162、タイトルなし。えっ⁉
花音は家に戻りスリーピーに頼んで、タマを起こしてもらう。
「こ、ここは…にゃーは…。」
起きてすぐタマはぼ~っとした感じで、視線を彷徨わせ、その視線が花音を捉えたところで、タマの瞳に活力が戻って来る。
「カノンちゃん…ですにゃ。」
「はい♪花音ですよ。タマにゃんは何処まで覚えてますか?」
「何処まで?…………あっ!」
タマは急いで体を起き上がらせ、立ち上がろうとすると、途中でストンっと力が抜けたように座り込んでしまう。
「無理しないでください。それで何処まで覚えてますか?」
「覚えて……カノンちゃんの召喚に同行して…。
何か…ダークネスウルフにサハギン、アラクネ…そこから先の記憶が曖昧ですにゃ。」
「そうですか…。」
「何かありましたかにゃ?」
「いえ…覚えてないなら、それでいいです。これから、武道場で私とタマにゃんの記憶にある、アラクネのラクネアさんの友達のエレンシアさんと手合わせします。」
「ラクネアさんにエレンシアさんですかにゃ…。」
「タマにゃんはハルサメさんを知ってますか?」
「ハルサメ…名前だけなら、知ってますにゃ。確か、シナお婆ちゃんの知り合いですにゃ。」
「そうですね、おそらくこの村で一番強いです。」
「にゃ⁉シナお婆ちゃんよりもですかにゃ⁉」
「はい。エレンシアさんは、そのハルサメさんと同等以上の強さです。」
「どうしてカノンちゃんは、そのエレンシアさんと手合わせすることになったんですかにゃ?」
「え~っとですね、エレンシアさんがラクネアさんの主として私の強さを知りたいと言ったからなんですけど…。
私が村の皆さんに、この村以外の強い人を実際に見てもらおうとお願いしました。」
「村の?…村の皆がその手合わせを見るんですかにゃ⁉」
「そうですけど…あっ!そうですね。タマにゃんには説明しないとですね。
先ず、私とエレンシアさんの手合わせを観戦してもらいます。
これは本当は自分自身で気付いてもらいたかったんですけど…。」
花音はしばらく考え、口を開く。
「村の皆さんにはエレンシアさんの努力と自分たちのその先の可能性を感じて欲しいと思ってるんです。」
「可能性ですかにゃ…。」
「はい。エレンシアさんの強さは種族の違いというだけでは手に入れられないもののはずです。
その後タマにゃんには辛い話になると思いますが…。」
「にゃーがですかにゃ?」
「タマにゃんには手合わせの観戦の後、村長、キルトさん達、シナ婆さんとのお話に参加してもらいます。」
「にゃーが参加するんですかにゃ?」
あのことを忘れてる今なら、別に教えなくても…とは思うけど、今後のことを考えれば、オルトさんのことは避けて通れない。
どれが正しくて、間違ってるなんて、正直私には分からないけど…。
「参加してもらいます。オルトさんの件です。」
「オルト…さん?」
あれ?シナ婆さんたちはオルトさんの名前は伝えてないのかな?
「ここは任せて先に行け。の件です。」
花音の言葉にタマはビクッっと体を強張らせてしまう。
花音は慌ててタマを抱きしめ、落ち着かせるように背中を撫でながら、
なるべく優しく、言い聞かせるようにタマに言葉を掛ける。
「いいですか?」
と問いかけて、花音はしばらくタマの反応を待つ。
タマは肩を震わせながらもどうにか頷くことで、花音の問いに返答する。
「タマにゃんがこの村に来た時の話は聞いてます。」
花音のその言葉にタマは更に体を強張らせるが、花音は背中を撫で、落ち着かせながら言葉を口にする。
「その時タマにゃんを助けてくれた人は生きてます。」
「⁉い、いぎて、ひっく。生きて…ヒック。」
「はい。」
出来ればその後は村長さん達の意志を確認しながら進めたいけど…。
「生きてます。タマにゃんを始め、村長さん、シナ婆さんたちには選択肢が2つあります。」
「ふちゃちゅ。」
「はい。オルトさん救出に関しては決定ですが、そこに至るまでに2つ選択肢があります。」
花音はタマを抱きしめ、撫でながら、しばらくタマが落ち付くのを待って、その選択肢を口にする。
「1つは私が助け出す選択肢と…。」
「それにゃら!」
「落ち着いてください。」
花音はぽんぽんとタマの背中を叩きながら、落ち着けとタマに言い聞かせる。
「いいですか?」
「はいですにゃ。」
「2つ目は自分たちで救出する。という選択です。」
「な、なんで…。」
「何故その2つを私が考えてるのか、タマにゃんは理解出来ますか?」
「…………にゃーの…為…。」
花音はタマの答えに正直驚きを隠せない。
花音の強さを知っているタマからすれば、2つ目の選択肢は受け入れ難い話で、
普通なら、簡単に解決できる可能性に飛び付きたくなり、タマの回答は考えられたとしても、何処かで拒否してしまい、その考えには至らない。
2つ目の選択肢は花音が意地悪で言ってる様にも聞こえて、敵意さえ覚えるようなものである。
「タマにゃんは凄いですね♪」
「べ、別ににゃーは。」
「いいえ、普通ならその考えは思っても口に出し難いものですよ。
目の前に私という簡単に解決できるかもしれない可能性があるんですよ?
普通なら、そちらに目が行ってしまって、違う可能性という、ちょっと脇にあるものに目を向けれる人は少ないんです。
私がタマにゃんの立場だったら、何でそんな意地悪言うの!助かられるなら助けてくれたって良いじゃない!って私に食ってかかりますよ。」
「にゃーは…。」
確かにタマの心は花音が言ったように何故!どうして助けてくれないの!という気持ちが大半を占めているが、何処か冷静な部分で、自分のことで花音に迷惑をかけられないという花音の想いとは別の理由であの回答に至ったのだが…。
「私はタマにゃんが、シナ婆さんたちが頼むなら、1つ目の選択肢でも良いと思ってます。」
「それにゃら…。」
「でも…私はタマにゃんの今後を考えると2つ目の選択肢の方が良いとは思ってるんです。」
「にゃーの今後…。」
「そうです。私がオルトさんを助け出せば、村長さんやシナ婆さん、村の人達は喜ぶでしょうし、感謝もすると思います。
タマにゃんもオルトさんのことが解決してタマにゃんの抱えていたものが1つ無くなって楽になるとは思います。
でも、その場合タマにゃんは更に村人たちから距離を置くようになると思ってるんですよ、私は。」
「………。」
タマは想像してみる…。
あの人が戻って来て喜んでる村人、シナお婆ちゃんにキルト兄さま…その様子を離れた所で眺めている自分。
そして、その原因である自分がこの村に留まり続けることが出来るのか。
確かに、村人やシナお婆ちゃん、キルト兄さまたちは許してくれるかもしれない。
でも…自分がその状況に耐えられるのか…と考えれば耐えられない可能性の方が高い、
自分がひっそりとこの村を抜け出し、何処かで野垂れ死にしてることが安易に予想される…。
「私はタマにゃんが私達の所から居なくなるのは寂しいし、悲しいです。」
「が、ギャノンじゃん…ひっく、う、うわぁぁぁーん!」
花音は泣きだしたタマの背中をぽんぽんっと数度叩き、そのあと、タマが泣き止むまで撫で続ける。
「うぐっ、ひっく…ご、ごめんなさいですにゃ。」
「いいですよ♪折角の可愛い顔が大変なことになってますね…ちょっと待ってください。」
花音は収納から杖を取り出し、タマに渡す。
「これは…。」
「回復が早くなりますから、握っててください。次は…。」
『ラクネアさん。』
『はいです?』
『近くにシナ婆さん居ますか?』
『いますですです。』
『それなら、私が来た次の日に塗ってくれた塗り薬があるか訊いてもらえますか?』
『分かったです。』
『殲滅…シナ婆さんは持ってないそうですです。でもるーにゃ?という猫人族が持ってるそうですです。』
『ルーニャ?あ~ルーさんですね。その薬を私の家に持って来てもらえますか?』
『了解…ん?あ~主。』
『どうしました?』
『何故薬が必要なのかと、シナ婆さんが尋ねてるですです。』
『タマにゃんが私が来た時と同じ状況だからと伝えてください。』
『了解です。』
『お願いします。』
『主、今そっちにシナ婆さんと数人が薬を持って向かったですです。』
『数人?』
『シナ婆さんと…キン、ナン、スダレ…後は知らない猫人族です。』
『知らない…分かりました。ありがとうございます。』
「タマにゃん、今シナ婆さんたちが薬を持ってこっちに向かって来てくれてるんだけど…。」
「薬ですかにゃ?」
「目のとその周辺が大変なことになってるからね♪」
「そうなんですかにゃ…。」
「それで、キンたんたちもこっちに向かってるらしいんだけど…。」
「キンお姉さま達が⁉」
「うん、みんなタマにゃんのこと心配してるんだよ。」
「お姉さま達が…。」
「その中におそらくキルトさんが入ってるみたいなんだけど…。」
「にゃ⁉」
「今の姿…見られても大丈夫かな?」
「嫌ですにゃ!」
「うん♪女の子だね♪それならシナ婆さんだけにしてもらって、あとは遠慮してもらおっか♪」
「すいませんですにゃ。」
とタマが謝ったところで、コンコン、コン、コンコンコンっとリズミカルにドアノッカーが音を鳴らし、到着を知らせる。
サブタイトル考えるのが…苦手です。
そして、今回のような話も苦手です(´・ω・`)
今回は苦手尽くしでした…。
エレンシアさんとの手合わせは次…かその次の予定です。
うん、予定です。




