
キンが花音に攻撃を仕掛ける…………。
「何っすか⁉ちょっと剣速が上がってるっすよ⁉
………って、それでも捉えられないんっすけど、しょんぼりっす。」
キンの体に斜めの黒い線が引かれる。
「次は儂じゃな。」
「抜刀ですか……まあいいです。」
無造作に近づいて来る花音に一閃―――。
花音はギルルドの剣の間合いから瞬時に退避する。
「なっー!」
ギルルドの剣を躱して、すぐ間合いを詰めて、すれ違いざまに再度ギルルドの首に黒い線が引かれる。
「ぷっ、躱されてるっす。」
「うるさい!が、確かに普段より速くなっておるな…。」
「実感―――ラクネアさんから連絡ですね、それじゃあ私は行きます。」
「ありがとうございました。」
「ありがとうございましたっす。」
「あ、そうですね。ありがとうございました。」
花音は2人に礼を言ってから武道場へと向かう。
「凄い戦いだったナ。実力差があり過ぎて、ギルルドが子供みたいだったナ。」
「そんなにか…。」
「そんなにだナ。さて、わての仕事はここからだナ。」
「ん?ハル婆さんはこれから仕事っすか?」
「そうナ、シナちゃんに頼まれたからナ。」
「何をっすか?」
「カノちゃんの怒気が洩れても、村に影響が出ないように結界を張るナよ。」
「ハル婆さんの結界だけで大丈夫なんっすか?」
「心外だがナ!でも、カノちゃんだからナ…シナちゃんも何か考えはあるみたいだったがナ。」
「そうっすか。」
「キン、もう少しあの木刀でやるか?」
「そうっすね。カノンちゃんのお話が終わるまで付き合うっす。」
キンとギルルドは訓練を再開して、ハルサメは結界を張る準備を始める。
「某だけすることないです…スズたちの世話でもしようっかな?………。」
前回の閑話は後で手直しします。
明日中には修正したいと思ってます。




