閑話 フロイント。
「あれ?ここは…。」
(花音様、迷い込んだようです。)
迷い込んだ?何処に?
(夢と狭間の世界です。)
夢と狭間?夢と狭間の世界ね…。
で?何かあるの?
(さあ?ここでのことは夢、幻のようなものですから…。)
ふ~ん…。
と、花音は霞のような靄のかかった空間をあてどなく進んで行く。
「あれ?ノン?………やっぱりノンだ♪」
「え?忍びん?………なんで?」
ナビちゃん!なんで忍びんがここに居るの⁉
(分かりません。ここは狭間の世界ですから、可能性としては繋がったということではありませんか?)
繋がった…。
「ノ~ン♪」
考えても分からないよね。
「忍び~ん。」
駆け寄る両者、感動の再会…。
「とりゃ!」
「ちょ⁉え?わっ!タップ!タップです!」
それは一瞬の攻防。
駆け寄った忍は花音に脇固めをしようとして、慌てて花音はこれを逃れようとして前転。
からの~キドクラッチ!
花音は忍にホールドされ、痛くはないが、恥ずかしい体勢なので、忍の体をタップです!と言いながら叩く。
「あははは♪ノンも相変わらずだね♪」
「相変わらずって…。」
「ぐひっ、ノ…ン…うわぁぁぁん!何で!何で死んじゃったの!」
「忍びん…。」
「うっ、ぐしゅ、あ、あんな間抜けな―――。」
「間抜けは余計です!」
「実際、こちらの身にもなって欲しい。朝のホームルームでノンの死を聞かされて泣いて、葬儀でノンの最後を聞いて、また泣くことになったぞ。」
「そこは笑ってくれた方が…。」
「笑えるか!」
「って、静のんも来てたんだ…。」
「夢とは言え、ノンが元気そうで良かった…。」
「うん。元気にしてる。そっちはどう?」
「暇してる。だから忍もノンを見てはしゃいだんだろうな。」
「暇なの?」
「ああ、ノンが居なくなっただけなんだがな…世界が、周囲がガラッと一変した。」
「そっか…。」
花音はそう呟きながら抱き着いて泣きじゃくる忍の頭を撫で続ける。
「お父さんとお母さん、弟の様子は知ってる?」
「ノンの家族か…葬儀で見かけただけだが、母親の方はしっかりしたもんだったが、父親の方は抜け殻だったな。弟の方は見てない。」
「そっか…お母さんはそうだろうね…。」
「母は強し、だな。涙一つ見せなかったぞ。」
「それはそれでショックなんですけど⁉」
「はっはっは、気にするな。」
「気にするよ!」
「………このやり取りを懐かしいと感じるほど、月日は経ってないはずなんだがな…。ぐす。」
「…静のん。」
「そういえば、ノンは妹も居たのか?」
「妹?うんにゃ、弟しか居ないよ?どうして?」
「いや、お姉様ー!って大声で泣いてた娘が居たからな…。」
「ああ、近所の子だね、色々あって私のことをお姉様って呼ぶようになっちゃったんだよね…。」
「そうか、ノンのことだから色々とは本当に色々あったんだろうな。」
「…はい。色々ありました…………。」
「表情が抜け落ちてるぞ?ほら、忍。泣いてばかりじゃなくて、何かノンに言うことは無いのか?」
「ぐす、いふころ?…ニョン…わらしね…。」
「うん。」
「みゅねがおおぎきゅなっら。」
「はい?静のん、忍びん何て言ったの?」
「ああ、たぶん。胸が大きくなったって言ったんだろうな。」
「な、ななななな、なんですとー!」
「貧乳同盟解散だな。」
「ぐっ…友達としては喜んであげるべきところ…ぐぬぬぬぅ………うん。おめ―――。」
「3ミリ程だがな。」
「へ?え?さん…ミリ?」
「ああ、身体測定の結果だがな。」
「な~んだ、大きくなった言ったから驚いちゃった、忍んおめ~♪」
「ありゅがちょう。ニョンにちゅたへらべてよがった~!」
「静のん、通訳プリ。」
「私は忍の通訳じゃないんだがな。まあ、ノンに伝えられて嬉しいってところだろ。」
「ああ……うん。時間がどれぐらいあるのか分からないけど…夢が覚めるまでお話しよっか♪」
「うん。」
「そうだな。」
「2人は彼氏できた?」
「…………。」
「…………。」
「あれ?聞いちゃマズかった?って、忍びんの顔が…。」
「気にするな。もう1人の忍がモテ期で嫉妬してるだけだ。」
「へ~そうなんだ。モテ期なの?」
「モテ期とは違う気がするがな…あれは発情期だ。」
「発情期?忍が?」
「いや、「男子共」がだな。視線が露骨なのに気付かないとでも思ってるのかね…。」
「忍のやつ、ちょっと男子が自分に集まるからって、調子に乗ってるんだよ?
ちょっと胸が大だけなのに!」
「む…ね…。」
「そう!胸!」
「胸なんて脂肪です!発情男子には分からんのです!」
「そうだ!そうだ!」
「今度キンたんの胸を捥ぎ取ります!」
「そうだ!やってしま……きんたんって?」
「ああ、それはね―――。」
こうして3人は夢で再会を喜び、しばしの間、取り留めのない歓談する…。
少し追加加筆してますが、そんなに内容は変わってません。




