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私、魔王になりました(;´・ω・)  作者: 華丸chan
第三章
170/183

168、強制退去。ぶぶ漬けいかがどすか?



花音はグリズたちを見送ったが、未だ武道場から出て行かない、出ていけない村人たちが半数も居る。

狐人が多く、次に猫人と犬人で、最も少ないのは猿人である。

猿人族は代表のゴルクが出て行ったこともあるが、体を動かさないと落ち着かないと、早々に出て行く者が多かった為である。



「まだ残ってる人…多いですね。」


「そうじゃのぅ。しかし驚きじゃな。熊人族がわしらに忌避感を抱いてなかったとはのぅ…。」


「熊人族は問題ないみたいですね…全員がそうなのかまでは分かりませんけど。」


「カノちゃんが来るまでわーたちは知らニャかったがニャ。」


「知ろうともせんかったがのぅ…いや、知ることが怖かったと言うべきかの?

この森全種族がわしらを忌避していると…わしらは孤立していると、知ることが、知ってしまうことが、確定してしまうことが怖かったんじゃからのぅ…。」


「それは仕方ありませんよ…。」


「そうじゃのぅ、この森の熊人族だけが例外という可能性もあるからのぅ…。」

「そうだニャ…。」


「この話はここまでにして、残ってるのは…狐人が多いですね。」


「すまないナ。エレンシアの魔法は狐人族の根底を否定するものだったからナ。

心の整理に時間がかかってるんだろうナ。」


「そうどすなぁ、もうちょい待ってくれへんかな?いよいよになったら、うちが追い出します。」


「分かりました、その時はお願いします。」




「カノンさん。今日はありがとうございました。」


「別にお礼を言われるようなことはしてませんよ。」


「いえ、私やナンとギラルにしても良い刺激になりました。

この狭い村と森の中だけでは決して知ることの出来ないものです。

この村の中だけで強い弱いと騒いでいたゴルクとギルルドが大人しかったことで、それは証明されてますよ。」


「あれ、大人しかったんですか⁈」


「ええ、エレンシアさんがあそこまで強くなければ騒いでますよ。「自分の方がー!」などと言い出すでしょうね。」


「ああ…なんとなく想像出来ます。そしてエレンシアさんに挑むんですね…。」


「ははは♪そんな感じでしょうね。」


「ギランさんならどう戦いますか?」


「私ですか?……最初に降伏します。」

「え?」


「勝てませんから。」

「勝てませんか?」


「ええ、勝てません。最初に見たときから勝てないことは分かってましたから、大人しく「参った。」というでしょうね。」


「それでも戦わないといけない―――。」

「ギランも年を取って丸くなったナ。驚きナよ。」

「そうニャね。わーがこの村に戻って来た時は今と変わらニャかったからニャ、驚きだったニャ。

まあ、わーはそこまで関わる気もニャかったんだがニャ。」


「わてがこの村に居たときは元気だったナよ?」


「元気って、今は元気じゃないんですか?」


「カノちゃん。ハルちゃんの元気は体調とか、そういう意味じゃニャいニャよ。」


「そうなんですか?」


「ハルちゃんの元気は血の気が多いとか喧嘩っ早いとか…ゴルクやギルルドのようニャそういう意味ニャ。」


「そうなんですか⁉ゴルクさんやギルルドさんと同じ…今のギランさんから想像できませんね。」


「ははは、お恥ずかしい……若い頃の話です。忘れてください。」


「ギランが丸くなったのは先代の村長と話した後じゃったからのぅ、ずいぶん昔の話じゃの。」


「そうですね……シナロナが旅立って、ハルサメが村から離れて、ナルが飛び出していった頃ですね…。」



「ナル?って誰ですか?」

「ナル…そういえば居たニャ。わーが旅に出る前にこの村に捨てられた犬人の赤ちゃんが…。」

「居たナ。まあ、わては少しシグレから聞いてるがナ。」



「ナルはナンの前に私が育ててた弟子です。」


「師匠!そのナルさんのこと初耳なんですけど⁉」


「あの頃の私はギルルドに近かったですからね…その頃の話は恥ずかしくて、聞かせられませんよ。」


「ギルルドより酷かった気がするニャ?」

「ミスリルナイフみたいだったナよ?」

「ミスリルナイフ?…………よく切れる的な?」


「まあそんな感じナ。わてより有名でもおかしくないんだがナ…ラクネアさんは知らないのかナ?」


「うちですです?最初にギランという名前を聞いた時に、確かに引っ掛かっるものはあったですです。

ちょっと調べてみるですです。」


「いえ、そんなお手を煩わせてまでは―――。」

「ああ、ブラディーロードですか…です。」


「ブラディーロード?」


「はいですです。人族の間では戦闘でその者が通った後は鮮血で赤い道ができる、らしいですです。」


「ああ、血の道でブラディーロードなのかな?」



この大陸にもこの言葉があったんだね…。


(ありますよ?)


この村は兎も角として、虐殺に殲滅、狂犬、狂猿で、キンたんやナンのんにいたっては絶妙犬と特攻犬なんだよ?

でも、ラクネアさん達には普通に通じるから、この大陸では使われてないのかと思ってた。


(普通に使われてはいるんですけど…ギラン様だけその様な呼ばれ方なのは何故なんでしょうね?

すいません。分かりません。)


いいよ。そこまで気にすることでもないしね。



「ラクネアさん。なんでギランさんだけそんな呼び名なんですか?」



(気にしないって仰ってませんでしたか?)


いや、気にはしないけど、聞いてみても良いじゃない。それで分からなければ、それでお終いな訳だし?


(それはそうなんですけど…。)



「そんな…です?」


「キンたんは絶妙犬でナンのんは特攻犬、それに虐殺と殲滅ですよ?なのにギランさんはブラディーロードって…。」


「ああ、その呼び名を付けたのが、この大陸の者じゃないからですです。」


「え?そうなんですか?」


「はいですです。ブラディーロード以前の呼び名は鮮血路ですです。

それがいつの間にか、ブラディーロードで統一されたですです。」


「ま、まあ、鮮血路よりは…そっちの方が恰好良いの…かな?」



「師匠だけ…私なんて特攻犬だよ?」


「いや、ナン。付けたのは私ではないのだが?」


「カノンちゃん!」

「え?そこで私⁈」


「そう!師匠に負けないような恰好良い通り名付けて!」

「いや、その辺はキンたん辺りが言い出すのかと…。」

「キンとスダレのも一緒に!」



「こんなナンのん珍しいですね。」

「申し訳ありません。」


「別にギランさんが謝ることじゃないんですけど、意外な一面です。」


「普段はキンが先に騒ぎ出すんで、ナンはキンを止める方に回るのですが、今はキンが居ませんから…。」


「成程…成程?」


「おそらく、カノンの先程の戦いを観て未だに興奮しておるのじゃ、少しして落ち着いたら、恥ずかしくなって、謝りに来ると思うのじゃが…。」


「ナンがこんニャ状態にニャるのは久しぶりだニャ。

カノちゃん。その通り名を付けてやってくれニャいかニャ?」

「シナ婆さんまで…。」

「良い切っ掛けにニャると思うニャ。」

「切っ掛けですか…。」



ナビちゃんはどう思う?


(…………。)


あれ?お~い、ナビちゃーん。


(知りません。)


さっき、ラクネアさんに尋ねたことを怒ってるの?


(そんなことはありません。)


怒ってるよね?


(怒ってません。)


いや、怒ってるよ。


(怒ってません。)



ん~…ナビちゃんはラクネアさんでも知らないことを知ってるから凄いんだよ?

今回のギランさんの件は偶々、そう偶々、ナビちゃんが知ってる範囲外だったってだけだよ。


(…………。)


私はナビちゃんに助けられてるから。

頼りにしてるんだから、ね?

私はナビちゃんが居ないと困るんです!


(…そうですか?)


チョロ―――。

(今何か…。)


何も、何でもないです!うん、ナビちゃんが居てくれて私は嬉しいです!助かってます!


(はぁ~、すいません。それで何をお尋ねですか?)


うん。ナンのん達の通り名を考えてあげる件なんだけど、ナビちゃんはどう思う?


(良いと思いますよ。)


そうなの?


(はい。花音様も従魔になられた方たちに名前を付けてあげられてますよね?)


そうだね。


(名を与えられれば、気持ちの上で区切りと言うか、花音様の従魔になったと、気持ちが一新される場合もあります。)


確かに、クラス替えで初めて一緒になった子に、花音って呼ばれたらちょっと新鮮だもんね…。


(ですから、花音様がナン様に通り名を付けてあげられるのは、これから新たな気持ちで挑む為にもよろしいのでは?と思います。)


新たにね…うん。ありがとうナビちゃん。




「では、少し考えますんで、通り名が思い付いたら伝えます。」


「ありがとう♪恰好良いのお願いね。」


「ど、努力します。」


「すいません花音さん。私が帰る前に御礼をと思って声をかけたばかりに……あとで説教しときます。」


「あはは、良いんですよ。ナンのんにはお世話になってますから、それぐらいは問題ありません。

問題なのは恰好良いと条件が付いちゃってることぐらいですよ…ははは…はぁ~。」


「本当に申し訳ない。」


「ギランさんが謝ることじゃありませんって。」


「すい…いえ、ありがとうございます。それではナンと残ってる犬人族を連れて帰ります。」


「ギランが犬人引き連れて帰らはるんなら、うちもそうしましょかね。

ほら、あんさんら、いつまでボーっとしてはるんどすか?帰りますえ。」


「犬人族も帰りますよ。――――――か・え・り・ますよ!」



シグレとギランの声に従って、残っていた狐人族と犬人族は重い腰を上げて武道場からぞろぞろと出て行く。



「それでは失礼します。」

「それじゃあ、またね~♪通り名よろしくね。」

「カノン様。失礼します。」


「…ギラル?師匠である某に対するより敬意がありませんか?」

「そ、そんなことは!」

「ははは、気持ちは分かります。帰りますよ。」

「…はい。」


「ほな、カノンのお嬢ちゃん、また。」


「カノン…。」

「どうしました?スダレたん。」


「私の通り名は考えなくて良いのじゃ。」


「え?仲間外れは良くありませんよ。それに…スダレたんだけ通り名を付けなかったら、キンたんが騒ぎそうです。」


「ぁあ…逃げられんということか…まあ、その、なんだ…恰好良いのじゃなくて普通ので良いのじゃ、普通ので。」


「分かってます。っていうか、そんなに期待されても困るんですけど…。」


「期待しておらんのじゃ!」

「そうですか?」


「ほら、スダレ。帰りますえ。」

「ああ、はい。」

「トウガも大人しい思うたら、寝てはるし…よいしょっと。ほな。」



「猫人族と猿人族もそろそろ帰るニャよ!強制的に帰らせられる方がお好みニャのかニャ?」



シナ婆さんの言葉に猫人族と猿人族の残っていた者達は大慌てで外へと出て行く。



「ははは、セキさん達には遠く及びませんね…。」


「ニャにがかニャ?せき?って誰ニャ?」


「ああ、レッドウルフの群れのボスの名前です。」


「レッドウルフの…まあ、アレに比べれば、確かに統率がとれてニャいニャね…。」



「そうですね。統率と、面白さが…。(ボソ)」

「ニャにか言ったかニャ?」


「いえ、エレンシアさんはどうしようかな?っと。」


「エレンシアさんはそのままでもいいニャよ。オルトの件を聞かれたとしても、この村の者ではニャいしニャ。」


「そうじゃのぅ…。」




次からオルトさんのお話…たぶん。


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