152、安住の地。どうなんでしょうね?安住…なのかな?
花音はエリーザとその仲間のマァトゥン、スリーピーの分体を引き連れて村へ到着する。
村の入口には村長を始め、シナ婆さん、ハルサメ、キン、スダレ、ヨギリが待っていた。
「戻って来たのぅ。」
「村長さんすいません。マァトゥンをこの村で…。」
「話はヨギリから聞いておる。それにカノン殿の家の近辺であればとやかく言うつもりはない。」
「すい…ありがとうございます。」
「ただのぅ…。」
「どうしました?」
「いやな、シナ婆さんやハルサメがの…。」
「カンダチ!わてらの所為にするんじゃないナ!」
「そうニャ、そうニャ!」
「ぐっ……カノン殿はこのまま森の魔物や動物を保護し続けていくのではないかと…。」
「わてはちょっと思ったことを言っただけナ。」
「そうニャよ。」
「あぁ…食料問題ですね。」
「まあそうなるの、このまま保護されてしまうと儂らだけではなく、この森に住まう獣人族全体の問題になってしまうからのぅ。」
「そうですね…すいません。一応はその辺りのことも気にはしてたんですけどね…。」
「カノちゃんは自分が保護した魔物や動物を食料だと割り切ることは無理だと…思うナ。」
「カノちゃんだからニャ…スズたちという前例もあるからニャ。」
「………そうですね、ハルサメさんの言う通り私には食料だから、増え過ぎたからと割り切れないでしょうね…。」
「これは村の獣人族の問題でもあるがの、カノン殿のことを心配してのことでもあるからの。」
「ありがとうございます。そうですね…しばらく自重します。」
「そうしてもらえると助かる。それで例の件はこれから直ぐで良いのかの?」
「あ~……………そんなに時間はかからないと思いますけど、少し時間をもらっても良いですか?」
「儂らは構わんが…。」
「わーはお風呂に入りたいニャ♪」
「わても…と言いたいところだがナ、シナちゃん…。」
「何ニャ?」
「お風呂は話が終わった後の方が良くないかナ?」
「どうしてニャ?どっちでも変わらニャいニャよ?」
「シナちゃんはそうかも知れないがナ…。」
「自分も入りたいっす!でも時間がないっすから、受付が終わった後の方が有難いっすよ。」
「そうかニャ…分かったニャ、今は我慢しておくニャ。」
「キンありがとナ。」
「何のことっすか?自分はあのお風呂なら大勢で入った方が楽しいと思っただけっすよ?」
「そう言うことにしておくナ……カノちゃん。」
「何ですか?」
「ちょっとこっちに…。」
ハルサメに呼ばれ、花音はハルサメと少し離れた所で話をする。
「カノちゃんの錬金の凄さはシグレやスダレ、トウガから聞いてはいるナ、そこで頼みがあるんだがナ。」
「頼み?何ですか?」
「そのお風呂というのに1人で入れるぐらいの大きさのを作れないかナ?」
「ん?どうしてですか?」
「…カノちゃんの話が良いものではないことは想像がつくナ。」
「確かに…気分の良い話ではないです。」
「内容までは聞かないがナ、死んでいたと思っていたオルトの生存は嬉しいことナ。
だがナ…その分、悪い話だった場合は落差が酷くなるナよ、そうなれば1人でゆっくり考える場所が必要になってくるナ。」
「………そうかも知れませんね。」
「この村で1人でゆっくり出来る場所はそんなにないナ、特にシナちゃんは猫人族代表だからナ。」
「………分かりました。シナ婆さんがどう判断するか分かりませんが、1人用のお風呂をいくつか作ります。」
「すまないナ…。」
「いえ、お話は以上ですか?」
「以上ナ。」
「分かりました、私は村長と少し打ち合わせして来ます。」
「時間を取らせて悪かったナ。」
「すいませんお待たせしました。」
「いや、それで話し合いは何時頃の予定になるのかのぅ?」
「お昼を食べて、マァトゥン達の小屋を建てて……ラクネアさん呼んで…1時間半ってとこですかね?」
「1時間半?とは…。」
あ、あぁ…1時間半じゃ伝わらないのか…ナビさんや。
(何ですか?)
この世界の時間について教えてちょ。
(時間は花音様が村長様に伝えたような方法を採用しているところもありますが、普通は太陽の位置で大凡の時間を判断してます。太陽の位置で判断するのが主流ですね。)
そっか、ありがとう。
「それなら…今伝えたことが終わるぐらいで集まってもらえれば…。」
「すまんがのぅ…。」
「何ですか?」
「カノン殿の基準では儂らには判断できんのぅ…大体小さな小屋を建てるのに10日は必要だからの?」
「え?」
「まあ、小屋自体がのぅ…前に会議を行った建物やニグルの作業場のような感じだからの、カノン殿やギルルドのような木を使った建物ではないからのぅ…確かギルルドの家は……8日ぐらいかの?」
「そうですか…難しいですね。」
「そうじゃのぅ…。」
「それなら日があの木に差し掛かるぐらいで良いんじゃないっすか?」
「キン?…キンがそういうなら、そのぐらいで集まるとするかの?」
「そうですね、それでお願いします。」
花音は村長と別れてエリーザとその仲間たち、シナ婆さんとハルサメ、キンとヨギリにスダレを伴って家まで戻る。
「さて、先ずはキンたんとヨギリんはお昼の準備お願いします。」
「分かりました。」「了解っす。」
「私もそちらの手伝いをしよう。」
「それならわてもそっちに混ざるナ。」
「「え⁉」」
「何ナ?わてが一緒だとダメなのかナ?」
「い、いえ。そんなことはありません!」
「そうかナ?それでどうするかナ?」
キンたちはハルサメを連れてお昼の準備に取り掛かる。
「次は…エリーザさん達は餌…食事はどうしますか?」
「食事は各自で適当にその辺の草をいただきますから、主は気を使わなくても大丈夫です。」
「それなら生活する場所を決めましょうか…私はあの辺りでと思ってるんですけど…。」
「こちらは問題ありませんが…。」
「が?」
「出来れば日当たりが良い場所も用意して頂ければ…あっ!い、いえ!不満がある訳では…。」
「あはは、良いですよ♪大丈夫です。日当たり…確かに木が多いから日当たりが悪いかな?
よし、少し木を切って日当たりを良くしましょう♪」
花音は木を切って行き、それを使ってマァトゥン達の小屋と柵を作り上げ、ついでに水場も作る。
花音はしばらく唸りながら小屋で何か作業をし、完成したのでエリーザたちを呼ぶ。
「小屋は避難場所にもなってますから壊れ難くなってます。試しに攻撃してみてください。」
「え?いえ、折角主が建てて頂いた…。」
「エリーザさん達の攻撃程度で壊れる方が問題ですから、遠慮なくどうぞ♪」
「そうですか?それならば…。」
エリーザの合図で19頭のマァトゥンが小屋へ体当たりをして行く。
まさが全員で体当たりするとは…予想外でした。
まあ大丈夫そうだから良いっかな?
「凄いですね…ビクともしませんでした、ありがとうございます。」
「何かあったときはここに逃げ込んでね。」
「ですが、入り口が…。」
エリーザの懸念通りに小屋の入口は開け放たれた状態である。
「あ、入り口ね、入り口はね…中に入ったら分かるから。」
花音の言葉に従って小屋の中に入ると右手に壁があり、その大きさは入り口と同じであった。
小屋の床と天井には弧を描くように溝がある。
「これ、この右手の壁の後ろに回って押したら動くようになってるから、緊急時にはこれを押して入り口を塞いで、1度塞ぐとロック…動かなくなるから注意してね。」
「動かなくなったらどうすれば…。」
「そこは中からしか開けられないようにしてるんだけど、出来るかどうかちょっと試してみようか。」
「はい。」
マァトゥン全員が小屋に入ってから花音は説明を始める。
「ロックされるときにガッチャって音がするから、音が鳴るまで押して。」
「はい。」
「あ、エリーザ以外でやってもらった方が良いかな?」
「そうですか?それなら…頼みます。」
エリーザは近くに居たマァトゥンにお願いする。
「分かりました。」
頼まれたマァトゥン(雄)は壁を押して入り口を塞ぐ。
「もう少し押して。」
「はい。」
返事の後に「ガチャッ」という音がする。
「今聞こえましたよね?」
「「「はい。」」」
「あの音が鳴るまで押してください、音が鳴れば動かなくなります。」
「開けるときはどのようにすればよろしいのですか?」
「ここに魔力をしばらく流してください。」
花音が指した場所には何かの鉱石が嵌め込まれていた。
「皆さん魔力はあります…よね?」
「はい、大丈夫です。」
「良かった~、魔力が無いって言われたら、この仕掛けを最初から考え直さないといけないところでしたよ…それなら、これもエリーザ以外で試してみましょうか。」
花音の言葉に今度は壁を押したマァトゥンとは違うマァトゥンが魔力を流す。
「ひ~、ふ~、み~…と~。」
花音が10数えると「ガチャッ」と音がして自動でゆっくりと壁が元の位置に戻って行く。
それを眺めているエリーザとマァトゥン達に疑問が出て来る。
「すいません主。」
「何でしょう?」
「入り口を塞ぐときもこのような自然ではダメなのですか?」
「別に良いんですけどね~、入り口を塞ぐ時って緊急時、危険が迫ってるときじゃないですか。」
「そうなりますね。」
「それでこの速度だと閉まる前に侵入される可能性が高いでしょ?」
「速度を早くすることは…。」
「可能ですけど、挟まれたら危険ですよ?挟まれることも当然ですけど、挟まれたことによって塞げなくなりますから、入り口を塞ぐときは人力の方が良いと思ったんですけど…変更できますからどっちでも良いですよ?」
「…すいません。このままでお願いします。」
「分かりました、では次に何かの偶然で入り口が塞がった場合の対処方法と実際に塞がって開かないのかの確認をしましょう。」
「「「はい。」」」
「え~っと…閉める人はここに残ってもらうことになるんですけど…エリーザ以外で…。」
「それならわーが残るニャ。」
「え⁉」
シナ婆さんはマァトゥンのもこもこの毛に紛れてこの場に紛れ込んでいた。
「シナ婆さん…全然気が付きませんでした……それならお願いしても良いですか?」
「任せるニャ♪」
「閉めたら入り口から離れてそのままにしててください、お願いします。」
「分かったニャ。」
花音はマァトゥンを引き連れて外に出る。
花音たちが外に出て、しばらくしたら入り口が塞がれて「ガチャッ」と音がする。
「それでは小屋に攻撃したみたいに入り口を攻撃してみてください。」
花音の言葉にエリーザを始めとして次々と入り口に体当たりしていく。
「はい、確認が出来ましたね。」
「「「はい。」」」
「次は外から開ける方法ですが、これは誰でも開けられると困るので、外から開けられるのはエリーザだけです。そこは注意してくださいね。」
「「「はい。」」」
「先ずは他の人で試してみましょうか。」
「私やってみたいです。」
「それなら、あなたにお願いします。」
「はい♪」
「それではここに魔力を流してください。」
花音が指示した場所には内側にあった鉱石と同じ物が嵌め込まれていた。
内側から開けるときと同じく花音が10数える間魔力を流し続けるが変化はない。
「次はエリーザお願いします。」
「はい。」
次はエリーザは魔力を流し続けると「ガチャッ」と音がして開き始める。
「成功ですね、以上です。
あとはこの柵内であれば自由に生活してもらって良いです、何かあれば遠慮なく言ってもらって良いですからね?」
「「「ありがとうございました!」」」
花音はエリーザに後のことを任せて、シナ婆さんとハルサメの家を建てる場所を決める為に移動する。
話の中でその辺の草と言ってますけど、消費すれば無くなるのは当然ですからね…。
干し草用意してあげないと…。
あっ!茂里の方全然手を着けてない(´・ω・`)




